3. スキルポイント割り振り、そしてvsスライム
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名前:行島千秋
種族:人間Lv1 SP:0
状態:通常
HP:30/30 MP:40/40
攻撃力:9+8 敏捷:11-3 防護:5+5(盾18)
魔力:13 知力:13
特性
『ヘルプ』『スキルポイント』『取得経験値2倍』『技魂』『武術の才能Lv14/20』『魔導の才能Lv15/20』『力魔法適性』『闇魔法適性』
特技
『剣術Lv3/20』『盾術Lv2/20』『闇魔法Lv1/20』
魔法
『ダークミストLv1/20』
スキル
『ステップLv2/20』『スラッシュLv2/20』
称号
『異世界人』『ミラクルボーン』『自由人』
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あれから全ての説明文に目を通し、色々考えた。
まず、『剣術』をLv3まで、『盾術』をLv2まで、『ステップ』をLv2まで取得。
そして、『剣術』をLv3まで上げたときに自動でついてきた剣術スキル『スラッシュLv1』をLv2にあげた。
必要なスキルポイントはLv1、Lv2がそれぞれ1ポイント、Lv3が2ポイントだった。
つまり僕は『剣術Lv3』に4ポイント、『盾術Lv2』に2ポイント、『ステップLv2』に2ポイント、『スラッシュLv2』に1ポイントで合計9ポイント使ったということだ。
調教術を取るのは、自分の戦闘力がある程度安定してからにすることにした。
それに冷静に考えたら、まだモンスターに出会ってすらないのに、それが仲間になるかもしれないなんて甘い妄想だった。
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『剣術』
【剣を用いた戦闘技術の基礎スキル。
Lv1では、剣の初歩的な動作を身につける。】
『盾術』
【盾を用いた防御技術の基礎スキル。
Lv1では、盾の初歩的な動作を身につける。】
『ステップ』
【足に魔力を集中させ、地を蹴ることで、攻撃や移動中に細かく位置を調整する小回りスキル。】
『スラッシュ』
【武器の刃に魔力を集中させ、切れ味と威力を一時的に高めるスキル。】
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『スラッシュ』は剣の刃に魔力を流し、切れ味を一時的に底上げするスキル。
剣の補正値が僕の攻撃力を大きく引き上げてることから、これはマストだろう。
余った1ポイントについて。
使わずに持っておくことも考えたが、予備にしてもたった1ポイントだし、実験の意味を込めて闇魔法を取ってみた。
取ってみたところ『ダークミスト』なる魔法がついてきた。
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『ダークミスト』
【闇魔法の初級魔法の一種。
黒く濃密な霧を広範囲に発生させ、闇の魔力で敵を蝕む。
この霧を吸い込んだ者は、複数の状態異常に侵されていく。
即効性は低い。】
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かなり微妙な性能をしてる。
即効性ないのは舐めてんのかって感じだけど、視界を遮るのはグッド。
検証は必要だが、イカが墨吐いて逃げるみたいなことができそうだ。
闇魔法を取得したとき『ダークミスト』が無償でついてきたこと、剣術もLv3で『スラッシュ』がついてきたことから、スキルポイントを特技に振るのはコスパ面で有効かもしれない。
『技魂』を信じて、能力をひと通りLv1だけ取得してみようかと思ったりもした。
でも、解説文見た感じ、特に特技はLv1では初歩的な動作が身につくだけらしく、実戦ではあまり役に立たない可能性があるからやめた。
どれかに特化する案も考えたが、スキルポイントは10しかないし、結局今の構成に落ち着いた。
……今考えると、あのチート一覧にあった能力、『剣の天才』、あれを選ぶべきだったか。
剣術Lv20がただでついてくるやつ。
いや、でもしょうがないって。
一応こっちは命を懸けた善行の結果異世界に転移したんだぜ。
初期スポーンくらい最低限配慮するのが道理だろ。
それに、別に剣術ごとき自分でどうにかしてみせる。
僕ならいずれ習得できるだろ。『技魂』あるし。
『武術の才能』もLv14で超高い。
……とりあえず、ポイントは振り分けた。
これからは頭で考えるだけじゃなく、実際に体を動かして拠点と水源を確保しないといけない。
太陽はまだほとんど動いていない。
時間にはまだ余裕がある。
とりあえず周囲を探索しよう。
倒木から腰を上げて立ち上がり、リュックと武器を拾って身に着ける。
聞こえてくる川のせせらぎに向かって歩き出そうとした――が、足を止める。
視界の端に、粘液の塊のような、犬ほどの大きさのアメーバのような何かがうごめいているのが見えた。
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E-『コモン・スライム』
【魔獣の中でも最弱とされる存在。
体の中心にある核が本体であり、周囲のジェル状の体液はそれを保護するための外壁にすぎない。
基本的には草食性で、落ち葉や小動物の死骸などをゆっくりと吸収して糧とする。】
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見た目が結構グロい。
液体というより、ゼリーやジェルの塊のように見える。
表面には土が僅かについており、糸も僅かに引いていて、粘ついた様子が見える。
体の中には、溶けかけて輪郭を失った草や葉がかすかに浮いており、中心には丸くて白い球体――核がかすかに脈打っている。
いざ本物を見てみると、結構でかくてビビる。
大きさ自体はでかくないけど、アメーバとかナメクジとか本来超小さいはずの生物が犬くらいの大きさになってると抵抗感が強い。
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名前:--
種族:コモン・スライムLv4/10
状態:通常
HP:17/17 MP:32/32
攻撃力:4 敏捷:6 防護:3
魔力:9 知力:1
特性
『ジェルの肉体』『草魂還元』『肉魂還元』『魔力感知Lv13/20』『酸性』『毒無効』『病無効』
特技
『体液操作Lv4/20』
魔法
スキル
『膨張Lv6/20』『組みつきLv2/20』『体液噴射Lv6/20』
称号
『E-ランク魔獣』
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でも、ステータスは僕より数段低い。ただの雑魚。
特に、魔力高いのに魔法っぽいものなんも覚えてないのが酷い。
いじめだろこれ。
神を恨んでいい。僕が許可する。
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『知力』
【主に認知力。
数値が高いほど時間あたりの情報処理能力が増し、その結果、魔法の構築や制御を効率的に行えるようにもなる。】
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そして、これまた1ととんでもなく低い"知力"については、どうやら認知力を指しているらしい。
別に知性そのものを示しているわけではなさそうだ。
……殺るか?
今の僕なら絶対勝てる。スライムの体の中にあるあの白い核をぶった斬ればいいだけ。
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『ジェルの肉体』
【スライム特有の、半透明で弾力のある体表構造。
物理的な打撃に対する耐性が高い。】
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あのジェル状の粘液も打撃にしか耐性がない。
さっき取ったばっかりの斬撃特化の『スラッシュ』は通用するだろう。
とにかく、まずはレベルアップしないといけない。
最弱の魔獣なはずのスライムに対して、僕のステータスが2倍にも達していないのはかなりまずい。
リュックを地面に下ろし、盾を構え、剣をいつでも振れるようにしっかりと握りしめる。
そして、音をなるべく立てないように足元の草に注意しながら、一歩ずつ慎重に近づいていく。
......なんか僕、今それっぽいな。
構えも雰囲気もちょっと絵になるんじゃないか?
そんなテンションの上がる気持ちと緊張、そして恐怖が入り混じって、心臓の鼓動がどんどん速くなっていく。
怖いのが酸性体液の噴射。
ジェル状の粘液だから、一回皮膚に付いたら洗い流すのは相当難しいだろう。
ポーションで治るだろうが、スライムごときに使いたくないし、体、ましてや顔に痕なんて残したくない。
盾を構えながら一歩ずつ近づく。
もう数メートル前まで来た。
スライムはまだ反応しない。
いつ酸を吐いてきても盾で受け止められるように身構える。
今回は『ステップ』で回避する予定はない。
攻撃はより確実に盾で受ける。
――突然、ぬるりとスライムの体が膨らみ、うねるように身をくねらせる。
仕掛けてくるか。
身構え、姿勢を少し低くする。
直後、鋭い音とともに、僕の顔面めがけて液体が飛び出した。
即座に、胸の前に構えていた盾を顔の前へと持ち上げる。
液体が盾にぶつかる衝撃が腕に伝わる。
盾の表面が溶ける嫌な音も響いた。
その直後、スライムはその場で体をぐらりと揺らし、僕とは反対方向へと移動を始めた。
逃げる気だ。
あの見た目で、思ったより速い。これで敏捷6か。
だが、追いつける速度ではあるし、距離も数メートルしか離れていない。
いつ酸を吐かれてもいいように、盾を再び胸の前に構えながら追いかける。
――すると、スライムが突然スピードを落とし、ジェル状の身体をくねらせ始めた。
既視感がある。酸攻撃の前兆か。
どこにかけてくる。
顔か、それとも足......腹かもしれない。
急な判断に頭が一瞬パニックになる。
それでも走り続けると、あと少しの距離にまで近づいた。
とっさに盾を顔の前に構える。
顔は最も無防備でなおかつ致命的な部位。
理性で判断したというより、本能に突き動かされていた。
――スライムの酸の噴射音。
そしてその直後、盾が溶ける音が聞こえる。
すぐに盾を下げると、逃げの姿勢に変形しようとしているスライムが数歩先に見えた。
ここだ。
剣にはすでに魔力を込めてある。
だが興奮もあり、さらに魔力を流し込む。
《技能経験値が一定に達しました。『スラッシュLv2』がLv3にレベルアップしました。》
ジェルの中にある丸い球体――核にめがけ、右手で剣を大きく振りかぶる。
絶対に外さない。
この一撃で仕留める。
体重を乗せて剣を振り下ろす。
剣術Lv3のおかげか、走りながらの振り下ろしも、不格好ながらスムーズに決まる。
この一連の流れは地球にいた頃ならできなかった。
剣先がスライムのジェルの体を縦に裂き、核へと到達する。
わずかに抵抗を感じたが、その勢いのまま核を真っ二つに断ち割る。
スライムの身体が真二つに分かれ、振り下ろした剣はそのまま地面に突き刺さった。
《スライムを討伐しました。経験値+4。次のレベルまで残り6です。》