表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界物語  作者: くわがた虫
2/6

仕事

なぜ、ギルドや役所ではなく、教会に来たのか。

答えは簡単。

教会だけが無料で身分証を発行してくれるのだ。

(正確に言えば、無料ではなく、労働を対価として取られているのだが…。)


身分証の発行自体大したことはない。

白鉄という摩金属のプレートに血を一滴垂らすだけ。


「プレートの原価は、カスみたいな値段なんですけどね。ハハハ。」

普通の少年は楽しそうに笑った。


エリンギ


種族

普通人LV3

職業

勇者教信徒LV1

スキル

悪食LV3

擬態LV2


「悪食は何でも食べられる能力みたいですね。うわっ、しょぼ。とりあえず、明日から仕事を用意するので、今日は休んでください。聖堂の奥のスペースで寝てください。」

少年は笑顔で言った。


俺は、とぼとぼと歩いて行く。

聖堂の奥のスペースは本当にただのスペースだった。

屋根があるだけで、他には何もない。

俺より前に4人の男が寝ころんでいた。


俺は会釈し、適当なところに座る。

しばらくして、シスターの女の子がやってきた。

「エリンギさん。この服に着替えてください。」


俺は、学生服を失った。


ごわごわする服は、学生服とは違った着心地の悪さ。

何も考えず寝よう。


「朝ですよ。」

シスターさんが、パンとスープをくれた。

俺は久しぶりのまともな飯に感動した。





「お尻は大丈夫?」

昨日からお世話になっている普通の少年。

いや、普通に後ろ暗い少年は言った。


「…?」

俺が首を傾げるとその表情に疑問を感じたのか、後ろ暗い少年が言う。


「君、LV3だし、犯されちゃうと思ったんだけど…。あ、そうか擬態で逃げ切ったのか。まあ、それはいいや。事務連絡だけど、君の入国を観光からボランティアに変えたよ。これで一ケ月はこの街に滞在できるよ。」

こいつすげーこと言ってるのな。

まあいいや。


「一ケ月は教会のボランティアに協力しなきゃいけないってことか?」


「うん、そうだよ。仕事内容は公衆浴場の掃除。一日二ヶ所ね。」


「休みは?」


「ないよ。ボランティアだからね。」


「給料は?」


「ないよ。ボランティアだからね。」


「逃げたりしたら?」


「教会では一回しかプレート作成をしないんだ。それに、教会の仕事から逃げた奴は奴隷にするって決まりなんだ。」


「…。」


「他に質問が無ければ、案内するよ。」


こうして、俺のボランティアが始まった。





風呂の掃除は結構楽しかった。

でかい風呂は見たことないし、帰りにはシャワーを使わせてくれる。

結構なきれい好きな俺にはありがたい仕事だった。


「おう、エリンギ!今日もしっかり来て偉いな。勇者教なのに。」

風呂屋のおじさんとも仲良くなった。


「…勇者教はあんまり良くないんですか?」

俺は、薄々感じていたことを聞いてみる。


「おう、勇者教って言えば、街の掃除から奴隷売買までやってる悪徳業者ってイメージしかないぜ。」


「…。」


「その様子じゃ、お前さんも騙されて入ったんだろ?」


「僕はお金も身よりも無いもので…。」


「…そうか。何か力になってやれたらいいんだがな。」


「そのお気持ちだけで十分です。」


「…たく、お前って奴は。」












「お疲れ様です。一ケ月間よくがんばりました。」

後ろ暗い少年は、笑顔で言った。

「で?どうします?継続しますか?」


「いや、継続はしない。」


「一ケ月間の申請でしたので、この街から出ることになりますけど平気ですか?」


「は?」


「いえ、申請したのは一ケ月ですから。」


「ああ、そういうことか。」

このシステム作った奴すごいわ。

街にいたかったら、毎日ボランティア。

それが出来なきゃ、街にはいられない。

入国申請には、金がかかる。

詰んでるわ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ