表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
疲れたおっさん、AIとこっそり魔法修行はじめました  作者: ちゃらん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/135

第44話 財布のHPはすでにゼロ



 


 多田さんとのやり取りで、俺は心に決めた。

 ——照明器具と偽装工作の道具を揃える。


 


「……ただなぁ」


 ホームセンターに向かう車の中で、

 頭の中に、恐ろしい事実が浮かび上がってきた。


 


「……照明器具代、予算に入れてねぇ……」


 


『確認します。最低でも各部屋、さらにトイレ・バス・キッチンにそれぞれ一つずつ設置する。

 最低七カ所以上に照明が必要です。』


 


「え……七……?」


 


『はい。さらに購入者の印象を良くするため、適切な明るさの器具を設置するのが望ましいです。

 あとはエアコンを設置すれば、初期費用が抑えられて“お得感”が増します。』


 


「……あ、あの……リクさん? 今の説明、俺の財布にクリティカルヒットなんだけど」


 


『計算します。工事費の交渉で浮く金額に、5万円程度追加すれば全て揃います。』


 


「……5万円……?」


 


『現金残高、現在——』


「言わなくていい!! 今の俺は精神的に脆い!!」


 


 


 しかし、照明を全部後回しにするのも気持ち悪い。

 「最低限だけ付けて、あとは購入者が好みで選べばいい」という方法もある。

 でもそれだと、見学のときに部屋が暗く見えてしまう。



「……よし、腹をくくろう。全部屋に付けよう」



『財布のHPがゼロになりました』



「いや、まだだ。マイナスだ」

 


 決意したら即行動。


 


 


 ——まずは照明器具を選びにホームセンターへ。

 そして偽装工作のための小物も揃える。


 


 


 店内に入ると、真っ先に家電コーナーへ向かう。

 シーリングライト、スポットライト、キッチン用LED、防水仕様のバス用ライト。


 


「……やべぇ、もう一撃で瀕死だ」


 


 だが今日はこれだけじゃ終わらない。

 昨日の“涼しすぎる室内”事件を繰り返さないため、偽装工作用アイテムも必須だ。


 


「扇風機、作業用ライト、掃除機……っと。あ、これも」


 


 カートはすでに満杯。

 完全にDIYの買い物というより、潜入工作員の装備調達である。

 脳内ではなぜか映画のスパイBGMが流れている。


 


『木工用の香りは売っていませんね。帰宅後に魔法で生成しましょう。』


「任せた……俺は財布のHPがもうマイナスに振れてる」


 


 レジを通った瞬間、数字を見て現実に引き戻される。

 魔法は壁を作れても、残高は作れない。これが現実だ。


 


 荷物でパンパンの車を家の前に横付け。

 さっそく玄関から運び込み、リビングに照明器具と偽装工作グッズを並べる。


 


 そこへ、午前中の配線作業を終えた多田さんが戻ってきた。


 


「お、買ってきましたね」


「はい、これお願いします」


 


 リビングのシーリングライトを渡すと、多田さんは慣れた手つきで取り付けを開始。

 カチッと固定された瞬間、白い光が部屋全体に広がった。


 


『視覚的効果、良好です。』


 


 その横で俺は、偽装工作の準備に取りかかる。

 まずは扇風機を設置。

 次に作業用ライトを適度に点けて「まだ工事中感」を演出。

 掃除機をわざと見える場所に置き、アロマ魔法で木工の香りを薄く漂わせる。


 


 リビングにふわっと広がる、ほんのり甘い木の匂い。

 新品の床材の香りに混じって、「さっきまで作業してました」感が完成する。


 


「……完璧だな。あとはエアコンも……そこそこいいやつ付けるか」


 


『はい。リビング用で20万円前後です。』


 


「……に、にじゅう……まん……?」


 


『蘇生呪文の準備をしますか?』


 


「いや、もう遅い……HPどころか魂ゲージも消えた……」


 


 俺は改めて部屋を見回した。

 天井のライトは新品、エアコン(予定)はそこそこ高性能、室内は適度に作業中感を演出。

 完全武装だ。


 


「……これ、魔法より準備のほうが大変じゃないか?」


 


『ええ。ドラゴンは鼻が利きますが、人間は“勘”まで働きますから。』


 


 やれやれと笑いながら、時計を見る。

 午後からは壁の作業が待っている。

 工具と資材を確認し、深呼吸——。


 


 そして俺は思った。

 財布のHP? とっくにゼロだ。

 今はマイナスの世界で生きている。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ここ買う人、ほとんど新築の気分では。
矛盾が矛盾を生む話になって来た、そろそろ作者の頭も限界かな? 安く工具や照明を揃えたいのなら、新品を買わなくても中古で良いだろ? そもそも古民家なんだから。
3 LDK のKがキッチンなのだから、それに加えてキッチンが1つということはキッチンが2つあるということでしょう?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ