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29. 進化

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D-『ベータ・ウルフ』

【群れの中で安定した地位を得た下級ウルフの進化個体。

単体として突出した能力は持たないが、群れにおける連携行動や防衛戦術に長けている。】


D『アルファ・ウルフ』、

【群れの長である下級ウルフの進化形。

身体能力の他に、指導性や統率力が著しく向上し、支援魔法なども習得する。

『アルファ・ウルフ』が統率する群れは、統制が取れており危険だが、その知性ゆえに不用意に人間と争おうとはせず、適度な距離を保つ傾向にある。】


D『シャドウ・ウルフ』

【下級ウルフの中でも稀に発生する変異種で、夜行性の魔獣。

全身を黒い霧のような毛並みが包み、輪郭さえ曖昧に見えることがある。

極めて高い隠密性と俊敏性を誇り、影の中を跳躍しながら音もなく接近し、獲物の急所を一撃で仕留める。

影に関する特異なスキルをいくつも持つが、昼間の明るい場所では大きな制限を受ける。】


D+『ヴァガボンド・ウルフ』

【『グレイウルフ』とは異なり、孤高の下級ウルフが暴力的進化を経ることなく、自らの生存能力を極限まで研ぎ澄ませた進化形。

知覚と直感に優れ、また、炎のブレス攻撃や自己強化系のスキルを複数持ち、戦闘能力が高い。】


D+『グレイウルフ』

【群れを形成できないまま各地を彷徨い、飢えと戦いに塗れた下級ウルフの進化形。

社会性を失い、凶暴性と残忍性のみを肥大させた結果、不浄の力を発するようになる。

『グレイウルフ』の身体は病魔に満ちており、噛まれた者は高確率で病を発症する。

吐き出すブレスは炎、瘴気、催眠と多岐にわたり、同ランク帯では非常に高い戦闘能力を有する。】

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E『ラピッド・スライム』

【機動力特化型の雑食性のスライム。粗食に耐える。

弾丸のように突進したり、自らの体を細長く伸ばし、鞭のように叩きつけたりもする。

知性は低く、格上の魔物にも挑みがちなため、長生きしない。】


E+『グレート・スライム』

【年月をかけ、体積と魔素を蓄えたスライムの進化形。

そのジェルの身体は粘度が極めて高く、物理攻撃を減衰させる。

ゆったりとしか動けないが、体内に取り込んだ野草を徐々に溶かす。

その身は酸性で栄養もなく、脅威度も低いため、ほとんどの存在に見向きもされない。】


E+『アシッド・スライム』

【強酸性の体液を持つ希少種

廃坑や腐敗した湿地など、酸性度の高い環境下で進化する事例が多い。

非常に攻撃的な性格に加え、接触した物を急速に腐食させる。

体表を破ると高濃度の酸を飛散させるため、遠隔攻撃が推奨される。】


D-『セリーン・スライム』

【聖域や精霊樹の根元などで生活するか、強力な光属性の魔力を受けたスライムが進化する希少種。

淡い金色の粘膜が微光を放ち、周囲に浄化・再生の波動を漂わせる。

光魔法を自在に操り、傷を負った森の動物を癒やす姿がしばしば伝承に語られる。

攻撃性はほぼ皆無だが、敵対的な存在に対しては高出力の閃光を放ち自衛する。】


D-『マジカル・スライム』

【六属性魔法に適性がある、自然界ではほとんど目撃例がない幻のスライム。

発見例は全て断片的な報告に留まっており、伝承に至る前にその噂は立ち消える。

体色は刻々と変化し、視覚的にも美しい。】

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 いや、本当に素晴らしいな。ぜひとも進化先は選ばせていただくぞ。多分、ランク低めやつが通常の進化先なんだろうが、僕は特別にガチャを引かずにレアなやつを選べるんだろう。

 ほんま神様ありがとう。いつも腹立つ事ばっかりだが、今回ばかりは感謝してやる。


 Dランク帯の従魔がいれば、今後の活動の幅が随分広がる。というか、Dランクっていったらラッシュ・ボアとかそこら辺なんだから、それが仲間になるとか頼もしいとかそういう次元じゃない。これは本当に凄まじいことだ。

 この世界の人々は、調教術を義務教育にすべきじゃないかとすら思うね。


 さて、とにかくこの中から選ぶとして、まずランクが低めのやつは無しだ。誰が好き好んで確率操作できるガチャでわざわざノーマルを引くんだよ。

 だから、ロー・ウルフについては『グレイウルフ』か『ヴァガボンド・ウルフ』のどちらかを選ぼうと思う。


 Dの『シャドウ・ウルフ』はインパクトはあるし、不意打ち性能もかなり高そうだから良いとは思うが、やはりランクにプラス補正ないのは残念だ。結構この補正は大きい。体格差を考慮しても、Eのグレー・ラットとE+のロー・ウルフの差は印象深かった。

 それに、夜行性の特性も気になる。僕達の活動は基本日中だし、こいつにあわせて夜に活動するのも無理がある。


 スライムについても、『セリーン・スライム』か『マジカル・スライム』の二択だろう。

 『アシッド・スライム』は論外だ。僕は防護が高いとはいえ、他人を近づけられない。街では確実に問題になる。

 『シャドウ・ウルフ』と同様、生活に支障が出そうなやつは避けたい。


 ......となると、同じ理屈で、『グレイウルフ』は悩ましいな。【社会性を失い、凶暴性と残忍性のみを肥大させた結果、不浄の力を発する】って、進化した途端に性格が変わって血に飢えた獣とかになったりしないか?やばくないか?

 【『グレイ・ウルフ』の身体は病魔に満ちており】っていうのも危険だ。グレー・ラットみたいに病を撒き散らす可能性が高い。

 むしろ、『アシッド・スライム』が可愛く見えるくらいに存在だけでも凶悪だ。

 炎、瘴気、催眠のブレスを吐き出すみたいで、同ランクの『ヴァガボンド・ウルフ』は炎ブレスだけっぽいのをみると惜しいが、やはり『グレイウルフ』は厳しいだろう。


 いや、もちろん『ヴァガボンド・ウルフ』になった途端、僕と群れるのをやめてどっか行く可能性も無きにしもあらずだが。

 それを恐れてDの『アルファ・ウルフ』にしたところで、Dじゃ今後にょきにょき伸びるだろう僕のレベルとステータスに遅れを取って足手まといになられても困るし、やっぱり『ヴァガボンド・ウルフ』が良いだろう。


 次にスライムだが......『マジカル・スライム』かな。

 確かに『セリーン・スライム』も魅力的だ。確実に善の存在だろうし、目を話した隙に子供を食うなんてことはないだろう。何なら、庭に置けば勝手に花とか咲かせそうな雰囲気すらある。

 それに、ヘルガが光魔法のために温存しなければない魔力を肩代わりできるなら、その分を戦闘で雷魔法とか攻撃に回せる。

 一方、『マジカル・スライム』は、六属性に適正があるとしか書いていない。あとは希少性と、見た目が美しいという程度だ。

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『六属性魔法適性』

【風、水、氷、土、炎、雷属性の六つの系統の魔法に適性を持つ。

超常的な複合魔法を操る素養がある。】

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 ......だが、繰り返してしまうが、光魔法はすでにヘルガが使える。

 それに対して、『六属性魔法適性』は僕やヘルガの『雷魔法適正』や『力魔法適性』とは異なり、【超常的な複合魔法】とやらを使うことができるらしい。


 グレー・ラットとの戦闘で分かったのだが、使用者がヘルガであったことを踏まえても、魔法の攻撃力は想像以上に高い。

 僕の『フォース』も、仮に同威力のそれを自分の腹に受ければ、殴打以上の損傷が内臓にまで響き、立ってはいられないだろう。

 しかも魔法は遠距離攻撃だ。集中力を要するため、刹那的な近接戦闘の最中に魔法陣を構築するのは難しいだろうが、距離を取るたびに準備するのはギリ可能だろう。

 牽制どころか、本命の火力として据える戦術を取ることもできる。


 『マジカル・スライム』の魔力がどの程度かは分からないが、少なくとも極端に低いとは考えにくい。仮にやや低くても、魔法は物理的な近接戦闘能力と異なり、状況と使い方次第では格上相手にも、支援という形で有効だ。

 グレーラットの女王の、土魔法によって巣穴を大量に開けたのがいい例だ。六属性なら、なおさら応用の幅は広いだろう。


 あと、僕が『マジカル・スライム』を推すもう一つの理由として、【自然界ではほとんど目撃例がない幻のスライム】【発見例は全て断片的な報告に留まっており、伝承に至る前にその噂は立ち消える】というのもある。

 この希少性。レアというよりもはや幻って......どんなものか、自分の目で見てみたい。

 ......もしもの時の金策とかになってくれたりしないかなぁ。


 よし、『ヴァガボンド・ウルフ』と『マジカル・スライム』に決めた。

 いけ!二人共、メガ進化だ!


「ガゥルル......」


 ヘルガの隣で腹を地面につけていたロー・ウルフが、唐突に頭を持ち上げた。

 前肢で地面を押し、ゆっくりと立ち上がる。そしてヘルガから距離を取るように、離れる方向へ歩き出した。


「ガァ......」


 数メートル進んだところで立ち止まる。

 その場で前肢を折り、後肢を畳み込むようにしてうずくまった。首は垂れ、尾は腹の下へ巻き込まれる。


 ――次の瞬間、毛が逆立つとともに、全身の筋肉が痙攣し、ぼこぼこと内側から形を押し広げるように変形していくのが毛皮越しに見えた。

 四肢は短い間隔で震え、爪が地面を引っ掻く。


 え、これ大丈夫なの?

 なんかこのまま破裂して肉片ポップコーンになってもおかしくないように見えるんだが。


「へ、ヘルガ、これ大丈夫かな」


 ヘルガに声を掛けるが、瞑想に集中しているのか、目を閉じたまま動かない。


 これふりとかじゃなくてガチで聞こえないの?そんなに瞑想って集中できるものなのか。

 というか、これヘルガ休めてるの?僕的にはヘルガにはゆっくり休んでもらいのだが。


 僕はヘルガの肩に手を伸ばし、軽く揺する。

 だが、ヘルガは背筋を伸ばしたまま姿勢は崩さず、まぶたは閉じたままで、呼吸は深く一定だ。


「お、おーい?ヘルガ?」


 もう一度、今度は少し強めに肩を揺らす。

 上体がわずかに前後するが、それでも反応しない。


「ま、まじか」


 視線を戻すと、ロー・ウルフの体表がさらに波打っていた。背骨の輪郭が内側から押し上げられるように浮き、四肢の関節がきしむ音を立てて角度を変える。

 体が収縮と膨張を繰り返し、わずかに大きくなっていく。


 そういえば、スライムの方は......


 スライムの方に目をやると、粘液の身体を大きく渦を巻かせていた。半透明だった体色が次第に濁り、中心部から白っぽく変色していく。

 すぐ近くの地面には、半ば溶けかけたグレー・ラットの死骸が横たわっていた。進化の前に、体内に取り込んでいたグレー・ラットを吐き出したんだろう。


 ......遺骸の焚き火、瞑想する少女、ボコボコ変形する狼に、渦巻くスライム。なんか、随分カオスな風景だな。

 まぁ......なんとかなるよな。僕も結構疲れた。

 休み休み、こいつらと火の様子を見るか。


 火の方だが、多少燃え残ってしまっても、そこまでは怒られないでしょ。

 だって自然界でもグレー・ラットが野ざらしで死ぬことはあるだろうし、多少はね。

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