第1話 過去を受け入れていく
さみしいけれど、そんなに辛くはない。
1年前は、もっと本気で不安だった。
この恋を失ったら、私の人生はもうそこで終わる。
恋だと思っていたのは、恋人だと思っていたのは、私だけだったんだけれど。
今は、ゆっくり過去を受け入れていくことができると思う。もう何もかも手に入らないけれど、失ったわけではなく、最初から何もなかったんだけれど、それを恋だと言ってくれる人はいないけれど、私には、最後の大切な感情だったんだ。
それでも何も変わらず、変えることができず、寝る前にただ涙が流れることもあるけれど、この生活も、この人生も、時間が私を慣れさせてくれている。
記憶は薄れていくし、ほんの少しの思い出も、きっと1年後には思い出すこともできなくなっているんだろうけれど。
この、肌寒く、ひんやりとした風と、あたたかく頬を流れる涙と、ひとりでいる安らぎとさみしさに、何の不足もないからだ。
このさみしさが私の人生なのだ。
少し誇らしく思えば良い。
ひとりでいきている。
誰もいなければ私は傷つかない。
私を傷つけることができるのは、私が好きな相手だけだから。
ノーガードでフルボッコ。
それでも、きっと一生ガードなんて覚えない。さみしいと寒いに鳥肌を立てて、毛布にくるまってひとり眠る。
あのあたたかい腕の中も、筋肉質な重い脚も、最初から無かったのだから。
もし
もしも、
そんな世界があったのなら、わたしはそこで生きていきたかった。