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第9話




 屋敷の自室に帰って、ソファに寝転がりながら月刊ミスティリアのページをめくっていく。

 今月号は結構豪華な内容だ。新進気鋭の”斥候機(スカウト)”乗りである兄のインタビューの全文。昔に幾度も舐めるように眺めた”ライトブリンガー”の内部ディティール。脚部が獣のような逆関節になっているという新たに発掘された”遺構機(レガシー)”の情報などなど……

 ついでに、大型”魔砲機(マギステラ)”専用の術式が一部公開・掲載されていた。どこがどういう役割を担っているのかとかも解説されていたため、使おうと思えば使えるかもしれない。

 まぁ、ここに掲載されている術式は、どれもミスティカドールの膨大なマナ供給を前提としているものだから、人の身で使うことはまずできない。

 ただし一部を少し再現することは……できる。


「とりあえず窓開けて、外に向けて……ん〜、りゃっ」


 伸ばした人差し指から、キュンッという音とともに熱線が迸る。

 大型”魔砲機(マギステラ)”専用広域破壊術式【ヴァーディクトレイ】。

 本来はミスティカドール1機を丸っと飲み込むほど太い超高熱の光線を放つ術式だ。それを、術式の魔術文字とそこに書かれた解説文を読んで、マナの流れを見ながら極小の糸サイズにまで簡略化させたのだ。これも、マナの流れを自在に操れるからこその技術だ。

 このような術式は、ミスティカドールを所有している国は大抵同じような術式を持っているため、特段国家機密などにもなっていない、要はフリー術式だ。そのおかげでこのように雑誌に掲載されたりしている。


 月刊ミスティリアに掲載された術式を、人間サイズまで縮小化させた術式が、これ以外にもまだあと6つある。オリジナルの術式が作成されることは十数年に一度あるかないからしいが、それをもう7回成し遂げている時点で私はもう人の枠を若干外れかけている、気がする。

 とはいっても、他の人が使えるフォーマットにはなっていないため、今のところ私固有のものになっている。汎用術式に直すつもりも全くないので、私が術式界隈に新風を巻き起こすことはないだろう。

 

「マージでできちゃったよ。私天才か? んー……よし、【ストリングレイ】と名付けよう」


 指先から発される極細の熱線。太さは髪の毛ほど。照射時間はだいたい1秒。

 できたはいいものの、あまりにも扱いづらいものになってしまった気がする。

 改善するなら、本数や照射時間。束ねて太さを出すのもいいかもしれない……


 そんなふうに思索に耽っていると、突如として部屋の扉をドンドンと誰かが叩き始める。


「リファ様! 先ほどお部屋から妙な閃光が発されていましたが、ご無事ですか!?」


「あー……カリア、そんなに叩かなくても聞こえてるよ。あと無事だよ。ついでに入っていいよ」


 ノックの嵐が止み、代わりに扉が開く。

 扉の向こうから姿を現したのは、くすんだ赤毛をおさげにした、10代前半くらいの少女だ。

 安堵と不安をその顔に湛えた少女は、濃紺のメイド服に身を包んでいる。

 メイド服の少女、カリアは、私の専属侍女だ。


「失礼します、リファ様。ご無事でなようで何よりです。が……また何か魔術を使いましたね? しかも私の知らない術式を」


「ふっふーん、新開発。【ストリングレイ】だよ!!」


 開け放った窓の枠に腰掛け、渾身のドヤ顔と共に今名付けた術式を披露する。

 外に向けた左手の五指それぞれから、同時に1本ずつ放つアレンジも加えていく。


 それを見たカリアは、つかつかと私の元へ歩み寄り、幼児を抱えるように脇に手を入れて、窓枠から床に下ろす。

 そして、疑問符とアホ面を浮かべている私の額に、強烈なデコピンを炸裂させた。


「あいたぁ!?」

 

「あれほど! あ・れ・ほ・ど!! 危険だから変な魔術は試さないでくださいと、なんっども!! お伝えしたじゃないですか!!」

 

「だ、だってだって! できちゃったもんは仕方ないじゃん!」


「仕方ないじゃん、じゃありません! そんな可愛い顔してもダメです! 今日という今日は旦那様に報告しますからねっ!」


「ぬわ〜ん!! それだけはやめてぇ〜!!」


 ひしっとカリアの腰にしがみつき、必死に上目遣いで訴え続けると、カリアは呆れたようなため息をつく。


「もー、わかりました。次はないですからね?」


「カリアぁ〜! ありがとう愛してるぅ〜……」


「はいはい、全くもう……」


 私の戯言も、カリアはあっさりとかわしていく。もう長い付き合いだ。こんな気安い会話も生まれるというものだろう。

 最も、その大部分はカリアの懐の深さによるものだろうが。


「そういえば、先ほど旦那様から、リファ様に話があると伺いました」


「父様が私に?」


「はい。なんでも、”深淵の森”の奥の方で、未探索の遺跡が発見されたようで、その調査隊にリファ様とライル様を同行させようとお考えのようです」


「未探索の遺跡!?」


 大事件だ。

 ネルニザント王国は、遺跡の探索にも力を入れている。ただ、ここ数年はほとんどの遺跡を調査し尽くし、新たな発見もほとんどない状況だったのだ。

 そんな中で舞い込んだ、未探索の遺跡の調査同行……

 行かないという選択肢は存在しない!


「今すぐ父様のところに行ってくる!」


「お気をつけてー。私はリファ様が閃光で破壊した外の植木鉢を片付けてきますね」


「うぐっ……ごめんね、カリア……」


「謝るなら庭師になさってくださいね」


 父様に話を聞くため部屋を出たが、まずは庭師を探して謝るところからだ……


 

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