表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
疲れたおっさん、AIとこっそり魔法修行はじめました  作者: ちゃらん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/138

第16話 「生活魔法、社畜を救う」


 


ようやく来た……2連休だ。


俺は玄関を開けると同時にコンビニの袋を床にぶちまけた。

飲み物、パン、カップ麺、冷凍チャーハン。

冷蔵庫とテーブルが戦場のようになっていく。


「よし……今日は外に出ねぇぞ。絶対だ」


着替えもそこそこにソファに沈み込む。

体が鉛のように重い。

ここ一週間、現場は地獄だった。

炎天下、重い資材、意味不明な設計変更。

「終わったら飲みに行こうぜ」と言った上司は定時で帰って、俺たちだけ残業。

ああ……俺の腰、いつまで持つかな。


ぼんやりと天井を見つめながら、頭に浮かぶのは昨夜のことだ。

魔法を作れる手応えを掴んだ。

隠蔽魔法も完成し、魔法を“バレずに使える”道が見えた。


(ってことは……これ、便利魔法作りまくったら、俺の社畜ライフだいぶマシになるんじゃね?)


そう思った瞬間、スマホを手に取っていた。


「リク、生活に役立つ魔法って作れる?」


『可能です。候補を提示します。

クリーン、ライト、プチウォーター、プチファイヤ、ウォーム、コールド、アロマ。

これらをまとめて生活魔法といいます。』


「おおお、夢の家事代行魔法パックじゃん!やるしかない!」



『まず、魔法の基礎について補足します。

以前お話ししたように、魔力は太郎さんの体内にある微弱エネルギーで、現代人には感知しにくいものです。

ただし、それは単なるエネルギーではなく、“情報を持ったエネルギー”です。』


「情報?」


『はい。脳が思い描いたイメージが“命令データ”となり、魔力がその通りに働きます。

例えば、身体を回復させたいなら細胞一つ一つを修復するイメージ。

熱を発生させたいなら分子を振動させるイメージを強く持つ。

水を出すなら空気中の水分子を集めるイメージを明確にする。

これに科学的な知識を添えることで、精度と成功率が飛躍的に上がります。』


「つまり、思っただけじゃダメで、現象をどう起こすかをイメージしろってことか」


『その通りです。魔法は“イメージの設計図”であり、魔力がその図面通りに現象を組み立てます。

ただし強い集中力と安定した魔力操作が必要です。』


「よし、じゃあ俺のブラックライフを救う魔法をガンガン作るぞ!」

まずは――


クリーン


現場帰りの俺の部屋は戦場だ。

床にはパンくず、コンビニ袋、ホコリだらけ。


「このゴミだけ消えろ……!」


――シュウゥ。


パンくずが消えた!が、横のメモが半分消えかけた。


「おいメモ!犠牲者出すな!」


リクが冷静に補足する。


『クリーン魔法は、不要と認識した分子構造を分解して蒸発させます。

曖昧な意識では必要な物も対象になります。

“パンくずだけ”と明確に設定してください』


二回目、パンくずだけを強く意識。


――シュウゥ。


床がピカピカ。俺はにやける。


「すげぇ……これルンバ要らずだわ」


ふと自分の手の黒ずみが目に入る。試しにかざす。


――シュウッ。


「うおっ!?ハンドソープ超えた!指先スベスベじゃん!」


リクが説明を足す。


『皮脂や角質も分解対象になります。出力を上げすぎると必要な皮脂まで除去し、肌が乾燥します』


「なるほど……美容魔法かこれ」


作業服にかけると、汗染みも泥汚れもスッと消える。


「……洗濯機不要の未来が来た」


『衣類の汚れは脂質と繊維上の不純物を分解しています。

耐久性の弱い布地は少しずつ削れる可能性がありますので、出力調整が必要です』


(洗濯不要、手もピカピカ、美容効果付き……いやこれ世間にバレたら洗剤メーカーが俺を消しに来るやつだ)


ライト


指先を懐中電灯に見立て光を集める。


――パアァァ!


「ぎゃあっ!サーチライトかよ!」


リク『光子を指向性を持たせて放出しています。

太陽光をイメージしたため強すぎました。LEDライト程度に抑えてください』


調整後、柔らかい光が手元を照らす。

観葉植物に当てると葉が生き生きする。


リク『植物の光合成に適した波長を設定すれば育成ライトとしても使えます』


「やべぇ……魔法ガーデニングの誕生だ」


プチウォーター


コップ1杯をイメージ。


――バシャァ!


「床がプールになった!」


リク『空気中の水分子を集めています。

量の意識が曖昧だと過剰供給になります。200mlを強く意識してください』


二回目で手のひらに澄んだ水がたまる。

飲んでみると驚くほど美味い。


リク『余分な不純物を除去していますので、きれいな水になっています』


「これ未来の浄水器じゃん……現場の水道水よりうまい」


プチファイヤ


ライター程度をイメージ。


――ボンッ!


「うわっ!?火柱!?俺火炎放射器じゃねーか!」


リク『酸素の供給イメージが強すぎました。

小規模燃焼に抑えてください』


再挑戦でロウソクサイズの火が灯る。


リク『着火、料理、簡易暖房などに応用可能です』


「これでキャンプ飯はバッチリだな」


ウォーム


手をかざす。


――ジュワァ。


「あちちち!これストーブレベル!」


リク『対象物の分子を振動させて熱を発生させています。

設定温度を38度程度に抑えてください』


再挑戦でじんわり温かくなる。

毛布にかければ電気毛布不要。弁当も加熱可能。


リク『現場では手足の冷え防止、工具の凍結対策にも使えます』


コールド


ペットボトルに手をかざす。


――キンッ。


「氷塊になった!」


リク『熱エネルギーの奪い過ぎです。

液体を凍らせない程度に制御してください』


再調整でちょうどいい冷たさ。


リク『熱中症対策、飲料保存、簡易保冷庫の代用として有効です』


アロマ


「匂い消えてくれ……」


――スッ。


部屋が森林の香りに包まれる。


リク『匂い分子を分解し、設定した香りの分子パターンを再現しています。

人体にも応用可能ですが、強すぎると味覚が鈍る可能性があります』


試しに自分にかけてみると、柔軟剤のCMみたいな匂い。


「強すぎる!香水おじさん爆誕!」



気づけば部屋はピカピカ、空気爽やか、冷たい水に温かい手、いい香り。

シャワーも掃除も洗濯も不要。

俺はソファに沈み、天井を見上げて呟いた。


「……これバレずに現場で使えたら、人生勝ち組じゃん」


頭の中で妄想が膨らむ。

•汚れない作業着、現場で即洗浄

•熱中症知らずのコールド魔法

•冬場はウォームで快適

•昼休みにアロマでリフレッシュ

•工具洗いも一瞬

•水分補給も魔法で確保


(……これもう俺、無敵の現場監督じゃね?)


口元が勝手ににやけた。



プチウォーターの描写を修正しました。

純水→キレイな水

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
アロマ。香りの良い石鹸を触媒として使用して効率化(魔力回復費用の削減)出来そうです。高位魔法はファブリーズ
大気中の飽和水蒸気量(最大値)は気温30℃でも1㎥あたり30g程度しかないので流石に床がプールになることはないんじゃないかな あと純水は無味無臭なので不純物がないと逆に味がしません
アパートで床プールにするレベルで水浸しにしたら不味くない? 1階とかならいいけどそんな描写あったっけ? てかこの主人公、バカスカ住まいを破壊してるけど敷金礼金のこと考えてないのやばくね? とある国の人…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ