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疲れたおっさん、AIとこっそり魔法修行はじめました  作者: ちゃらん


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第76話 ゴミが七桁、心臓に悪い一日



ガス業者に無理を言って、夜の点検にしてもらった。


社宅に着くと、もう業者さんの車が止まっている。

……はやっ。


「……やべぇ、偽装バレてないよな……?」


《落ち着いてください。そもそも堂々としている方が自然です》


「言うのは簡単なんだよ……」


 


「無理言ってすみません。よろしくお願いします」


「いえいえ、結構夜の立ち合いも多いんで大丈夫ですよ!どこに置きましょう?」


内心(何も言ってこない……大丈夫そうだな?)


「こっちにお願いします」

設置位置に案内する。


 


「結構建物古そうですけど、この給湯器新品ですか?」


内心(やばっ!給湯器リペアしたせいでピカピカの新品状態……偽装忘れてた!!)


「あ、あぁ……ちょっと修理屋始めようと思ってて……練習で掃除したんですよ! ははははは……」


「ええっ!?すごいですね!こんな綺麗に直してるの初めて見ましたよ!」


内心(頼むー!そのまま流してくれー!!)

「ありがとうございます。この後、中の点検ですよね?今から改装するんで古いですけど、どうぞ」


「はい!じゃあささっと終わらせちゃいますねー!!」


内心(セーーーフ!!助かったぁぁ!!)


《まだ安心するのは早いです。室内のチェックが残っています》


 


……数分後。


「大丈夫ですね!これで点検終わりなんで、サインお願いします」


「ありがとうございました!」


 


内心(……ふぅ。室内に入ったときも変なリアクション無かったな。真っ黒な状態で見られてたら確実に怪しまれてたぞ……)


《だから言ったでしょう。油断大敵です》


「はいはい……マジで心臓に悪ぃ……」


玄関のドアが閉まる音を確認してから、俺は大きく息を吐いた。


「……これで、ようやく風呂に入れる……!」


思わず天を仰ぎ、両手を突き上げる。

汗とホコリでベタベタだった体に、熱い湯をぶっかける自分を想像するだけで泣きそうになった。


《太郎さん、ガス契約が完了しました。――おめでとうございます》


「ありがとよ、リク……! 今日こそは絶対に湯船でのんびりするからな……!」



 浴室完成の余韻に浸っているとスマホから着信の音が流れてきた。



「……こんな時間に誰だ?」



画面を見ると、例の玩具屋からだった。


 

「もしもし、神原さんですか? オークションの件でご連絡です」


「あ、はい。……あれ、もう結果出たんですか?」


「ええ。未開封のカードBOXですが――すべて初期版で、鑑定したところ全て本物でした。しかも保存状態は最高ランクです」


「……ほ、本物……最高ランク……?」


「オークションは大盛り上がりでして。カードだけで875万円になりました」


「は、はぁぁぁっ!?」


 驚きすぎてスマホを落としそうになった。


「ガンプラとソフビ人形も合わせて、合計は930万円です。ただしオークションの手数料などで三割いただきますので、サービスして260万円差し引き、最終的な神原さんへのお支払いは670万円となります」


「……ろっ……ぴゃく……なな……」


思わず言葉がバグった。

ゴミだと思っていた段ボールの山が、気づけば数字の桁をぶっ壊している。


「な、なんだこれ……夢がありすぎるだろ……!?」


ジタバタする俺。

スマホの向こうで玩具屋が笑っていた。


 


《冷静になってください、太郎さん》


「リク……お前、この金額……!」


《太郎さんがクリーンで汚れを落とし、リペアで状態を最高にしたからこそ成立した額です》


「……つまり俺、クリーンとリペアで600万超えを生んだってことか……?」


《太郎さん、落ち着いてください。そのまま全額残るわけではありません》


「え? どういうこと?」


《雑所得として課税されます。会社員の給与と合算されますので……ざっくり三割強が税金です》


「……は?」


《つまり670万円のうち、およそ220万円が税金として差し引かれます》


「に、にひゃく……え、200万円!? 待て待て待て! じゃあ残るのは!?」


《450万円前後です》


「……夢から一気に現実に叩き落された気分なんだけど……」


《それでも“ゴミで450万円”は異常な成果です》


「言い方ァ!!」


  天井を見上げながら、俺はため息を吐いた。

 

 「……でもさ。これからやろうとしてる修理屋って、結局こういうことなんだよな」


壊れた物や古びた物を直して、次の持ち主に繋げる。

価値がゼロに見えても、磨き直せば別物になる。

今日の成果は、まさにその証明みたいなもんだった。


「……よし。やるしかねぇな」


胸の奥に、不思議と熱いものが広がっていた。




お読みいただきありがとうございます。

たくさんのコメント、ブクマ、リアクション、誤字報告全て作者の支えになってます。

ほんとにありがとうございます!!


ちょっとお知らせです。

大阪万博に行って、最新AI関連の展示を見てくる予定です。

そのため申し訳ありませんが、更新は2日ほどお休みさせていただきます。


戻ってきたらまた通常更新(マイペース更新ともいいますが。)に戻しますので、少しの間お待ちいただければ嬉しいです!


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― 新着の感想 ―
独立と同時に法人登録もしないとね? 問題は来年の確定申告だね? 震え上がる前にリクから節税対策を聞きましょう。 (脱税では無いですよ?)
素晴らしいコンセプトの小説と、感嘆致しました。 これからの、ストーリーの展開に期待しています。 私の、希望と予想の、ストーリー展開としては、日常系から冒険的展開へと展開すると 嬉しく思います。
手数料(゜д゜)ウマー そりゃ徹夜で車飛ばして買い付けに来るよねw
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