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21. 依頼を選ぼう

ーーーーーーーーーーーーーーーー


 市壁の外の郊外にある酒場、その入口脇の壁に掲示板が打ち付けられている。

 古く黒ずんだ板。縁は鉄が打たれ補強されているが、茶色く錆びている。中央には小さく、冒険者ギルドの紋章が刻まれていた。

 貼られている紙はギルド本部で見た台帳のそれと異なり、粗悪で表面に細い繊維が残っているのが見え、触れれば崩れそうに感じる。


《冒険者ギルド依頼掲示板》

【依頼名】《ゴブリン(E+ランク)の追跡・調査》

・【推奨ランク】銀級

・【報酬】40マリャル

・【詳細】ゴブリンの目撃情報が増加中。巣を形成している可能性あり。巣の場所、数、個体特徴の報告により依頼達成とする。この報酬は巣一つあたりのもの。


【依頼名】《ラッシュボア(Dランク)の討伐》

・【推奨ランク】銀級

・【報酬】20クリヴナ+部位の買い取り

・【詳細】突進型の魔猪。パーティでの活動を推奨。

※山道付近での遭遇に注意


【依頼名】《グレーラットの巣(Dランク)の駆除》

・【推奨ランク】銀級

・【報酬】70マリャル+駆除に使用した道具類の補填(30マリャルまで)

・【詳細】北西のエバフェルト村付近に大量発生。女王の尻尾を討伐証明とし、巣の駆除と認める。

※駆除後その場で焼却すること!討伐部位である尻尾以外は「決して」持ち帰らないこと!


【依頼名】《赤実草セカベリーの採取》

・【推奨ランク】銅級

・【報酬】1キロで銀貨1枚

・【詳細】東の森林での採取可。類似の毒草、黒縁赤実草シュヴァルツセカに注意。

※あまりにも質が悪ければ後日報酬分を没収する。


【依頼名】《灰煙草の採取》

・【推奨ランク】銅級

・【報酬】1束につき銀貨3枚

・【詳細】南の丘陵地帯に自生。乾燥した状態で燃やすと有毒な煙を発するため、気をつけること。輸送時は布で包み、特に市内での輸送中に散らさないこと。

※悪質な湿気が確認された場合、当然後日報酬分を没収する。


【依頼名】《行商の街道護衛》

・【推奨ランク】銅級(2名以上のパーティ)

・【報酬】銀貨10枚+現場での食事支給

・【詳細】南門からフィエル村までの交易路往復。約7日間予定。報酬支払は後日ギルドにて。参加希望者はギルドに報告せよ。


【依頼名】《薬草商の護送》

・【推奨ランク】銀級

・【報酬】銀貨30枚+現場での食事支給

・【詳細】薬師を遠方東方のカランナ村までの片道移動を護送せよ。高級魔獣出没の可能性あり。参加希望者はギルドに報告せよ。


 他にも同じように依頼内容が書かれた紙がいくつも貼られている。


 ギルド本部で諸々の手続きを終えた僕とヘルガは、今日から冒険者として働くため、依頼掲示板のある郊外の酒場に来ていた。もちろん、この掲示板が置かれているのはこの酒場だけではなく、他にも冒険者がよく通るとされる場所に、いくつか設置されているらしい。


 僕が冒険者登録を済ませた後、ヘルガはジョンのパーティーから脱退し、新たに僕との冒険者パーティーを立ち上げてくれた。リーダーはヘルガだ。

 本来はパーティー内でレベルの高い者がリーダーになるのが慣例らしいが、僕はまだ銅級ですらない見習いの段階で、その資格がない。

 加えて、パーティーは事前に取り分を決め、ギルドに報告するのが規則らしいが、これはヘルガと相談……というより、彼女はほとんど口を出さず僕に決めさせてくれた。その結果、取り分は半々になった。

 正直、ヘルガなら他のパーティーに誘われてもおかしくない。半々で本当にいいのかと思って聞いても、「全然良いよ」としか言わなかった。ここまで僕に甘いと、むしろいつか感情が爆発して僕の前から消えるんじゃないかと少し怖いが……今は、その言葉に甘えさせてもらう。


 ちなみに、ラッシュ・ボア討伐の報酬も、本来はヘルガの取り分である20マリャルのうち、半分をもらった。最初は全部渡そうとしてきたが、流石の僕でもそれは断った。

 屈託のない笑顔でそれを申し出られるって、ヘルガは一体どんな情緒してんだ。


「……どれも割に合わねえなぁ」


 隣で、革鎧を着た若い冒険者二人組が腕を組んで掲示板を見ている。


「あぁ、行商護送がマシだな。」


「.....よし、ギルドに申し込みに行くか」


「そうだな。慣れないことはあんまりしたくないが、やっぱ採取だけじゃ生きていけねぇからなぁ。」


 ステータスを見る限り、Lv12の弓術が得意な後衛、Lv10の斧術アタッカーの前衛といったところか。依頼の推奨ランクと二人の感想から察するに、二人は銅級なのだろう。

 ......掲示板に書かれてる銅級と銀級の報酬の高低差があからさまだし、生きるの大変そうだな。


「あんまり旨味のある依頼がないね......たまにE級魔獣が大量発生するときがあって、その時は稼ぎ時なんだけど。」


 ヘルガは貼り紙を眺めたまま白い息を吐く。 


 ......ところで、冒険者登録の最中に起こった非常に気になること、『平民階級』『ガラン王国カルデン公爵領臣民』についてだが

-----------

『平民階級』

【被支配階級の一つ。

上位の支配階級からあらゆる制約を受ける。】


『ガラン王国カルデン公爵領臣民』

【ガラン王国カルデン公爵領の被支配民。

この領土の正当な支配者からあらゆる制約を受ける。】

-----------

 多分説明文からして、人里に入ってその恩恵を受け、さらに冒険者になったことがこの二つを得て『自由人』を失った原因なんだとは思うが……せめて警告くらいは欲しかったぞクソ神。

 「支配者からあらゆる制約を受ける」っていうのも、ただの社会的な制約、いわばフレーバーであってほしいんだが……まぁ、大丈夫か、多分。

 というか、もうどうにもできん。

 今さら森に還って、狼やスライム相手に狩猟採集生活を営むのも無理がある。


「やっぱり今は採集かなぁ......灰煙草は、ここ数年の乱獲で全然見つからなくなっちゃってるし、赤実草が無難かなぁ」


 ヘルガは少し考えるようにしてからそう言った。


「グレーラットの駆除はどうなの?僕見たことあるけど、全然弱かったよ。」


 確かにあのときはニードル・スネークに殺されかけて瀕死だったが、それでも今のステータスなら遅れは取ることはない。

---------

E『グレー・ラット』

【女王を中心とした群れで地下に巣を作る小型魔獣。

体内に多様な病魔を保有し外敵への防御とする。

人間社会では忌み嫌われており、過去にはグレー・ラットが疫病を媒介したことで衰退、滅亡した大都市も少なくない。】

--------

名前:--

種族:グレー・ラットLv4/10

状態:通常

HP:4/39  MP:34/38

攻撃力:12  敏捷:17  防護:5

魔力:10  知力:18

---------------

名前:行島千秋

種族:人間Lv11  SP:43

状態:通常

HP:73/73  MP:86/86

攻撃力:25+27  敏捷:26-4  防護:11(盾20)

魔力:28  知力:29

特性

『ヘルプ』『スキルポイント』『取得経験値2倍』『技魂』『武術の才能Lv14/20』『魔導の才能Lv15/20』『力魔法適性』『闇魔法適性』

特技

『剣術Lv8/20』『盾術Lv6/20』『闇魔法Lv3/20』『調教術Lv10/20』

魔法

『ダークミストLv5/20』

スキル

『ステップLv5/20』『スラッシュLv7/20』『シールドガードLv5/20』『集中Lv7/20』『ストライクLv8/20』『ダッシュLv5/20』『受け流しLv1/20』『テイムLv7/20』『マナ・リンクLv2/20』『ジャンプLv1/20』

称号

『異世界人』『ミラクルボーン』『冒険者』『ガラン王国カルデン公爵領臣民』『平民階級』

-------------

「グレー・ラット単体だと危険じゃないけど、集団で襲われると銅級のわたしたちだと厳しくてね。それに一箇所でも噛まれたら、適切な治療をしないと大変なことになるんだ。」


「んー、まぁ、そうだけど。」


 なんとかなりそうな気もするがな。

 僕はLv11でもそこらのLv15と同等かそれ以上に動ける自信はあるし、それに何より『病耐性Lv7』を持ってる。流石にニードル・スネークみたいに生食躍り食いできるとは思わないが、これなら多少噛まれてもヘルガにヒールで治してもらったら大丈夫だろう。

 それに......


「でも、ヘルガの光魔法があればなんとかなりそうにも思えるけど」


 ヘルガは光魔法の『サニタイズLv7』を持っている。

---------

『サニタイズ』

【光魔法の一種。

対象物の表面に作用し、付着した有害残留物を魔力的に除去する。

作用範囲は限定的で、内部には効果を及ぼさない。】

----------

 いや、ほんまヘルガ何でもできるよな。

 『ライトニング』なんて、はるか格上のラッシュ・ボアにも避けられることなく普通に貫通してたし、もうこの人一人で良くないですか?

----------

『ライトニング』

【雷属性魔法の一種。

対象一点、もしくは直線上に瞬間的な電撃を発生させる。

高火力かつ作用は一瞬だが、魔力消費が大きく制御も難しい。物質の破壊や広範囲の制圧には適さない。

魔術師次第では、金属や湿った物質に伝導しやすくすることもできる。】

---------------------

名前:ヘルガ・バウアー

種族:人間Lv10

状態:通常

HP:62/62  MP:88/88

攻撃力:19  敏捷:21  防護:11+2

魔力:29+4  知力:30

特性

『武術の才能Lv12/20』『魔導の天才』『魔導の才能Lv20/20』『光魔法適性』『雷魔法適性』

特技

『光魔法Lv13/20』『雷魔法Lv13/20』『炎魔法Lv5/20』『魔法制御Lv14/20』『魔法規模拡大Lv4/20』『槍術Lv7/20』『力魔法Lv3/20』『土魔法Lv4/20』

魔法

『ヒールLv13/20』『ライトニングLv11/20』『サニタイズLv6/20』『ヒートLv8/20』『スパークLv7/20』『インパルスLv14/20』『フォースLv1/20』『ボール・ライトニングLv4/20』『エレキ・ウェポンLv3/20』『ファイア・アローLv2/20』『ロック・ウォールLv3/20』『サンド・クラウドLv2/20』『デトクシファイLv4/20』『アクセルLv4/20』

スキル

『集中Lv8/20』『スマッシュLv3/20』『ステップLv2/20』

称号

『ガラン王国カルデン公爵領臣民』『平民階級』『冒険者』

------------

 僕が人のステータスを見ることができることは、まだヘルガには伝えていない。

 道中に聞いた話によると、ステータスを視認できるのは司教などの聖職者か、高位の「聖騎士」に限られるらしい。聖騎士ってなんやねん。


「……うん、そうだね。グレーラットに噛まれても、ある程度なら私が処置できるよ」


 ヘルガはそう言って、少し考えるように掲示板を見た。


「じゃあ、いけるんじゃないか?グレーラットを僕らで討伐できたら、金どころかレベルだって上がるし」


「それがね……」


 ヘルガは一度言葉を区切ってから、説明を始めた。


「グレーラットって、地中を掘って、すごく複雑な迷路みたいな巣穴を作って暮らしてるの。討伐するときは、干した灰煙草を巣穴に入れて燃やして、それを防ぎに来た個体を狩る。最後に堪らず出てきた女王を倒す、ってやり方なんだけど……」


 そこで、少し言いづらそうに視線を逸らす。


「さっきも言った通り、ここ一、二年は灰煙草がほとんど手に入らなくてね。一応、高値でここでも売ってはいるんだけど、失敗したらギルドは補填してくれないし、成功しても降りる補助金が足りなくて、どうしても割に合わないんだ……」

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D『灰煙草(加工品)』

【大陸北西部の寒冷・湿潤地帯に原生する灰煙草を乾燥・圧縮した加工品。

燃焼させることで有毒な煙を発生させる。吸引した生物に呼吸障害、意識低下を引き起こす。】

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「えぇ、まじ?ギルドがケチケチして伝染病広がったらどうするんだよ。それに炎魔法や土魔法使えるやついるんだろうし、そいつら使えばもっとうまくやれそうな気もしそうだけど」


「そうだよね......でも、やっぱりそれができる人たちが要求する報酬はどうしても高いから。」


 掲示板を眺めている冒険者や俺たちとは違って、高レベルの冒険者は桁違いの収入を得ているのだろうか。腹立つな。


 ......ん?待て。

 そういえば、灰煙草みたいな効果の闇魔法持ってたじゃん。

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『ダークミスト』

【闇魔法の初級魔法の一種。

黒く濃密な霧を広範囲に発生させ、霧の中に含まれた闇の魔力によって敵を蝕む。

この霧を吸い込んだ者は、複数の状態異常に侵されていく。

即効性は低い。】

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 ヘルガとはもう十分仲もいい。人柄も良いし信頼できる。

 闇魔法のことくらい、話してもいいだろう。というかラッシュ・ボアとの戦いでもう知ってるはずだ。

 ……それで、グレーラット討伐を計画するか。

流石にそろそろ戦闘パート始めます。

本来バトルファンタジーのはずなんですけどね。

今までの描写くどかったでしょうか?

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