第19話 運命と好きでたまらない優木さん
三章開幕でーす。
そして、最終章でもあります。あと少しだけ、隆弘とはるかの物語にお付き合いください。
次話がかなり重要な回ですので、これまでの、はるかの気持ちを知ってください
教室で彼女宣言をした日、私─優木はるかは真島隆弘に告白をする予定だった。
理由は簡単だ。私の中で隆弘の気持ちを抑えきれなくなったからである。一緒に生活をするようになってから意識をするようになった。それでも、一線を越えたくなかった私は、彼のことを飼い犬という口実を作って接していた。
今思えば、口実を作っていた時点で私の気持ちなんて決まっていたようなものだ。実際、彼のことを知る機会が増えた結果、私は陥落してしまった。
彼のことを考えるだけで口元がニヤけてしまう
他の女と話してほしくないほどに独り占めしたい
彼の浮かべる優しい笑顔は私だけのものにしたい
こんな具合に私はべた惚れ状態なのだ。いつ好きになったのかと言われてもよく分からない。気が付いたら好きになっていた。よもや私が、こんな少女漫画でしかいわないようなセリフを言う日がこようとは……。
それに私の中で、いじめから助けてくれたあの子とのことだって決着をつけた。良いのか悪いのかは分からないが、松田先輩との一件が私の気持ちに一つの区切りをつけさせてくれたのだ。
悪い噂が流れ、隆弘が落ち込んでいた時、彼は私のことが頼りになっていた。隆弘に必要とされて私はすごく嬉しかった。何をおいても、隆弘のことを支えてあげたいと思った。打算的な私からすれば、すごく珍しいことだ。
それは、私の中で彼の存在が大きくなっていた証拠にもなるんだけどね。それと同時に、おばあちゃんに教えてもらったある言葉を私は思い出していた。
──縦の糸はあなた、横の糸は私。織りなす糸に出会えることを人は幸せと呼びます
初めて聞いたときは意味が分からなかったけど、今はわかる。だって、隆弘に出会ってからの人生は私にとって文句なく幸せだもの。ありのままの私を受け入れてくれた彼のことを、私が幸せにしたいって今は思ってる。いや、絶対に幸せにしてみせる!
私を助けてくれた「あの子」の気持ちが残っていないと言えばうそになる。でも、今、私の目の前にいるのは隆弘だ。だから私自身の気持ちにけじめをつけるために
彼のことを下の名前で呼ぶことにした
猫被りがバレる覚悟で彼のことを守った。
そして、彼に告白しようとした
その時、一つの大きな問題が発生した。告白を決意した帰り道のことである。
目の前で泣いている女の子を、隆弘が助けた時に言った言葉。
「こんにちは、おじょうさん! ぼくを見て元気を出してよ」
そう言いながら、女の子の前でストラップを動かしていた。私はその光景を見て息が止まりそうになった。なぜならの台詞も、ストラップの動かしかたもほとんど一緒だった。あの日起きた運命の出会い。私は今でも鮮明に覚えている。だからこそ間違うはずない。
(隆弘が……あの……子……?)
何度かその可能性を考えた。そのたびに、その可能性はないと自分に何度もいい聞かせた。
だってそうだろう。無理やり婚約し同棲させられた相手が私の運命の相手なんて、できすぎている。
だけど、目の前の出来事は、運命の相手が隆弘というのには十分すぎて……
そして、震える声を必死に抑えながら隆弘に聞いたのだ。
「ねぇ……あなたが私を助けてくれた初恋の人なんじゃないの……」
最後まで読んでいただきありがとうございました。
次話はかなり重要な回であると同時に、かなり甘い回です(笑)




