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9. 冒険者パーティー

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D『ラッシュ・ボアー』

【気性が荒く、無鉄砲で知られる猪の魔獣。

冬眠明けの春先には、大量の食料を求めて村の畑をよく荒らす。

人々は、大きな体と角以上に、その異常なまでの耐久力を恐れる。】

----------

名前:--

種族:ラッシュ・ボアーLv14/22

状態:出血

HP:72/163  MP:22/44

攻撃力:32  敏捷:28  防護:30

魔力:14  知力:13

特性

『草魂還元』『魔獣の牙』『魔獣の毛皮』『頑強』『不屈』

特技

『察知Lv2/20』

魔法

スキル

『回復Lv13/20』『突進Lv7/20』『ダッシュLv9/20』

称号

『Dランク魔獣』

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 魔獣――ラッシュ・ボアーの赤い瞳は、敵対する冒険者たちを鋭く見据えている。

 その呼気は荒く、鼻孔から白い息が吐き出されている。 


 その太い首に、大きな裂傷が刻まれているのが見えた。

 脊椎あたりの肉が横に断たれており、深部の肉組織と白い骨が露出している。

 通常の生物であれば命に関わる負傷のはずだ。


 ――だが、その切り口の周囲にわずかな膨らみが生じ、肉の断面が縫合されるように近づいていく。

 スキル『回復』の効果か。


 ラッシュ・ボアーの正面には、両手で大斧を構えた戦士が立ちはだかっている。

 細かい鋲がびっしり打たれた、濃い藍色の鎧――ブリガンダインを身につけており、左腕には、逆三角形の盾、右手には柄の短い両刃の斧が握られていた。

 その斧は幅広の刃で、ずっしりとした存在感がある。

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名前:ジョン・シュスター

種族:人間Lv17

状態:出血

HP:50/89  MP:49/75

攻撃力:32+20  敏捷:29-15  防護:15+7(盾30)

魔力:24  知力:26

特性

『武術の才能Lv7/20』『魔導の才能Lv1/20」

特技

『斧術Lv9/20』『盾術Lv7/20』

魔法

スキル

『ステップLv7/20』『パンチLv10/20』『ダッシュLv5/20』『岩砕きLv8/20』『シールド・ガードLv5/20』

称号

『ガラン王国カルデン公爵領臣民』『平民階級』『冒険者』

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「ジョンさん!大丈夫ですか!」


 その背後にいる、ローブ姿の少女が戦士に声をかけた。


 美少女だ。しかも青目金髪。

 金髪のショートヘアで、いくつか三つ編みが編み込まれている。

 顔は整っており、幼さを残しつつも美しい。

 澄んだ青い瞳が印象的で、小柄な体つきは全体的に細身で平坦。少し子供っぽさを感じさせる。


 手には素朴な木製の杖を握っている。

 先端には小さな水晶玉が嵌め込まれているが、基本装飾は控えめで簡素な造り。

---------------------

名前:ヘルガ・バウアー

種族:人間Lv5

状態:通常

HP:40/40  MP:20/62

攻撃力:12  敏捷:14  防護:7+2

魔力:20+4  知力:21

特性

『武術の才能Lv12/20』『魔導の天才』『魔導の才能Lv20/20』『光魔法適性』『雷魔法適性』

特技

『光魔法Lv13/20』『雷魔法Lv13/20』『炎魔法Lv5/20』『魔法制御Lv14/20』『魔法規模拡大Lv4/20』『槍術Lv7/20』『力魔法Lv2/20』『土魔法Lv4/20』

魔法

『バイタライズLv14/20』『ヒールLv12/20』『ライトニングLv9/20』『サニタイズLv6/20』『ヒートLv8/20』『スパークLv7/20』『インパルスLv14/20』『フォースLv1/20』『ボール・ライトニングLv4/20』『エレキ・ウェポンLv3/20』『ファイア・アローLv2/20』『ロック・ウォールLv3/20』『サンド・クラウドLv2/20』『デトクシファイLv4/20』

スキル

『集中Lv8/20』『スマッシュLv3/20』『ステップLv2/20』

称号

『ガラン王国カルデン公爵領臣民』『平民階級』『冒険者』

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 バケモン。

 パーティーの中でこの子だけが、才能がLv10を超えている。

 Lv10を超えるどころか、カンストして『魔導の天才』までついている。

 大量に魔法も習得してるし、レベルは低いけど、将来性ありすぎる。


 顔も子供っぽくて少し幼いが、十分可愛い。

 巨乳デカ尻でないのが残念だけど。


「は、腹を深くやられた!ヒールだ!もたもたするな!」


 戦士の男が叫ぶ。

 遠くにまで響くような、低く荒い声。

 どうやら聞こえてきた男の声は、こいつの声だったようだ。


 その青い鎧のせいで中身の状態は分からないが、斧を持つ右手が脇腹に添えられており、前かがみになっている。

 HPを見ても、本当に結構酷くやられたようだ。

 痛みで表情を歪め、顔には脂汗が滲んでいる。


 太く先の鋭い角、あれで貫かれたんだろうか。


「ひ、『ヒール』!」


 少女の杖の先に淡い魔法陣が浮かび上がる。

 魔法陣からは柔らかな黄色い光が放たれ、戦士のもとへと流れ込んでいく。

 その光が戦士の傷口を包むと、強張っていた戦士の表情が少し和らぐ。


 その時、ラッシュ・ボアーが足に力を込めて大きく踏み込んだ。

 踏み込んだ地点を中心に、硬い土に放射状のひびが走る。

 鼻息を荒くしながら、全身に力を溜め、今にも突進しそうな気配を漂わせる。


 少女はその様子にすぐ気付いたようで、光魔法を中断し、突進の進路から外れるように、足元を蹴って素早く移動した。


 ――その瞬間、まるで弾かれたように、黒い巨体が前方へ飛び出した。

 巨大な牙と頭が信じられない速さで、一直線に戦士へ迫る。


 戦士はそのラッシュ・ボアーの動きに合わせて、左に移動するように地を蹴る。

 刹那、左に避ける戦士に対して首をねじったラッシュ・ボアーの牙が、鎧を僅かにかすめる。

 

「『岩砕き』!」


 戦士は、体勢の崩れたまま、通り過ぎるその巨大な胴体へ、斧を左から右へ大きく振り抜いた。

 その高速の一撃は、分厚い毛皮と筋肉を一瞬で断ち割り、鈍い衝撃音が響かせる。


「ブギィ"ィ"ィ"!」


 斧の一撃が横腹にめり込むと、ラッシュ・ボアーは進行方向とは直角に衝撃を受けたことで転倒し、激しい勢いのまま地面を土煙を上げて転がった。

 戦士もまた、不安定な足場で斧を振るった反動でバランスを崩し、地面を転がる。

--------

『岩砕き』

【武器と腕に魔力をまとわせ、蓄積した力を高速で敵へ叩きつける攻撃スキル。

振り下ろす速度に応じて威力が増す。】

--------

 『岩砕き』か。

 スマッシュと似てるが、武器だけではなく、腕にも魔力をまとわせる点が少し違う。

 腕にも魔力をまとわせ、筋肉の収縮を補助することで、超高速の一薙ぎを実現させているんだろう。

 いいな。僕もそんなスキル欲しい。


「や、やったか?」


 戦士は土埃の中から身を起こし、視線をラッシュ・ボアーに向けた。

 

 ――しかし、ラッシュ・ボアーもゆっくりと立ち上がる。

 戦士が斧で刻んだはずの腹の傷は、みるみるうちに肉が盛り上がり、塞がっていく。

 深いはずの裂傷が徐々に浅くなっていく様子に、戦士は目を見開き、悔しそうに顔をゆがめる。


「なんでだよ!なんで死なねぇんだ!これで四度目だぞ!」

---------

名前:--

種族:ラッシュ・ボア―Lv14/22

状態:出血

HP:54/163  MP:9/44

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 いや、かなり惜しいぞ。

 『回復』で多少HPを持ち直したが、こいつはもう限界に近い。

 あとこの威力の岩砕きを2回当てれば倒せる。


 頑張れ頑張れ。僕はなるべく加勢したくないから、何とかして君たちで倒してくれ。

 加勢したくないというか、僕が居ても足手まといになる。

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『ラッシュ・ボアーの毛皮』

【一本一本の毛が非常に太く、密集しているのが特徴。

この毛は斬撃に対する耐性が極めて高い。】

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 僕の武器は斬撃武器。

 重量で骨と内臓を叩き壊すというよりも、その切れ味で体内組織を叩き斬る武器だ。

 ラッシュ・ボア―は素の防護だけでも30もある。単に攻撃しただけでは、こいつにダメージを与えられない。


「オットー!お前は何をしてる!こいつをちゃんと引きつけろ!」


 ラッシュ・ボアーの数メートル付近に、短剣を持った軽装の男がいる。

 距離をとっているが、腰が引けており、刃先が定まっていない。

 口元と足を小刻みに震わせ、恐怖に顔をこわばらせている。


「マルタ!お前は傷口を狙って射ろ!」


 その10メートルほど離れた木陰では、弓を持った女が幹の陰に半身を隠しながら様子をうかがっている。

 弓は構えているものの、放つ気配はない。

-------------

名前:オットー・ロート

種族:人間Lv12

状態:通常

HP:61/61  MP:33/42

攻撃力:19+5  敏捷:21  防護:10+2

魔力:13  知力:15

-------------

名前:マルタ・ウィンター

種族:人間Lv11

状態:通常

HP:60/60  MP:46/51

攻撃力:18(弓22)  敏捷:24  防護:9+2

魔力:15  知力:19

-------------

 ......いやぁ、こいつらにラッシュ・ボアーの相手は酷だ。

 攻撃力30どころか25にも届いてない。スキルもカスみたいな補助スキルしかなかったし、武術の才能もLv7前後。

 どうせ攻撃は弾かれるのだから、致命的な体当たりを受けるリスクを負ってまで攻撃したくないのだろう。


「......も、もう無理です!」


 ――すると、軽装の男は、耐えきれなくなったのか、突然ラッシュ・ボアーに背を向けて駆け出した。

 その場を離れる際、地面に置かれていた袋を素早く拾い上げていた。


 ラッシュ・ボアーはその男には目もくれず、戦士の方をじっと見据えている。


「......悪いね、ジョン。」


 弓を持った女も、離れた戦士に聞こえるかどうかの声でそう言い残し、そのまま駆け出していった。

 

「こ、この!役立たずどもが!」


 戦士は顔を赤くし、斧を握りしめ、逃げ出した仲間たちに向かって叫んだ。


「ブゴォ"ッ!ブゴォ"ォ"!」


 その声に呼応するかのように、ラッシュ・ボアーもまた、戦いがまだ終わっていないことを示すような咆哮を響かせる。


「ジョンさん、武器を捨てて、撤退しましょう!」


 ローブの少女は顔を青ざめさせ、震える声で戦士に呼びかけた。

 

 戦士はその声に反応し、武器を構えるのをやめると、ラッシュ・ボアーに背を向けて少女の方へ向き直る。

 すると、斧を振り上げ、少女に歩み寄る。


「......ジョンさん?」


 少女は困惑と恐怖が入り混じった表情で戦士を見つめ、後ずさることもできずに立ちすくむ。

 戦士は顔を真っ赤にし、血走った目で少女との距離を詰めていく。


「な、何を......」


「武器を捨てるだあ?この武器の価値が分かって言ってんか!?回復魔法が使えるって聞いたからパーティに入れてやったのに、もたもたしやがって、全然役にも立ってねえ!」


 戦士は斧を振り上げ、そのまま少女の太ももめがけて振り下ろす。

 少女は恐怖で身動きできず、ただ立ち尽くしているだけだった。


 斧の刃が太ももの端を正確にとらえて肉を裂いた。


「あ"ぁ"っ......!」


 戦士の動きには殺意というよりも、少女を確実に傷つける意図があった。

 勢いが抑えられ、かつその狙いは正確だった。


「死ねよ!せいぜい囮になって、俺の役に立ってから死ね!」

 

 え、えぇ......?

 マジかよ。マジでそういうことするんだ。

 というか、お前頑張ったら勝てるだろ。あと2回岩砕き当てれば殺せるんだって。HPだって十分に残ってんだろ。

 諦めんなよ!もっと熱くなれよ!応援してる僕の気持ちを思えって!


 クソッ、こいつがこんなヘタレなんだったら、さっさと加勢しとけばよかった。

 このタイミングで加勢して、三つ巴の殺し合いになったら嫌だぞ僕は。


「う"ぅっ......ま、待って!......い、行かないで!お願い!」


 少女は震える声を振り絞り、戦士に向かって懇願するように叫んだ。


 しかし、戦士は荒い呼吸のまま、少女とラッシュ・ボアーに背を向けると、そのまま駆け出して行った。

 地面を蹴る足音を響かせながら、その場から遠ざかっていく。


「ブゴォ......」


 去っていく戦士の背中に一瞬だけ目をやったものの、深追いする様子はなく、警戒心を残しつつも、やがて少女に意識を向ける。

 荒い鼻息を鳴らしながら、ゆっくりと彼女に近づいていく。


 この少女の敏捷は14。

 たとえ『ヒール』の回復が間に合ったとしても、イノシシから逃れることは難しいだろう。


「あ、あぁ......だ、誰か!」


 僕は、足元に転がっていた、顔ほどもある石を拾い上げる。


 随分軽く感じる。

 こんなに軽々持ち上げられるなんて、僕も随分力が強くなったんだな。


 ――ラッシュ・ボアーの首筋に残る傷を目標に、狙いを定めて思い切り投げつける。


「ブゴッ!」


 しかし、ラッシュ・ボアーは飛来する石に気づき、素早く首を振った。

 狙いは外れ、石は傷口ではなく背中にぶつかった。


 背中に受けた石の衝撃から、脅威が少女ではなく僕にあることを悟ったのだろう。

 荒い鼻息を鳴らしながら、明確な殺意を込めた視線を向けてくる。


「そう、それでいい。相手は僕だ。」


 右手に馴染んだ片手剣を握りしめ、ないよりはマシのひしゃげた木製の盾を構え、ラッシュ・ボアーと対峙する。


「あ、あなたは......?」


 少女は荒い呼吸をしながら、驚きに目を見開いて僕を見つめた。

 青く澄んだ瞳は不安、恐怖、そして驚きに揺れており、顔色は血の気を失って青ざめている。

 太ももからは鮮やかな血がどくどくと流れ落ち、ズボンを赤く染める。


「ちょっと通りがかったのでね......まあ、僕に任せてください。」

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