序章
「とうー!…シャキーン!正義のみかたシャキーンマン参上!」「シンちゃんもう正義マンごっこ飽きたよーサッカーしようよ」「そうだなシンジ俺たちはあっちでサッカーやってるから」「お前も後から来いよ!」
(ひゅ~~~う)…(ひゅ~~~う)…
砂埃が舞う公園…赤いマフラーをはためかせ!夕日に染まるジャングルジムの上 独りのヒーローが立って居た!…そう僕だ!!
「カァ―カァー」「ヘックシュン!…ずるっ!」「シンジもう夕方よ家にかえりなさーい」「はーい!」
僕の名前は村上真実!年長の ひよこ組 6才だ!僕はヒーローが大好きだ…いや僕がヒーローなんだ!
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【3年前】
「ばぶーヤー!」よちよち…「ドッでん」「うっ…しゃしゃきん」
「はいはい借金ポーズしてないでおむつはきましょうね」
そう思えば物心ついた時には僕はヒーローだった
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【高校1年冬】
「シンちゃんは高校生になってもスカーフを首に巻いているんだね ふふふ」「ああ巻いて無いとやる気が出ないからな」今話しているのは幼馴染のミキだ…元戦隊シャキーンマンのピンクレンジャー …残念な事に戦隊シャキーンマンは小学校入学と共にいつの間にか過去の思い出となっていった それでも僕は諦めない世の為人の為シャキーンマンは存在している!…ブルブルブ…スカーフでは少し寒くなって来た そろそろマフラーに衣替えの季節かな…
※※※※
【放課後】
「キーンコーンカーンコーン〜キンコーンカーンコーン〜」
さあ今日も放課後は街に繰り出し世の為人の為シャキーンマンは活躍するのだ「村上!いい加減部活にでも入ったらどうだ…スカーフでもマフラーでも巻いていて良いから」そう話しかけて来たのは担任の体育教師ゴン太だ…名前は…覚えていない
「先生 正義のみかたたる者時間に限りがあるんです先生は戦隊シャキーンマンをご存知ですか?」「お おう」「シャキーンマンが部活動をしてましたか!」「…、…。」
さあ平和の為街の見回りだ!「ピコ…ピコ…ピコ…」「おばあさん今からでは危ないですよ 青になったら一緒に渡りましょう」「あらあらありがとうね坊や」…坊やって 「どちらに行かれるのですか?」「ええ孫が会社のお金を落としたようで銀行の機械の所に行くようにって」おやおや「そうなんですねそれは大変ですね…お孫さんはおいくつなんですか?」「あらやだ私に孫はいませんよ」「ハハッ…」「銀行に行く前にお茶でもどうですか?」「あらまあ私は夫一筋なんですよ…さあ行きましょう!」「どこに?」「お茶でしょ」「…」
「おうシャキーンマン今日は彼女連れか?」この男は最近この街に配属になった…ポリスメン…いわばシャキーンマンの同志だ「ええまあ…美味しいお茶を2杯お願いします」「おうテレビでも観て待ってろ トッテオキのお茶を入れてやる!ニカッ!」無駄に輝く白い歯が眩しいぜ!ポリスメン!
ガタッ…ガタガタガタ…「地震⁉…結構大きいかな」「シンジ…お嬢さん 大丈夫か?」「大丈夫ですよ」「なにかあったかい?」「いえ何でもないですよ」
「…えー…速報です!たった今入りました情報によりますと…東京湾沖40キロメートルにやま?…山が出現したと…地震による津波の情報はありませんが沿岸近くにいる方は海には近づかないで下さい。繰り返します」
「東京湾に山?…なんだか凄い事になってるみたいだけど シャキーンマンはこの街の平和を護るのだ!」
「ずずずずず…ふう…美味しいですね」「ええほんと美味しいわ」「そうそうポリスメン此方のレディのお孫さんが会社のお金を落としたそうで此れから銀行のATMに行かれるそうですよ」「それはたいへんですね」「ええ私に孫はいないんですけどね」「…。」おばあさんをポリスメンに預け正義のみかたシャキーンマンは街の喧騒に消えて行くのであった。
魚をくわえた野良猫を追いかけたり 落とし物をポリスメンに届けたり それが正義のみかたシャキーンマンの日常だ。
「お母さんあのお兄ちゃんマフラーながーい」「あっ見てはいけませんよ あのお兄さんは特別なの真似してはダメよ!」「はーい!」そう僕は街ではちょっとした有名人だ…、おかしな高校生として…。
「おうシンジ!揚げたてだ 持ってけ」このおっちゃんは戦隊シャキーンマン結成時代からメンチカツをくれる肉屋のおっちゃんだ!「だいぶ寒くなってきたから風引かないよう気おつけろよ」この味が今日も一日 街の平和を守れた正義の味だ!
それにしても今日は風も強くて寒い…しかし良い感じにマフラーがはためいている、きっと今の僕の後ろ姿は哀愁漂うヒーローそのものだろう。東京湾に山?気になるが僕は僕の出来ることをするだけだ!「ブロブロブロン」通り過ぎる車達も僕の哀愁漂う姿に見惚れるに…「あっ!」「…」…「シンちゃ…」
高校1年の冬…僕は…トラックの荷台にある金具にマフラーが引っ掛かり…トラックの運転手さんには悪いことをしてしまった まぁどう考えても僕が悪いのだから罪に問われることはないだろう…僕が悪い?…ヒーローとしてあるまじき失態だ…ごめんなさいトラックのおじさん…、ごめん…ミキ…。僕は…
当然の結果だ…意識が遠のいて…。
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【目覚め】
う〜ん…天井?身体は…動かない…何か声がするけどわからない…うわっな、なんだ!
僕の目の前に厳ついおっさんが…あっ止めろ!止めて…「ブッチュ〜〜〜ポンッ!」おぇ〜誰か拭いてくれ〜…うん?僕を覗き込む子供達…5才位の女の子が厳ついおっさんの頭にしがみつき何かを喚き散らしている…おっさんもまんざらでもなさそうだ…
あっ綺麗な女の人だ…あれっ抱き上げられてる…鏡に映る美女と抱かれているのは…僕…?
そうか僕の新たなる人生が始まったのだ…
【今日の正義】
振込詐欺からおばあさんを救った。