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疲れたおっさん、AIとこっそり魔法修行はじめました  作者: ちゃらん


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第75話 30分一本勝負


 ――コケコッコォォォォッ!!!


 まただ。

 今朝も、あのニワトリの鳴き声で目が覚めた。


 今日は目覚ましが鳴る少し前。

 しかも確実に、結界の中に入ってきてる。けど状態識別は反応なし。スキャンしても、やっぱり輪郭がボヤけたままだった。


「……はっきり感知できるまで、毎朝の日課にしてみるか」


 


 玄関を開けると――すでにいた。

 コーン缶の前で、きっちり待機している。


「おはよう。今日はちゃんと日が出てから起こしてくれたな! おい、話通じるんなら反応しろよっ! はははっ」


 もちろん返事はない。

 ただ元気よく――コーンを半分こぼしながらつつき始めただけだった。


 


「……食い方、もうちょっと丁寧にできねぇのか……」


 俺はため息をつきつつ、その横にプチウォーターでコップ一杯ぶんの水を出してやった。

 


 ふと見ると、空のカップが目に入る。


「……やっぱり昨日のカラスか?」


 嫌な予感が頭をよぎる。絡まれたら絶対面倒そうだ。

 でも、もし本当に八咫烏とかそっち系の上位存在だったら……下手に無視する方が怖ぇ。


 結局、俺はコンビニで買っていた新しい一合カップをそっと置いた。


「……神様へのお供えと思えば、まぁ安いもんだろ」


 


 ニワトリはコーンに夢中で、俺の行動なんて気にも留めてない。

 なんだか空回りしてる気がして、思わず頭をかいた。


「……俺、毎朝なにやってんだろ……」



 とりあえず今日はガス屋に電話してガスボンベ...?


 そこで固まった。

 脳内に冷や汗が走る。


「……やべぇ……初回設置って、点検で中に入ってくるじゃん!!」


《落ち着いてください、太郎さん》


「リク、どうしよう!?」


《あと三十分で出勤の時刻です。急いでリペアを開始しましょう。私がクリーンを使用しますので、太郎さんはリペアでキッチンの修復とガス管の強度アップをお願いします》


「よし、それで行こう! 急いでやるぞ!!」


 


 ――地獄の三十分が始まった。


 リクが次々にクリーンをかけていく。

 俺は息を切らしながらリペアで社宅時代のキッチンを修復、古びたガス管を強化。

 汗と魔力が一気に飛んでいく。


「はぁ……はぁ……! ……なんとか……間に合ったな……」


《仕上げにカードの偽装効果を変更してください》


「……変更?」


《はい。今のままでは視線誘導が強すぎて、この建物を業者が見つけられない可能性があります。

“この建物に用事がある人は確実に見つけられる”イメージに調整してください》


「なるほど……! よし、やってみる!」


 隠蔽カードの設定に意識を向けると、光がわずかに揺らめいだ。


《次に偽装効果の変更です。外からは足場で隠れていますが、結界内では“真っ黒の怪しい建物”にしか見えません。

少しボロい程度の見た目に偽装してください。室内もそれに合わせて調整が必要です》


「おっけー! でも……そんな雑な偽装で大丈夫なのか?」


《普通の人間には絶対に見破られません。能力が高い存在には確実とは言えませんが……》


「……なら、とりあえずはいけるな! 急ぐぞ! 最後の最後で遅刻とか笑えねえ!!」


 


 ――カードの光が消え、部屋が「古びた社宅」風に偽装される。


 安堵した瞬間。


《ちなみに、ガス業者の依頼を明日にすれば何の問題もありませんが》


 ………


「それを……先に言えぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」


 

 息を切らしながら時計を見る。

 ギリギリ間に合った――けど、胸の奥に残ったザワザワ感は消えなかった。


 便利さと同時に、確実に削られていく俺の魔力。

 この先やっていけるのか、不安がじわりと広がる。


 


「……でも悩んでる暇はねぇな」


 カレンダーを思い出す。

 あと二週間で、今の現場――あの五棟建が終わる。


 新しい生活の幕開けまで、あと少しと胸を躍らせる。

 

 


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― 新着の感想 ―
急にドタバタ感が強くなりましたね。 社畜じゃなければ悲壮感が消えて、毎日がこんな感じかしらねぇ。
何気なく元社宅に住んでいるけど、以前住んでいた住居は解約したの? 自宅を元社宅に代えたけど、自治体(登記簿関係、税関係)への申告はしたの? 他にも電気やガス、水道局や地域の挨拶(ゴミ出し関係を含む)等…
〉ガス業者の依頼を明日に リクちゃんってばおちゃめなんだからっ☆♪
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