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1. 死亡、そして能力を選ぶ

 白一色の世界。

 足元にはチェス盤のような四角いタイルがどこまでも続いている。


 身動きを取ろうとするが、動かす体が無いことに気づく。


『……うん。準備は良さそうだね。』


 僕の正面――ほんの数メートル先に「何か」が立っていた。

 髭が腹のあたりまで伸びている年齢不詳の老人。

 頭の上には立派な金の輪が浮いており、体は昔のギリシャ人みたいに、長い布を肩からサラッと巻いている。


 そして奇妙だが、見た目に反して声変わりの少年のような声。


 これは「神」だ。

 見た目から察せるだけではなく、芯に響くようにそう認識させられた。


『そう。私は神。で、君は死んだんだけど、理由は思い出せるよね?』


 ……溺れていた子供を助けようと川に飛び込んで――死んだ。


 あ"あ"ぁ"っ!

 なんであんな馬鹿なことしたんだ。


 確かちょうど留年が確定して、むしゃくしゃして朝から友達と酒を飲んだんだ。

 それでその帰り道、川で子供が溺れているのが見えた。

 すぐ119に通報したけど、このままじゃ間に合わないなぁと思って......


 川はそれほど激流に見えなかったから、飛び込んだ。

 でも、思ったより流れが速かった。


 クソッ、なんで僕が自業自得のクソガキのために死ななきゃならないんだ。

 というか、あの子供結局どうなった。

 あの時の記憶が微妙に途切れてる。 


『子供は君のおかげで一命を取りとめたよ。彼はその後も順調に大人になって大企業に就職、美人さんと結婚。取締役まで出世して、最後はたくさんの孫やひ孫に囲まれて103歳で大往生。いやー、救った甲斐があったね!』


 神は手を大げさに振ったるジェスチャーをする。

 立体的にその子供の姿が映し出され、子供から老人までの人生が一瞬で流れていく。


 助かったのか。

 それなら、よかった……?


 いや、良くない。

 無駄死にじゃないにしろ良いわけない。


 死んだってことは……母さんが悲しむだろ。

 母さん、僕の葬式でどんな顔したんだ。

 考えるだけで辛い。死にたくない。生き返りたい。


 せっかく大学に合格して、みんな喜んで祝ってくれて、明るい未来に希望が満ち溢れてたのにどうして……


 なんであのガキが生きて僕が死ぬんだ。

 余りにも酷すぎる。


『うーん。そこは素直に子供の無事を喜ぶべきだと思うけど。』


 神様、何とかして生き返らせてくれませんか。

 本当にこれからは真面目に生きるので。

 なんなら留年を超えて停学になってもいい。


 ......どうかお願いします。

 母を悲しませたくないんです。


『……今回死んだ君をここに呼んだのは、君をRPGな異世界に転移させるためだったんだ。』


 異世界転移……いや、地球に帰らせてください。

 転移先が地球でも別にいいじゃないですか。

 なんでもしますから、本当に帰らせてください。


『それは無理。もっというと嫌。面白くない。』


 ......面白くない?

 人の生死、人生がかかってるのに?

 そういう系の神か、人間を娯楽とみてる系の。


 明るい未来が一切見えない。

 なんで僕がこんな目に。


『はは!言い当ててる。そう、人間を娯楽とみてる系の神です!まあでも残忍ではないと自分では思ってるから安心して。』


 異世界に転移されるのは決まってるんですか。本当にどうしようもないんですか。

 地球に帰っても、絶対あなたを楽しませますから。


『落ち着きなよ。ちゃんとチャンスはあげるから。』


 ......チャンス?


『うん。実は、この空間は異世界のどこかに実際に存在する空間なんだ。君が異世界に転移した後、冒険を通じてここまで戻って来られたら、異世界攻略の報酬として君を地球に返してあげる。もちろん、”死ななかった”という扱いでね。』


 本当ですか。

 いや、でもそれって絶対に難しいじゃないですか。

 きっと辺境とか、そういう次元を超えてるでしょ。

 無理難題じゃないですか。


『ははっ、そうだよ。無理難題。そのままの君を転移させたらだけどね。』


 ......というと、もしかしてチート能力とかくれるんですか?


『察しがいいね。もっとも、チートかどうかは君が決めることだけど......。今から9個見せるから、その中から3つ選んで。』


 3つも!?

 良かった、話せばわかる神だった。

 まあ、能力の内容によるが。


『実は私はもうすぐご飯の時間だから、つべこべ言わずさっさと選んでね。遅かったら適当にこっちで決める。』


 神ってご飯食べるんだ。

 驚きというか……ずいぶん人間的な神だな。

 

 そもそもご飯より僕の人生のほうが大事だろ。

 ナチュラルにご飯を優先すんな。

――――――――――――

『魔力特異点』

【莫大な量の魔力をその身に宿す。

MP、魔力に大幅な補正がかかる。】


『全属性魔法適性』

【全ての属性の魔法に適性を持つ。

常人では決してたどり着けない境地の複合魔法を操る素養がある。

500年前に災厄の魔王を打ち滅ぼしたとされる勇者は、この能力を有していた。】


『取得経験値2倍』

【取得する経験値が2倍になる。

この効果は別の同様の能力を持っていても累積する】


『剣の天才』

【剣術に多大な補正を得る。

自動的に「武術の才能Lv20/20」、「剣術Lv20/20」を取得する。

敏捷、知力に補正がかかる。】


『技魂』

【特技、魔法、スキルのレベルアップに必要な習熟度が半分になる。

また、一度覚えた能力のレベルが怠慢や時間経過によって減少しなくなる。】


『スキルポイント』

【自身に眠る可能性を最大限引き出す。

レベルアップのたびにスキルポイントを取得し、そのポイントを消費することで潜在的に取得可能な特性、特技、魔法、スキルを習得できる。】


『龍眼』

【世界の頂点に君臨する龍族が持つ魔眼。

魔力を込めると、目に映るあらゆる事象の未来を予知することができる。

予知できる未来の程度は込めた魔力に依存する。

知力に大幅な補正がかかる。】


『魔獣化』

【自身を魔獣に変貌させる。

人の身では有することのできない様々な能力を得る。

この能力を持つ子は忌み子として扱われ、生みの親ごと火刑に処される事例が多い。】


『三重詠唱』

【物質を依り代とする生物の脳の最高峰。

三種の魔法を並列的に使用することができる。

肉体を必要とする生物でこれを有するのは、大天使サリエルのみである。】

――――――――――――

 思ったより渋い。

 強いけどチートってほどじゃない。

 というか、どんな異世界なのか分からんから判断つかない。

 

 ......でも、これ以上ゴネたら流石にまずい雰囲気を芯から感じる。

 この芯から感じさせられるのも、心を読まれるのも、神の能力によるものなんだろうな。


 素直にこの中から能力を選ぶしかないか。


 龍眼はロマンだ。

 予知系能力は、バトルもの漫画だと序盤から終盤までよく活躍してる。

 これはかなりありだと思う。

 それと、説明の【世界の頂点に君臨する龍族】って記述は気になる。


 三重詠唱も良い。

 魔法がどんなものかは分からないが、複数の魔法を同時に使えるというのは、手足が増えるようなものだろう。

 戦闘での対応力も高まるはずだ。

 しかも、大天使サリエルしか持っていないらしく、超レアっぽい。


 でも、スキルポイントは絶対取るべきだな。

 状況に応じた能力を得られるのは、詰み状況回避に役立つ。


 魔獣化は論外として……技魂。

 スキルポイントと相性抜群だ。

 取った能力を持ち続け、さらに伸ばすこともできる。


『はい。シンキングタイム終了。どれにするか答えてね。3…2…1…』


 スキルポイント、技魂、経験値2倍。


『ふーん。渋いね。龍眼とか選びそうと思ったけど。』


 まあ、あくまで異世界冒険で、バトルロワイヤルとかじゃないからな。


『じゃあ行ってらっしゃい。当たり前だけど、死んだらそこで終わりだからね。ゲームっぽい世界だけど、コンティニューとかないからね。暇なときちょくちょく覗くから、精一杯、異世界攻略頑張って。』

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― 新着の感想 ―
今後に期待(っ ॑꒳ ॑c)ワクワク 真面目に生きるからと紙に懇願してるシーンで留年ではなく休学になっても良いと譲歩するシーンがこの主人公を端的に表せてていいなと思いました( ` -´ )bイイネッ…
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