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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

スマホ魔法少女がいく!~役立たずと追放された魔法使い、大事なものを捧げたら強くなれると言われ捧げたところ……~

「はあ……はあ……」

「おい、こら! レント! もう魔力切れか!? たく、いつまで経っても成長しねぇなぁ!」


 俺の名前は、レント・ノマ―。

 伝説の魔法使いミシェラに憧れて魔法使いとなった田舎者だ。魔法は、魔力というエネルギーがなくては使えない。

 火、水、風、土の基礎となる四大属性に加え、光、闇の特殊属性。他にも組み合わせることで生まれる複合属性があり、魔法使いは使える属性によって才能が決まる。


 最初は、四大元素から二属性あれば普通。三属性で才能あり。四属性は、天才と呼ばれる。

 光は聖者や天使など神々に認められし者達しか使えず、闇は悪魔や闇に落ちた者達が使える。


 そして、伝説の魔法使いミシェラは、最初から四大属性全てを使え、そこから多くの複合属性を生み出し、神々に認められ光属性をも得たとされている。

 そう、彼女は魔法使いの神。

 全ての魔法使いの憧れなんだ。


 俺のその一人に過ぎない。

 昔から、周りと比べて体のできが悪く。身長もほとんど伸びないし、声だって中世的。裏声とか完全に女子と間違われるほど。

 だから舐められないように、体を必死で鍛え、魔法の修練だってした。

 けど、結局それは実らず、魔法もいまだに初級魔法しか覚えれてない。


「ご、ごめん。ラグ」

「ちっ! いいか? てめぇは、先代リーダーであるクラリスさんのおかげで、このパーティーに残れていたんだ。じゃなきゃ、てめぇみてぇな雑魚魔法使いが俺達A級パーティーに居られるはずがねぇんだからな!!」


 そう、俺は以前パーティーリーダーを務めていたクラリス・フォルバーさんの優しさでこのパーティーに入れてもらっていた。

 けど、そのクラリスさんは現在世界を救うために結成された勇者パーティーの一員として世界各地を旅している。クラリスさんは、俺と同じように田舎の出身だが、剣と魔法の才能があった。最初は、田舎者だとか貧弱な女とか馬鹿にされていたみたいだけど、その全てを実力で黙らせ、今は誰もが認める実力者となっている。

 

 銀色の長い髪の毛を靡かせ、剣と魔法で華麗に戦う姿は男女問わず魅了する。ついたあだ名が銀閃の魔剣士だ。

 実力だけではなく、人当たりもいい。

 俺みたいな初級魔法しか使えない奴でも、こうしてパーティーに入れてくれたんだから。だけど、今はそんな優しいクラリスさんはいない。世界を救うために……パーティーから離れたから。


「ラグ! 新人へ罵倒している場合ではありません。次、攻撃がきますよ!」

「けっ! わーってらぁ!!」


 魔力切れで、動けなくなった俺に罵声を飛ばしていたラグを止めたのは、サブリーダーであるフリッツ。俺と同じ魔法使いで、火、風、土の三属性保持者で複合属性の魔法もかなり扱える。

 冷静な判断力と分析で、クラリスさんのことを支えていた。

 クラリスさんがいない今、現状彼がパーティーのリーダー。


「……レント。後で、重大な話があります」

「え? は、はい……」


 俺のことを見向きもせずにそう言い放ったフリッツは、火の中級魔法フレア・スパイラルを唱え、襲い来る魔物の群れを焼き尽くした。

 その後、魔物討伐の依頼を終えた俺達は、ギルドへ報告を済ませ、ギルド内にあるとある一室へ向かった。そこでは、フリッツとラグが、俺のことを睨むように見つめていた。


「そ、それで話っていうのは」


 いや、わかっている。

 どうして、俺が呼ばれたのか。


「あなたも察していると思いますが、現状あなたはこの我々の中でもっとも弱い存在です」

「いつまで経っても初級魔法しか使えねぇしよ」

「……」


 事実なため何も言い返せない。

 俺も努力はしているが、全然成長している気がしない。

 俺には。


「はっきり言いましょう、レント。君には魔法の才能はない」

「――――」


 わかっていた。

 わかっていたけど……。


「このまま戦い続けてもパーティーメンバーに迷惑をかける。クラリスさんは、君のことを気にかけていたようですが……今のリーダーは僕です」


 キッと俺のことを睨み、フリッツは宣言する。


「レント・ノマ―。君を今日限りで、このパーティーから追放します」

「ま、当たり前だよな」


 突き付けられた言葉を、俺は受け入れていた。

 そう、当たり前のことなのだ。

 何時までも初級魔法しか使えず、すぐ魔力が切れてしまうような奴を残しておくほうがどうかしている。

 フリッツの判断は……正しい。


「なにか言いたいことはありますか?」

「……あり、ません」

「よろしい。あぁ、それとひとつアドバイスです。才能のない君が、叶うはずのない夢を追い続けるのは苦悩。きっぱりと諦めて田舎で平穏な暮らしをすることをお勧めします」

「あー、これでもうてめぇの面を見なくて済むって思うとスッキリするぜ」


 俺は、静かに頭を下げ、部屋を後にした。



・・・・



「……はあっ」


 パーティーから追放された俺は、荷物をまとめて街を出ていた。

 とぼとぼと俯きながら、故郷へ続く道を。

 故郷までは、歩いて二日。

 馬車で移動するって手もあるけど、今は一人になりたい気分。


「父さん達になんて言おう……」


 立派な魔法使いになると告げて故郷を出てからというもの、俺は定期的に手紙を出していた。

 その時に、当然クラリスさんのパーティーに入ったことも手紙に書いた。

 父さん達は、喜んでくれた。

 あのクラリスさんのパーティーに入れたんだ。頑張れ! 立派な魔法使いになるんだぞ! と。


 けど、それからの手紙はほとんど嘘しか書いていない。

 順調だよ。このままなら夢が叶うのはすぐそこだ! とか。

 本当は、全然成長していないうえに、いつもクラリスさんに励まされているダメな男なのに……。


「クラリスさんも、どうして俺みたいな奴をパーティーに入れてくれたんだろう……」


 本当に謎なんだ。

 聞こうにも真実を知るのが怖くてまったく聞くことができなかった。

 彼女には妹や弟が居て、俺のことを故郷に残した弟を思い出し、可哀そうになってパーティーに入れたんじゃないかと言うのが一番の有力な情報だ。

 

 けど、そう考えると納得がいく。

 彼女が、俺に向ける態度は、完全に子供の相手をしている感じだった。

 俺は一人っ子だったから、姉が居たらこんな感じだったんだろうか……なんて思ったこともある。

 

「今頃クラリスさんは、世界を守るために戦っているんだろうな……」


 それに対して、俺は自分の不甲斐なさを嘆いている。

 いつか。いつか努力は報われる。

 いつまで経っても成長しない自分にそう言い聞かせて頑張ってきたけど、御覧のあり様だ。


『―――』

「ん? 今、なにか」


 誰かの声が聞こえたような気がした。

 しかし、周囲には誰もいない。

 気のせい、か? そう思い俺は再び歩き出す。


『―――い!』


 気のせいじゃない? やっぱり誰かの声が聞こえる。でも、いったいどこから?

 周囲には何もない。

 どこまでも続く平原だ。姿を隠せそうなものはない。


『――だ―――て!』

「ど、どこに居るんですか!」


 徐々に声がはっきり聞こえてくる。俺は、周囲を見渡しながら叫ぶ。

 まさか魔法で姿を隠している? 幻惑系の魔法なら膨大な魔力により破ることができるけど、俺みたいな弱小魔力じゃ……。


『こっち――来て!』

「……こっちか?」


 どうしたものかと考えていると、なんとなくだが声の主が居る方向がわかった気がした。

 

(なんでだろう。声の主が敵かどうかわかっていないのに……不思議と足が動く)


 そのまま進んでいき、数分。

 本当に何もない。

 けど、俺は不思議とここだと思い立ち止まった。


『ほいキター!! 一名様ご案内!!』

「え?」


 最初よりはっきりと声が聞こえたと思いきや足元に魔法陣が展開。

 光に包まれ、一瞬にして平原からどこかの一室へ転移した。

 なんだか可愛らしい衣装に身を包んだ女の子達が描かれた絵が、壁いっぱいに貼られている。他にも、見たことのない文字が書かれた本がズラッと並んでいる本棚も。

 それに、ベッドの上にはこれまた女の子が描かれた棒状の物体もある。

 

「いったい、なにが」

『いらっしゃーい!! 私のプライベートルームへ!!』

「声……この板から?」


 困惑している俺に再び声が聞こえる。

 それは、テーブルの上に置いてある白い板から響いていた。


『きゃー! 想像していた以上に美少年! このまま女装してもイケる!!』

「え、えっと」


 白い板では、なぜか金髪の少女が動いていた。

 まさか閉じ込められている? いやでもものすごく明るいし……というか、なんだかこの子見たことあるような。


『あ、自己紹介がまだだったね。やあ! やあ! 私の名前はミシェラ! 自分の好きなものには一途! 元気が取り柄の永遠の十七歳!!』


 ミシェラ? ……ミシェラ!? 


「ミシェラって、あの伝説の魔法使いの!?」

『お? そっちでは伝説になっていたんだ。いやぁ、照れちゃうなー! でへへ!』


 年相応な感じに照れる。いや、待ってほしい。

 名前が同じなだけだ。そうに違いない。確かに、金髪で性別が女って言うのは同じだけど……ミシェラは、五百年以上も前の人物のはずだ。

 けど、彼女はどう見ても十代。自分でも十七歳だって言ってるし。史実ではミシェラは人間だったはずだし、でもある日突然消えるように姿を消したとも……それがもし誰かによって封印されたんだとしたら。


「あの、あなたが本当にミシェラ様だったなら」

『あー、ミシェラさんでいいよ。いや、お姉ちゃんでもありかな!』

「えっと、じゃあミシェラさんで」

『しまったー! 選択肢をお姉ちゃんだけにしておくべきだったー!』


 な、なんだろう。俺のミシェラ像がどんどん崩れていく……。


「そ、それでミシェラさん。あなたは、どうして板の中に?」

『板じゃなくてスマートフォン! 略してスマホね!』

「スマホ?」


 聞いたことがない名前だ。魔法使いの頂点のみが使える魔道具だろうか? いや、待てよ。そういえばとある書物にはミシェラは変わった杖を使っていたと書いてあった……まさかそれがスマホ?

 

『これは私の世界では通信道具として使われていたものなんだけどね。転生する際に便利グッズに変えてもらったんだよねー』

「私の世界? 転生?」


 なんだ。彼女はいったいなにを。


『私はね、別世界から神様によって転生してきた人間なんだよ』

「……凄い、ですね」


 もうそれしか言えなかった。あまりにも壮大な話なので、俺の思考回路が追いつかないでいた。

 

『まあまあ私のことは良いの。今は、君だよ! 君!!』

「俺ですか?」

『そうそう! あ、お名前は?』

「レントです」

『うむ。ではレントくん。……君、強くなりたくはない?』


 にやりと笑みを浮かべ、スマホから問いかける伝説の魔法使いミシェラ。

 憧れの魔法使いから強くなりたくないか? と言われた俺はごくりと喉を鳴らす。


「―――強く、なりたいです」


 一瞬驚いたが、俺はミシェラさんの問いかけに答えた。

 そうだ。俺は強くなりたい。

 少し……いやかなり憧れるの人像が違って戸惑ったけど、今でも俺の憧れはミシェラさんだ。彼女のような魔法使いに俺はなりたい。

 それは今でも変わっていない。


『うん。即決だね。いいよ、そういうの』

「俺のことを強くしてくれるんですか?」

『もちろん』


 憧れの人が、俺のことを強くしてくれる。

 こんなに嬉しいことはない。


「そ、それでどうすればいいんですか?」


 強くなれるならどんなことだってする。

 相手は伝説の魔法使いだ。

 俺の想像もしない修行方法があるんだろう。


『なーに、簡単なことだよ。君の……大事なものを捧げればすぐに強くなれるさ。それはもう生まれ変わったかのようにね』


 先ほどまでの明るさから一変し、まさに伝説の魔法使いと言った雰囲気に。

 その口から出てきた言葉に、俺は目を見開く。

 大事なものを捧げる。

 つまり代償を得て、強くなるってことだ。


「それで、強くなれるなら」

『またもや即決。やっぱり私の声が聞こえただけはあるね。それじゃあさっそく』


 俺の答えを聞いたミシェラさんは、パン! と音を鳴らし両手を重ねる。

 刹那。

 俺の体は膨大な光に包み込まれた。


『さあ、君は今から生まれ変わるんだ』


 生まれ変わる。

 そうか。俺は、レント・ノマ―じゃなくなってしまうんだ。やっぱり大事なものっていうのは……でも、それでも俺は強くなりたい。

 例え、この身が変わろうとも!


『最強の魔法少女として!!!』

「―――へ?」


 あのすみません。今、なんて。

 しかし、問いかける暇などなく俺を包んだ光は弾ける。

 

『いえーい!!! 性転換成功だぜー!!!』

「……マジすか」


 俺は、すぐ近くにあった全身を映せるぐらいの鏡を見た。

 そこには、部屋に貼られている絵と同じような衣装に身を包んだ可愛らしい白髪の女の子が映っていた。

 

『くー! 白髪美少女ってやっぱりいいわー!!』

「あの、大事なものって」

『うん。男の子の大事なものと言ったら……きゃっ!』


 あー、うん。確かに大事なものだと思いますが……てっきり命とかそういうものだと思っていました。

 それがまさかそっちの方だとは……けど、力は湧いてくる。

 強くなっているのは確かだ。

 己の中に信じられないほど膨大な魔力があるのを感じる。


『ちなみに、今の君の強さは全盛期の私を超える! かもしれない』

「そんなに!?」

『このミシェラさん式性転換は、その者の性欲によって強さが決まるの! そして、今の君の強さから考えて、性欲だけなら……オーク以上!!!』

「えー……」


 なんだか嬉しくないんですけど。


『もしかしたら性欲だけなら世界一だったかもしれないね。うん! 誇ってもいいよ!!』

「あ、あははは……」


 これが、俺とミシェラさんのファーストコンタクト。

 ここから俺達は、魔法少女として世界中を震撼させていくのだった。

よくある中途半端な終わりをするあれ。

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