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イリスティア・ドゥールは侍女である!  作者: 心菓 コウ
第1部 イリスティア・ドゥールは侍女になる!
13/13

献上である

「えーと、こちら……ルイの世界のお菓子で『プリン』を今日は持ってきました」


...

...

...


あれからダノンや料理人達と試行錯誤の末、前世の世界ほどではないけど美味しいプリンが出来上がった。アスメディカ家に持っていくのに恥ずかしくないレベルまで味や食感の良さを引き上げたみんなにはお母様から別途ボーナスが出たようで、聞くところによると料理人の間で私は女神扱いされてるらしい。恐れおおいったらない。


お父様にもあのあと作って渡したら、愛娘の手作りだ! と泣いて喜んで美味しい美味しいと食べてルンルンでお仕事に出かけたし、妖精達も甘い美味しい他の妖精に自慢しないと!とすっ飛んで行ってしまった。忙しない……。


そして今日はそんなプリンを持参し、精霊王様たちと定期お茶会の日。

以前は一週間に一度だった夢の中でのお茶会は、私が歩けるようになり現実世界から吸収する情報が多くなるにつれ疲れやすくなっただろうからと月一の昼間になりました。


大きなトレーに人数分乗っけて部屋へ戻ると、もう既に精霊王様たちとのお茶会空間になっていて、それぞれ席で待っていました。


そして先程の一言目に戻ります。


「まあこれが!美味しそうね!」

とエステル様。

「まあまあな見た目だな」

とイフリート様

「文句があるなら僕が貰っちゃうよ?」

とシルフ様(風精霊女王は僕っ子である)


シルフ様が風の魔法で私の手からトレーを浮かばせるとシャドウ様が自分の隣の空席を引いてくれた。

昔は大きく感じた席も、今の私なら1人で座ることができるようになった......のだが今もシャドウ様が私をひょいっと持ち上げて座らせてくれている。


「ありがとうございます、シャドウ様」


お礼を伝えると、シャドウ様は静かに頷いた。

わざと自分の隣にイリィの席を毎回置いているのに、本当に無愛想ね。とウンディーネ様がお茶を置きながら呆れるように笑う。そうなんだ? 顔を見たかったがそらされてしまった。


「お喋りはそこらへんにして、儂はそろそろご相伴に預かりたいのう」


ノーム様がほっほと長い顎髭を撫でながら言うと、その隣のエテルネ様もそうしようそうしようとルンルンで応える。


皆でいただきますと一言。

私が日本人だった頃の名残で、いつもお茶をもらうときに言っていたのを疑問に思ったエテルネ様に説明したら真似するようになって他の精霊王様もするようになった。

各々がスプーンを手に取り、パクリと一口。

それからのリアクションは様々だ。


ニコニコしたり、叫んだり、無言であっても手が止まっていなかったり。


最終的にみな美味しいという意見は一致したようで嬉しい。


ご馳走様とスプーンを置いた王たちの笑顔と満足感と幸福が場に溢れるもので、多分明日はこの世界にいい事がありそうだななんて思う。多分だけど。


「イリィ?」

「あ、はい! ごめんなさい、なんの話でしたか?」

「まあ良かった。死んでしまったかと思ったわ」


エステル様がニコニコ笑う。これももう何度もやった鉄板ネタである。そんな簡単に死なないです! と返すとうふふと和やかに笑われる。


「せっかく私たちのイリィが美味しいものを振舞ってくれたのだもの、お礼をしないとね」

「そんな! 私こそいつもお茶会に誘って頂いて楽しいので!お茶も頂いてますから!」


精霊の王様からのお礼だなんて恐れ多い。

だっていつも飲ませてもらってるお茶がそもそも特別製だからそれの対価としても足りないくらいだ。

そう伝えると、エテルネ様が優しい笑みを浮かべて私の頭をポンポンと撫でた。


「気づいていないかもしれないけど、君の作ったものには上質な魔力が宿るんだ。精霊王でもあまり味わえない甘味だからね、お礼がしたいんだよ。もちろん僕も」


いつもお茶会に来ると出ているお菓子、実は見た目だけ楽しめる代物で精霊王様たちにとって味はしないものらしい。そして私のように魔力を持って作られたお菓子は精霊たちにとって極上の甘味になるとのことでプリンは大層喜ばれたようだ。


しかしいつもテーブルに置かれていたあのお菓子たち、とても綺麗な見た目なので気になってはいたのだが私から食べたいとは言えず、かと言って食べたいか訊かれることもなく、そもそも誰にも手をつけられていなかったのでただのオブジェみたいになっていたけど味しないんだ。ちょっと残念。


とにかくそんなプリンを献上した私になにか褒美をくれるらしいが……


「別にこれといって欲しいものはなく......」

「ふうん? じゃあいつか困った時に私たちの力で助けましょう、そうしましょう」

「え」


「お、そうだな! 俺は何でも燃やせる炎の力を貸してやろう!」とイフリート様。


「えー! ずるい! なら僕は空を自由に飛んだりどこにでも行ける風にしよ! 邪魔なものを吹き飛ばすのもOK!」とシルフ様。


「それなら私は雨を降らせようかしら?それともノームと一緒に自由なところへ大きな湖を作るのもいいわね」とウンディーネ様


「そらええのう! なんなら雲まで届く山でもこさえるか! 腕がなるわい!」とノーム様


「私が出来ることは少ないが力にはなろう」とシャドウ様


「私は知っての通り、誰でも癒しましょう。死を迎える前であれば……だけれど」とエテルネ様


「僕は……僕はー……うーん……まあなんでも言ってよ! だからまたお菓子作ってね」とエテルネ様


たしかに砂糖が貴重とはいえたかだか素人のプリンに世界のあれこれが傾けられると……。甘い甘味って世界を生かしたり壊したりするんだな……。あっはは……。

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