2話
僕は今日もいつもと同じように、大学から帰る途中でジムによっている。ここに来るまでにやけに騒がしいところがあった気もするけど、正直興味はないし気にも止まらなかったな。それよりも、今日の筋トレのことで頭がいっぱいだったからね。
アッ、僕の名前は小金井凪。21歳の大学生だよ!自慢じゃないけどけっこういい大学に通っているんだ。趣味は筋トレで毎日ジムに通っているんだ‼
僕が筋トレを始めたのは高校生のときだったんだ。昔の僕はヒョロヒョロで、顔もよく女見たいと言われ続けてたよ。勉強はそこそこ、運動神経もそんなにいいわけじゃなくて友達も少ない。そんな情けない自分を変えたくて筋トレをしてみたんだけど、少しずつだけど成長するのがわかり始めた頃から楽しくてしょうがなくなったんだよ。そうして続けてきた結果、理想の身体を手に入れることができたんだ!
·····なんで脳内で自己紹介しているのか不思議だよね。僕も不思議だ。なんだかいきなりこうしなくちゃいけないように感じたんだ。
それにしても今日はジムに来ている人が少ないな? 何かあったのかな?と、思ったら奥からがたいのいい人がでてきた。
「あれ? 凪くんじゃないか。ここに来るまで、大丈夫だったかい? 何か大変なことがあったらしくて大騒ぎだったらしいね?」
彼は僕のトレーニングを見てくれているマッチョだ。僕より年上で自宅警備員という仕事をしているそうだ。彼はジムで仲良くなった筋トレ仲間で、僕に彼の仕事を教えてくれるいい人で僕にも同じ仕事を勧めてくれるんだ。何でも、彼の仕事は家で出来る良い仕事だと言っていた。
僕はまだ将来のことは考えていないけど、副業にするのもいいかもしれないなんて思っている。自宅を警備することはもちろん大事だし、それ以上に名前の響きがカッコいいと思う。
そんなことを大学の友人に話したらなぜか憐れむような視線を向けてきて「どうしてこの大学に入れたのか心底理解できない。」などとずいぶん失礼なことを言われた。どうしてだろうね、両親に話したら喜んで応援してくれたのに。
ちなみに、しばらく後に自宅警備員がニートのかっこよくよんだだけのようなものらしいとわかった。このせいで、逆になんで両親は応援していたのかわからなくなった。
「そうなんですか? 特に何かあったようには感じなかったですけど?」
「えっ、でも今外から来たよね? 窓の外を見てたけど、今も外はすごい騒動だと思ったけど·····」
「うーん。そういえば少し騒々しかったかもしれないかな?」
「少し!? いやいや、すごい騒ぎだと思うよ!?」
確かにうるさい場所があった気がするが、特に気になるようなものがあったとは思えない。強いて言うのならば、道に大きな穴があったことだろうか? まあ、誰か掘ったんだろう。
「えーと、まあ凪くんのことだから、ジムに来る途中だったみたいだから、頭の中は筋トレでいっぱいだったと思うし、気づかなかったのかもしれないね?」
「はい。」
まさにその通りだ。さすが、よく分かっていらっしゃる。僕は筋トレのことになるとほかのことに目がいかなくなってしまう。まあ、自覚があるわけではないけど、後から僕が気づかなかったことを指摘されることが多いんだよね。
これ以上話してもわからないものはわからない。彼も諦めたようなので話もここまでに、僕らは筋トレを始めた。
2時間の筋トレでいい汗を流したあとの帰り道、規制線が張られていたため遠回りすることになった僕は、先程の大騒ぎがかなりのものだったらしいことにいまさらながら気付かされた。少しだけ中が見えたのだけど、何やらすごくものものしい雰囲気で驚いた。ほんとに何があったんだろう? 少し不安になり、家へ急ぐことにした。
家に着くと真っ先にテレビをつけることにした。ニュースで報道されてるかもしれない。そう思っていたんだけど、ニュースの内容は想像以上であり、かなり大変なことになっていたようだ。わかったのは日本の各地に大きな穴が突然、同時に発生したこと、そのうちのいくつかの場所で未確認生物があなから這い出してきて周囲にいた人々を傷つけたことだ。
そして、今現在自衛隊の部隊が発見された穴を囲い、警戒しているらしい。さらにSNSに上がっている情報によると、特に新宿での被害がひどく、死傷者は千人以上いたという。
・・・僕はぎりぎりその場に居合わせなかったらしい。よかった、今更ながら急いでジムに向かっていた自分を褒めたい。
もしかしたら、自分が死んでいたかも知れない事実を知り、愕然としていた。