表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

ネズミの元楽園

作者: 花カマキリ
掲載日:2023/05/07

私はドブネズミだ。この醜くとんがった鼻、薄汚い毛、気味の悪い尻尾。ネズミ目ネズミ科クマネズミ属、どういうわけか私はドブネズミだ。


カフカの変身を読んだことがある。あれは確か巨大な虫だったか。まあいい。家族とは同居していないし、あんな結末にはならないだろう。


さて、暗くて目が見えなかったが、次第に慣れてきて、もう少しで自分が今どんなところにいるかが分かりそうだ。


「………」


分かりたくはなかった。一面ネズミだらけだった。ネズミの死骸がそこらに散らばり、それにネズミ共が群がっていた。私はどうしようもなくて吐いた。私の吐瀉物にすら飢えたケダモノは群がってきた。悍ましいと、ただひたすらにそう感じた。


一刻も早く逃げ出したかった。よく見ると、隙間から微かに光が漏れ出ているのが見えた。


「しめた、あそこからなら」


はやる気持ちを抑え、ネズミ共を触らないように、触らないように慎重に進んでいく。私は人間であり続けたかった。


隙間からスッと這い出る。以前より3倍ほど優れた嗅覚で懐かしい匂いを嗅ぐ。十数年嗅いだ匂いだった。


「私の家か……」


あれほどネズミが居たとは、私が住んでいた頃には考えもつかなかった。人間に戻った時には、業者を呼んで駆除してもらおう。


と、そんなことはどうでも良く……とりあえず急に襲ってきたこの空腹感を満たしたい。ネズミはすぐに腹が減る。さっき吐いたのも大きいらしい。


キッチンへ行こう、そう思った時、気がついた。一体どこにエサがあるのか。私が作るのか?無理だろう。残飯は?そんなものはない。この前はゴミの日だ。冷蔵庫?開けられない。外に行こうにも玄関も窓も鍵がかかっているし、ドブネズミは壁を登るのが下手だ。トイレ以外の水道には金網をしているし、トイレも開けられない。どこにも行き場所はないし、食べ物もないのだ。


そして初めて合点がいった。ネズミだってタンパク質だ。アレはきっとそういうことなのだ。


ますます腹が減ってきた。生きたい、飢えを凌ぎたいという根源的欲求は際限を知らず強くなる。


私はついに巣へと戻った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ