10. 少女を救え!vsラッシュ・ボアー
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名前:--
種族:ラッシュ・ボアーLv14/22
状態:出血
HP:53/163 MP:9/44
攻撃力:32 敏捷:28 防護:30
魔力:14 知力:13
特性
『草魂還元』『魔獣の牙』『魔獣の毛皮』『頑強』『不屈』
特技
『察知Lv2/20』
魔法
スキル
『回復Lv13/20』『突進Lv7/20』『ダッシュLv9/20』
称号
『Dランク魔獣』
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名前:行島千秋
種族:人間Lv9 SP:10
状態:通常
HP:63/63 MP:19/75
攻撃力:21+8 敏捷:23-3 防護:9+5(盾13)
魔力:24 知力:26
特性
『ヘルプ』『スキルポイント』『取得経験値2倍』『技魂』『武術の才能Lv14/20』『魔導の才能Lv15/20』『力魔法適性』『闇魔法適性』
特技
『剣術Lv7/20』『盾術Lv6/20』『闇魔法Lv1/20』『調教術Lv10/20』
魔法
『ダークミストLv1/20』
スキル
『ステップLv5/20』『スラッシュLv5/20』『シールドガードLv5/20』『集中Lv5/20』『ストライクLv5/20』『ダッシュLv5/20』『受け流しLv1/20』『テイムLv7/20』『マナ・リンクLv2/20』
称号
『異世界人』『ミラクルボーン』『自由人』
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正直、魔力知力はどうでもよくて、身体系のステータスが重要なのだが......僕が圧倒的に負けている。
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『不屈』
【状態異常や負傷、極度の疲労を負っていても、その命が尽きない限り、本来の力を発揮できる。】
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特に、この特性。
負傷による弱体化は期待できないし、HPが0になるまでこいつは倒れないだろう。
本来、今の僕が戦って勝てるような相手じゃない。
でも、今はかなり状況に恵まれている。
まず、MPがほとんど残っていない。
『回復』はほとんど死んでいると言っていいし、『突進』だってせいぜい2回程度しか使えないだろう。
そして、この地形。
生い茂る木々は、『突進』への対抗策として常に有効に機能する。
この二つの好条件によって、ラッシュ・ボアーの強みであるタフネスと高速の突進の脅威は抑えられ、僕はアグレッシブな短期決戦を仕掛けることができる。
もちろん、僕の火力不足は明らかに問題だ。
攻撃力が剣を合わせても29、普通に攻撃しただけでは、防護30のこいつに攻撃を通せない。
だが、方法はある。
ゴブリン戦で分かったことだが、このステータスの数値は絶対的なものではない。
実際、当時攻撃力26の僕が、防護11のゴブリンの胸にストライクを付与した剣で突いた時は、15ダメージしか与えられなかった。
だが、防護9のゴブリンの首を、ほぼ素の剣で首を突いた時は、33ダメージも与えられた。
つまり、この世界の戦闘では、比較的防護が薄く、重要な肉組織が詰まっている場所――急所に攻撃を効果的に当てることが重要だ。
今回の場合、ジョンとか言う冒険者が岩砕きを4発も当ててくれたおかげで、ところどころ毛皮がはがれ、肉が露出している部分がある。
そこにストライクの火力で突きを放てば、攻撃が弾かれることはないだろうし、当たりどころが良ければ、大量出血の状態異常も与えられる。
「ブゴ"ッ"......」
イノシシ――ラッシュ・ボアーは、顔をこちらに向けたまま、静かに歩を進めてきた。
前脚を一歩ずつ地面に置くたび、草がわずかに音を立てて潰される。
大きく開いた鼻孔からは短く低い呼気が漏れ、白い蒸気が昇っている。
加えて、もう一つ、急所を狙う以外にこいつに攻撃を通す手段がある。
――スキルポイントを8P消費して、闇魔法の『ダークミスト』をLv5まで上げる。
《条件を満たしました。『闇魔法Lv1』がLv3にレベルアップしました。》
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『ダークミスト』
【闇魔法の初級魔法の一種。
黒く濃密な霧を広範囲に発生させ、霧の中に含まれた闇の魔力によって敵を蝕む。
この霧を吸い込んだ者は、複数の状態異常に侵されていく。
即効性は低い。】
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「『ダークミスト』」
目の前の空中に淡く光る魔法陣が浮かび上がる。
魔法陣の中心から黒く濃密な霧が湧き出し、ゆっくりと前方に広がっていく。
黒い細かな霧の粒子は煤のように乾いた色をしており、不気味に膨張と収縮を繰り返している。
「ブォ......」
ラッシュ・ボアーは黒い霧の広がりに対し、警戒した様子で数歩後ずさる。
しかし、急速に広がる黒い霧は、やがてラッシュ・ボアーに到達し、辺りは黒い霧に包み込まれていった。
暗いもやが僕らの間に立ちこめ、互いの姿が曖昧にしか見えなくなる。
今回はあえて、本来より、黒霧の密度を落とした。
本当は、もっと暗くて何も見えないような空間を作ることができる......と思う、多分。
使う前に検証できたら良かったんだが、結局できなかったな。
「ブル"ッ......」
ラッシュ・ボアーはその黒い霧が、多少不快なだけで別に体に支障はないということに気づいたのか、その霧の中、ゆっくり僕に近づいてくる。
曖昧ではあるが、僕のことがちゃんと見えているようだ。
イノシシは視力が悪いと聞いたことがあったから不安だったが、良かった。
武器を構え、体の向きは常にラッシュ・ボアーを正面に、背後を気にかけながら一歩ずつ左へ移動する。
硬い地面が砕ける破音が聞こえた――突進の前兆。
歩を止め、足に魔力をしっかり溜める。
「ブオ"ォ"ォ"!」
ラッシュ・ボアーのその黒い巨体が、その鋭い牙とともに、弾かれたようにこちらに向かって弾き出された。
それと同時に、僕もステップで地を蹴り、右側に移動する。
黒い巨大な塊が、高速で視界の左端を一閃し、僕の真横を通り過ぎる。
黒い巨体が動いたと思った直後には、すでに視界の左半分がそれに覆われる感覚。
直撃すれば、体は骨ごと砕け、臓物は内側から弾け飛んでいただろうという恐怖が、脳裏をかすめた。
――刹那、爆発的な衝撃音が背後から響き、空気を震わせる。
骨にまで響くような地鳴りが続き、地面の土がわずかに揺れた。
「ブギィ"ィ"ィ"ッ"!」
目の前には、痛みで大きく叫びながら、その場に倒れ、暴れているラッシュ・ボアーがいる。
そして、その前には、繊維の裂ける軋み音を立てながら、ゆっくりと倒れ始めている大木がある。
ダークミストを発生させる魔法陣を解除する。
すると、空気を満たしていた黒い霧が、粒子が溶けるように輪郭を失い、引いていく。
そう、僕の狙いは『ダークミスト』で状態異常を与えることではなかった。
黒霧で視界を奪い、僕の背後に大木があることを知らないラッシュ・ボアーを、大木にもろに激突させることが目的だった。
自分の攻撃力よりも高い防護を持つ相手にダメージを通す手段は、急所を狙うことだけじゃない。
こうして、相手の突進を利用し、激突の反作用をぶつけるのも手段の一つだ。
自分の機転の利きにビビる。
でも、油断したらダメだ。
間髪入れず、のたうち回るラッシュ・ボアーの首にある裂傷に目掛けて、最大化力の『ストライク』の突きを与えなければならない。
激突でダメージを受けてはいるが、致命的というほどではない。
ここで、こいつの重要な肉組織を剣で抉るのに失敗すれば、僕の勝率は一気に下がる。
思考の雑音がすべて遠ざかっていく。
右手と剣、そしてそれに流れ込む魔力。
その感覚だけが、静かに浮かび上がる。
《技能経験値が一定に達しました。『集中Lv5』がLv7にレベルアップしました。》
不意に気づいた。
焦るように力を注ぐのではなく、そっと掬い上げるように、魔力をすくい取る。
そのまま、刃の先端へ向けて、ゆるやかに螺旋を描くような流れで導く。
このやり方なら、無理なく、速く、しかも密度の高い魔力を一点に集められる。
《技能経験値が一定に達しました。『ストライクLv5』がLv7にレベルアップしました。》
剣先には、細く鋭い魔力の芯が形成される。
意識を逸らさぬまま、地を蹴り、腕を突き出す。
刃の先端が空気を裂き、集束した魔力がラッシュ・ボアーの露出する首の肉に突き立てられる。
剣先に首の傷に突き刺さると、分厚い筋肉が強引に裂け、内部の組織が左右に押し分けられる。
刃はそのまま深く食い込み、奥にある頸椎に到達した。
硬い感触を貫いた直後、鈍い破砕音が生々しく響き、骨が砕けるのが感触として、剣越しに伝わる。
砕けた骨片が肉の中で跳ね、裂け目の奥から暗赤色の血が圧を失い、上方へ噴き出す。
「ブゴォ"ォ"ォ"ォ"ッ"!」
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名前:--
種族:ラッシュ・ボアーLv14/22
状態:大量出血
HP:22/163 MP:4/44
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ラッシュ・ボアーの全身が跳ね上がるようにのけぞった
仰向けに近い体勢のまま、四肢を大きく振り回していた。
前脚が空を掻き、後脚は地面を蹴って土を跳ね上げ、胴体がねじれるたびに地面はえぐれる。
――突きを放ったばかりの僕に、不規則に動くその蹄が突き出された。
反射的に左腕を前に出し、魔力を込めた盾を構えると、蹄が正面から盾に激突する。
鋭い衝撃とともに、盾を覆う魔力の膜が瞬時に剥がれて散った。
元々ひしゃげていた盾も耐えきれず、中央から折れ、乾いた破裂音を立てて真っ二つにはじけ飛ぶ。
腕に重い衝撃が残るが、直撃だけは避けられた。
――次の瞬間、前脚が地面を強く押し、あの巨体が信じがたい速さで起こされる。
四肢が地を捉えた瞬間、ラッシュ・ボアーは頭部をこちらに向かって突き出した。
「ブオ"ォ"ォ"ッ"!」
前方から突き上げるように迫る巨大な額と牙。
だが、不安定な姿勢からのその体当たりは、あの突進と比べて明らかに鈍い。
魔力をこめた僕の左脚。その筋肉を膨張させ、地を蹴って跳び上がる。
身体を空中で左周りにひねり、その頭突きをかわした。
《技能経験値が一定に達しました。『ジャンプLv1』を得ました。》
視界に、頭突きが空を突いたラッシュ・ボアーの無防備な背中の、別の傷口が映った。
宙に浮いたまま、その回転の勢いで、その傷口に『ストライク』の剣を突き立てる。
《技能経験値が一定に達しました。『ストライクLv7』がLv8にレベルアップしました。》
《技能経験値が一定に達しました。『剣術Lv7』がLv8にレベルアップしました。》
「ブギィ"ッ"!」
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名前:--
種族:ラッシュ・ボアーLv14/22
状態:大量出血
HP:24/163 MP:0/44
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巨体が大きく震えた。
裂かれた背の傷口からは血が噴き出し続け、毛並みに絡まりながら下腹まで流れ落ち、足元に血だまりを作っている。
MPも底をついた。『回復』は使えず、こいつはもう止血の手段がない。
あと少し、こいつが失血死するまで耐えればいいだけだ。
僕の右足の裏が地面を捉え、続けて左足が着地する。
――しかし、その時、ラッシュ・ボアーが迷いのない動作で、そのまま肩と額をこちらに向け、再び頭突きをしてきた。
距離はほとんどない。
左腕を持ち上げ、半分に砕けた盾を前に構える。
――直後、ラッシュ・ボアーと構えた盾が正面から激突する。
盾が、硬質な音とともに完全に砕け散り、破片が四方に飛び散る。
ラッシュ・ボアーの弾力ある鼻が、僕の腹を突き上げた。
衝撃が深く入り込み、肉が腹の内側に押し込まれるような鈍い痛みが走る。
「ぐっ....!」
突き上げられると同時に、右手の剣を前に突き出し、やつの左目を貫く。
「ブギィ"ッ"!ギィ"ッ"!」
しかし衝撃は凄まじく、視界が跳ね、弾かれた身体は宙に浮き、背から地面に叩きつけられる。
肺の奥に残っていた空気が一気に押し出された。
「あ......がっ......」
視界の端で、ラッシュ・ボアーの蹄が地を踏む音と振動が近づいてくる。
その巨大な前脚で、僕の身体を踏みつけようと迫ってきた。
「『ライトニング』!」
その時、鋭く、透き通った声が届いた。
瞬間、あのローブの少女――ヘルガの持つ杖の先から、白く眩い光が溢れ出し、そこから閃光が裂けるように走った。
耳に刺さるような破裂音が重なる。
少女の杖から放たれた稲妻は、太く鋭く収束しながら、まっすぐラッシュ・ボアーへと突き進み、雷鳴にも似た轟音とともに、ラッシュ・ボアーの胴体に直撃した。
その巨体を這うように光が走ると、ラッシュ・ボアーは四肢を突っ張らせ、わずかにのけぞる。
そして、崩れるよう、そのまま前のめりに倒れ込んだ。
《ラッシュ・ボアーを討伐しました。経験値+168。》
《人間Lv11にレベルアップしました!スキルポイントを41取得しました。次のレベルアップまで残り23です。》
「うっ......ぁ......」
木を背に座っていた少女の身体が、前方へ傾いた。
腕で地面を受け止める間もなく、顔から地面へと倒れ込む。
右脚の太もも、裂けた布の隙間から、鮮やかな血が流れ続けている。
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名前:ヘルガ・バウアー
種族:人間Lv10
状態:出血
HP:28/62 MP:0/88
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まさか、この子、自分に『ヒール』を使わず、残ったMPを全部『ライトニング』に回したのか。
次話の更新は約2日後です。




