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疲れたおっさん、AIとこっそり魔法修行はじめました  作者: ちゃらん


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第106話 居酒屋の清掃と招き猫


 


今日は小鳥遊の居酒屋を清掃してクロスの張り替え。

夜八時頃には小鳥遊が帰ってくる予定だから、それまでに全部終わらせたい。


「魔法が使えるなら徹底的に掃除しといてやるか。どうせなら新品同様にしてやる」


そうつぶやきながら、店の戸を開ける。


 


中に入った瞬間、むわっとした臭いが鼻を突いた。

油と煙と、二十年分の人の出入りで染みついた臭い。


「……うん、これは素手でやったら地獄コースだな」


《その通りです。通常であれば養生フィルムを貼って、強力洗剤と高圧洗浄機で数日がかりでしょう》


リクの冷静な解説に頷きつつ、店全体へ結界と隠蔽を発動。

これで外から覗かれても、ただ暗い店にしか見えない。


 


「さて、やるか」


まずは厨房へ。

ダクトは油で黒光りし、換気扇はネバネバに詰まっている。

コンロ周りは焦げ付きで茶色というより黒。


「うわぁ……これは清掃業者泣かせだわ」


《一般的には産業用の溶剤を使用し、数時間以上漬け置きして――》


「リク、そういうリアル工程はいいや。今日は魔法全開でやるし」


スキャンを展開し、そのまま「クリーン」を発動。


一瞬でコンロも壁も真新しいステンレスのように光りだした。



「はー……やっぱ魔法チートだわ」


《今さら気づきましたか》


「今さらって言うな。慣れって怖いなぁ……」


 


フライヤーに残っていた油はゴミ捨て魔法で吸い取り、機械全体をクリーンで仕上げる。

冷蔵庫の中もスキャン。中に潜んでいた菌まで感知できる。


「うおっ……こんなに居るのか。そりゃ冷蔵庫の匂いって落ちないわけだ」


《菌ごとゴミ捨て魔法で処理すれば問題ありません》


「菌も生物だから、人でもいけるってことか?完全犯罪待ったなしだな」


背筋に冷たい汗を感じつつも、全部処理。

厨房は新品と見まごう仕上がりになった。


 


「よし。次はフロアだな」


部屋全体をスキャンし、一気にクリーンをかけようとして――手が止まった。


「……おいリク、なんか引っかかるぞ」


《はい。二箇所ほど魔力反応があります》


「え、まさかこの店、呪われてんの?」


《落ち着いてください。一つは神棚です。上位存在を祀っているなら反応があって当然です》


「……なるほどな。じゃあもう一つは?」


視線の先には――カウンター脇に鎮座する招き猫。


 


「置物に反応? なんでだ?」


もう一度スキャン。

はっきりと、招き猫の中に光のようなものが宿っているのが見えた。


 


そのとき。


「ニャー」


 


外から猫の鳴き声。

入口を振り返ると、そこに座っていたのは――見覚えのある白猫。


売家で見かけた、あの存在だ。

今回は結界にもしっかり反応している。

ほんのり光を帯びて見える。


「お、お前……久しぶりだな」


「ニャー」


「……あの家の人たち、元気でやってるか?」


「ニャー」


返事なのかどうなのか分からない。

ただ、その猫の視線はまっすぐ招き猫に向けられていた。


 


「……まさか」


再度スキャンを発動。

猫から細い糸のような光が伸びていて、招き猫へと繋がっていた。


「あー……お前の力が宿ってるってわけだな。売家とも近いし、守ってるのか、この店を」


「ニャー」


「ニャーしか言わねぇから、合ってるのか分からんけど……まぁ問題ないんだろう」


 


招き猫に手をかざし、軽く「クリーン」をかける。

表面の汚れが落ち、艶やかに光った。


「はい、ピカピカ。これでいいか?」


「ニャー」


白猫は満足そうに瞬きをして、カウンターの上にひょいと飛び乗る。


 


《太郎さん。売家の時は気づけませんでしたが、こうしてはっきり認識できているのは、魔法の精度が上がったからでしょう》


「少しは上達してるってことか。それにしても、いろいろと日常に紛れてるもんなんだな」


《ええ。魔法に気づけない人間が大多数ですから、こうした存在もただの偶然として片付けられているのでしょう》


「なるほどなぁ……俺も少し前までは気づけない側だったんだもんな」



俺は一度深呼吸して、作業に戻ることにした。

猫と招き猫の関係は気になるけど、悪さしてるわけじゃなさそうだし。


「……悪さで思い出したけどな」


俺は白猫をじろりと睨む。


「お前、俺のこと“そっちのネットワーク”で拡散しただろ! 最近“噂になってる”って聞いたぞ!!」


猫は目を細めて、知らないふり。


「いやいや、絶対知ってる顔だろそれ! 頼むからこれ以上広めないでくれよ! ネットで拡散されるより、そっちのネットワークのほうが確実に怖いんだからな!!」


「ニャー」


……まるで「知らん」とでも言いたげに背中を舐めている。


「くそっ、誤魔化しやがって……」


 

俺は白兎が言っていたことを思い出しながら、ふと酒壺のことを考えた。


「神様って酒飲みが多いって言うしさ。ヤバい密造酒も自動でできるようになっちゃったし……」


そこで言葉を切り、思いつきを呟く。


「……いっそのこと量産して、上位存在に販売するか?」


自分で言って、すぐ首を振る。


「いやいやいや! 絶対バチ当たりそうだからやっぱなしだな!」


《販売しても金銭は得られませんが、それ以上の物が入手できる可能性はあります》


リクが冷静に畳み掛けてくる。


「絶対に販売はしない! 絶対にだ!!面倒ごとがやってくる未来しか見えない」


声を荒げながら、胸の奥でぞわりと嫌な予感が走った。


「……これ、フラグじゃないからな?!」


 



お読みいただきありがとうございます。

更新頻度が下がって申し訳ないです。

マイペース更新ですが気長にお付き合いください。

新魔法開発したいんですが、これあったらめっちゃ便利って魔法をコメントでいただけたら嬉しいです!!

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― 新着の感想 ―
新魔法か。 なら現場サイドからは ファンブル検知して後から瞬時に支える とうちゃんの手 かなあ。 どんな名人達人もありえない小さな ミスをするものですからね。 あっ・・・ドンガラガッシャーンwww…
ゴミ捨て魔法まじで便利。台所周りの汚れが取れる時気持ちいいだろうなー!そんな魔法私も使いたい!!!
更新ありがとうございます。 (*´◇`)ノ 作者様のリアルが第一、ご安全に!ですから、遅くなっても待てるんやで~ 白猫様『太郎のことは言いふらすニャと止められたけど、『御神酒』の話は止められニャかっ…
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