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第一生 果穂の場合 上


ジリリリリリリリ





聞き慣れた目覚ましの音





果穂(かほ)〜?早く起きてないと遅刻よ〜?」




聞き慣れた、毎朝の少し怒った口調のお母さんの声




ふとスマホを手に取り画面を覗く




「2019年10月2日…!」



私が飛び降りたのは2020年3月10日…




「あっ!」



思い出して慌てて通学カバンを開く





教科書に落書きも破られた跡もない




「本当に戻ったんだ…」



安堵からか不安からか、自分でも分からないまま涙が溢れた…









「夏帆〜??!」




「はーい!!!」



急いで制服を着て支度をし、居間に向かった





ボロボロのアパート



所々破れが目立つ壁紙に(ふすま)、狭い台所にお母さんの姿。



いつものお味噌汁のいい匂い―――






「もう、高校生になったら早起きするんじゃなかったっけ?もう1年の半分終わりましたけど?」



このセリフ覚えてる…



いつも寝坊してくる私を見兼ねて母が(あき)れた表情で言ってきた言葉だ。




『うるっさいな〜別に遅刻はしてないから良いの!お母さんには関係ないし!』




と、前の私は答えたが



「うん…ごめん…」




私がいじめられ始めて、様子がおかしいとお母さんは勘づいて凄く心配をしていた


その姿が思い浮かんで、そして勝手に死を選んでしまったことに申し訳なくなり、私は素直に謝った。






余りにも素直なので、お母さんは一瞬驚いた顔をしたが、



「分かったならいいのよ!」



と、少し嬉しそうにそっぽを向いた



私も、母子家庭でお母さんと2人暮らしで育ったせいか、だんだん素直になれずに、いじめられていたことも相談出来なかった



お母さんを心配させたくないという気持ちと、こんな環境で育ったから私はいじめられたんだ!と、いう勝手な被害妄想を前の私は抱いていた。




でも、いざ死のうと飛び降りた時、お母さんの悲しそうな顔が思い浮かび、女手一つで育ててくれたことや、お母さんもいろいろ悩んでいたんじゃないか…と、今までに無い考えが浮かんだ。








もう、お母さんにも同じ思いはさせたくない―――






今日私に起こることを全て回避して、いじめられる未来を変えてやる!







私はそう自分に言い聞かせて、震える手を抑え家を出た。








最寄りの駅から2駅、駅からは徒歩15分…




いじめられていた時はこの道のりがとてつもなく長く、地獄への道に感じた







学校に着くと、時間ギリギリということもあって生徒でごった返していた








学校に足を踏み入れる勇気がなく、校門前で立ちすくんでしまった




足が動かない…




ずっと立ち止まっている私を通り過ぎる生徒たちが不信そうに見ていく







やっぱり帰ろうか…






そう思っていると、ドンッと誰かに背中を押され私は前に進んだ






「ちょっと果穂?何してんの校門なんかで!」




この声…



振り返りその顔を見る



途端に私は冷や汗と震えが止まらなくなった





「みゃーこ…」




そう、彼女は美耶子(みやこ)。高校からの友達で私の親友…だと思っていた子。



そして私がいじめられる原因になった子…










彼女とのことがフラッシュバックするー
















原因は些細(ささい)なことだった。























高校入学してすぐ



中学からの友達たちとはクラスが離れてしまい、知り合いもなく浮いている私に、みゃーこは声をかけてくれた。





明るくて可愛いみゃーこがクラスの中で1番目立っていて、そんな彼女の周りには必然的に人が集まってくる。



声をかけてくれたみゃーこのグループは派手な子が多く、いつも注目の的だった。



そこに私も自然と加わるようになった。



中学まで地味なグループにいた私は、正直注目されることに背徳感(はいとくかん)を得ていた。




それと共に、グループのみんなに合わせることへの疲労感も感じていた。





休み時間は、もっぱらコスメとアイドルや俳優、カッコイイ先輩について話している。



私は恋愛経験もないし、コスメも仲良くなってから買い(そろ)えて見よう見まねでしているだけだし、話しを合わせる為に必死で雑誌も読んだ。




知らないことがあっても、みゃーこは嫌な顔ひとつせず(こころよ)く教えてくれる。




5人グループの中でも、放課後や移動教室など、私が1番みゃーこと過ごすことが多かった。



みゃーこは私に心を許してくれていたし、もちろん私も。





私はみゃーこが大好きだった。











夏休みが終わり、始業式。



みゃーこが始業式後話したいことがある!と、グループのみんなに終わってからカフェに行こうとお誘いがあった。



特にみんなバイトもしてないので、5人全員でカフェに向かった。






「みゃーこね、好きな人ができたの!」



「えー!マジ?!」


「誰々ー?!!」



「みゃーこが好きな人出来たなんて初めてじゃない?」



「うん!そうなの〜初恋なの!」



みゃーこはとろんとした目で(ほほ)を赤く染めていた




「誰ー?教えてー!」



「んとね、同じクラスの佐々(ささき)優大(ゆうだい)

夏休みに私が当番で学校に来た時に転んじゃって、たまたま部活の準備でとおりかかった優大がおんぶして保健室まで運んでくれたの!」



「きゃーなにそれ少女漫画みたい!!」



「うん!今まで優大なんて男友達の1人だったのに、軽々みゃーこを持ち上げて運んでくれたから、何か男らしさにぐっと来ちゃって!もーどうしよう!こんな気持ち初めてだよお〜!」




「わー!みゃーこ頑張ってね!!」



「ありがとう!果穂が言ってくれると心強い!応援してれる?」



「もちろん!応援するよ!!!」



「嬉しい!みゃーこと果穂は親友だもんねー!!」






みゃーこは見た目の派手さとは裏腹に、今まで彼氏どころか好きな人もいたことがない程ピュアだった。




好きな人を聞いて、私達もついつい嬉しくなって、はしゃいでしまった。





みんなでみゃーこの恋を応援しようね!と約束をした。










翌日の朝、ホームルームが行われ、くじ引きで私はみゃーこの好きな佐々木優大の隣の席になってしまった。





罪悪感(ざいあくかん)を胸に新しい席に着く…




ドカッ



荒々しく佐々木優大が隣に座る




岩沢(いわさわ) 果穂…って、もしかして南小だったかほ?」



「え?!」



「俺!小3でクラス一緒だったゆうだい!」



「あ!もしかして、途中で転校しちゃったゆうくん?!」



「そうそう!

親の転勤(てんきん)で引越したんだけど、高校からまたこっちに戻れることになってさー!

小学校のやつらあんまりこの高校通ってないから、知り合いに会ってびっくりしたよ!」




「佐々木優大ってゆうくんのことだったんだ!

ゆうくん、としか覚えてなくて、すぐに気付けなくてごめん!」



「いーよいーよ!俺も、かほって気付いてなかったし!

名字、前は伊藤じゃなかったっけ?」



「あーうん、小4の時に親が離婚して、お母さんの名字になったんだよね…」



「あ…そうだったんだ!ごめん!

てかさ、俺まだミキオとは連絡取ってるんだけど、あいつ中学の時盛大にふられたんだってー?それについて教えてくれなくてさー!」





きっと、名字の話題から()らしてくれたんだ…


ゆうくんって確か昔も優しかったよな…





「あー、あいつね!勇敢(ゆうかん)にも学年で1番人気のユカちゃんに校門前で告白してさー!

みんないる中ユカちゃんに、頭悪いやつとは付き合えない!って盛大にふられてるの!まさか少しでもイケると思ったミキオに拍手(はくしゅ)だよねー」



「マジか!!!あいつやばいなー!!!」



久しぶりの昔話に花が咲いて私たちは一限中もコソコソ笑いながら話していた。






はっ!



途中で、みゃーこのことを思い出した。



恐る恐る、教室の一番端になったみゃーこのことをチラッと見てみた




みゃーこは悔しそうな顔でこちらを見ていた


が、私と目が合うと慌てて目を逸らした







怒らせちゃったかな…








「みゃーこごめんねっ!まさか小学校の時同じクラスだった子だとは思わなくて!

沢山お話ししちゃって…」



休み時間、すかさずみゃーこに謝りに行った。




「果穂が謝ることじゃないよー!全然気にしないで!」




そう言って微笑んでくれたみゃーこを見て、ほっとした。




なるべくゆうくんとは話さないでおこう…



私は心に誓った。




でも、隣の席という、1番の接点作りを回避(かいひ)することはなかなか出来なかった。






ゆうくんは何かと私に話しかけてきた




私は極力(きょくりょく)話さないようにしていたけど、無視する訳にもいかず、結局席についてる間は話すしかなかった。




申し訳ない気持ちでいると、みゃーこはいつも、気にしないで、と笑ってくれた。









そして、10月2日…



私が戻ったあの日―――






ゆうくんと私は理科の実験のペアになった。




みゃーこのことを思うと乗り気になれず、モヤモヤしたまま私が髪を2つに結んでいると、



「ゴム1個貸して!」


と、私のゴムを1つ奪い、前髪を縛っていた





「何ー?お前ら付き合ってんの?」



同じ班の男子がからかってきた




私はすかさず、


「違うから!」


と首を思いっきり横に降り全否定した。




ゆうくんの顔を見ると、悲しそうな顔をしていた






「そんな全否定されるとなー」




「えっ何何?優大まさか岩沢のこと好きなん?」




ざわっ





余りにも大きい声で実験をしているみんなが一斉(いっせい)にこっちを向いた






「うーんまあ…小学校の時好きだった…かな。今も、かほが俺のこと覚えてくれてて、正直気になってる。」








キャー!!!




ゆうくんの一言で教室が一気にざわめいた




「おい優大!公開告白?!」






驚いた顔の私を見てゆうくんはさっきとは全然違う、堂々とした顔をして



「ごめん、こんなんじゃミキオのこと笑えないよな!でも、そういうことだから…」




と言った。



この言葉で更に教室はざわついた




「おい!お前ら青春すんのはいいが実験中だぞー?!失敗する前に視線元に戻せよー!」




先生の声で何とかこの場は収まった。




でも、私はみゃーこの顔が見れなかった…







実験が終わってそのまま昼休みになった





教室に戻る前、ゆうくんはコソッと私に話しかけてきた




「俺さ、実は同じクラスになってすぐ、かほって気付いてたんだよね。

でももし覚えてくれてなかったら、って怖くて…

少し話しかけても気付いた様子なかったし…

でも覚えてくれてて嬉しかった。

いきなり、付き合って!とかじゃないから、俺の気持ちだけ覚えといて!」





そう言ってゆうくんは顔を真っ赤にして立ち去った





私にとっても、ゆうくんとは昔よく遊んだり、クラスの男の子にいじられた時に助けてくれて、気になる男の子だった。




普通だったらこんな告白嬉しいに決まってる。でも正直、今はゆうくんよりみゃーこだ…







ゆうくんに話しかけられている間に、みんな教室からぞくぞくと出ていく最中だった









廊下に出ようとするチサたちの姿が見えた





「あれ?みゃーこは?」




その中にみゃーこがいかなかった。




「みゃーこはすぐ保健室行ったよ、果穂さ、自分の立場分かってんの?」




グループメンバーのチサが睨みをきかせてこう言った。





「え、あの…でも私はゆうくんのこと好きじゃないし、それでみゃーこに謝りたくて…」



「あのさー、いっつも果穂、謝ってばっかだけど結局話すのとか関わんのやめたわけ?みゃーこがどんだけ悩んでたとか考えもできないんでしょ?」



「あ…」




「それで告白されて謝るとかさ、謝ってどうにかなる?告白されるようなことしてた自分が悪いんじゃないの?」







「…」




言葉が返せなかった







「もういいよ!行こ、みんな」






…みゃーこと話さなきゃ






私は急いで保健室に向かった






ガラガラッ






先生はおらず、



ベッドでみゃーこが泣いていた







「みゃーこ…本当にごめん…」





涙を拭ってみゃーこが顔をあげた







「裏切り者!!!最低!!!」




優しくて可愛いみゃーこの怒った顔を初めて見た。






「ごめっ…ほんと…そんなつもりなくて…」




「みゃーこが好きなの分かっててずっと絡んでたじゃん!!友達ならさ、そんなことしなくない?!みんなの前で告白されるとか…みゃーこのことバカにしてんの?!」




「みゃーこ!聞いて!ほんとに私…」





「もう聞きたくない!!!どっか行ってよ!!!」





「…」





私はまた何も言葉を返せず保健室を出た






この日みゃーこは早退した





私も気まずくて仮病で2日学校を休んでしまった。






今日は学校行かなきゃ…




みゃーこになんて話そう…




ゆうくんも、小学校の友達伝いで連絡先聞いたのか、心配のLINE来てたし…





みゃーこもチサたちも返事ないし…





とにかく、会ってもう1回話そう…



みゃーこ優しいし、分かってくれるよね…







私は重い腰を上げ学校に向かった









教室に入ると、それまでざわついていたみんなが私の顔を見てすっと黙った。




いつもと違う雰囲気…明らかにおかしい…



教室にみゃーこたちはいない





とりあえず自分の席に着いた





にゅるっ



「きゃっ!」



席に座った瞬間、にゅるっとしたものがスカートに付き、慌てて席を立った





よく見ると、水のりのようなものが椅子に塗ってあった




「なにこれ…」



青ざめた顔を見てクラスメイトたちはクスクス笑った





ふと引き出しの中を除くと、置いてあった教科書がビリビリになっているのが見えた





恐る恐る教科書を手に取ると




『裏切り者』『ビッチ』『ヤリマン』


と書かれズタズタにされていた







私はゾッとし思わずその場で立ちすくんだ








「あれー?かほ来たんだー?」




チサを筆頭にみゃーこたちが入ってきた





「これ、チサたちがやったの?」




「はあ?友達のせいにするとか最低じゃなーい?だから裏切り者なんて言われるんじゃないのー?」




チサはこちらを指さして嘲笑った





「ねぇ、みゃーこ…これ、どうなってるの?みゃーこは知ってたの…?」




「…かほ、本当にみゃーこたちのせいにするんだ…。みゃーこ、会った時にまたちゃんと謝ってくれたら許そうって思ってたのに、あんなツイートまでして…本当に最低…」




「ツイート?!なんのこと?!」





「はあ?とぼけんなよ!お前が裏アカでうちらの悪口書きまくってんだろ?!」





チサは乱暴に自分のスマホでTwitterを見せてきた








『@XXXkahoXXX 2018年10月2日


ゆうだいに告られたーマジウケる

みゃーこの好きな人だけど、私のが魅力的だから仕方ないよねー』



『@XXXkahoXXX 2018年10月2日


ていうかチサとカナとミサキもウザすぎ。みゃーこの金魚のフン本当邪魔。』



『@XXXkahoXXX 2018年10月2日


みゃーこってさ、自分のことみゃーこって呼ぶけどさ、何なの?w芸能人気取り?wwただただ痛いw草』



『@XXXkahoXXX 2018年10月2日


クラスのみんなもバカばっかり!

告白くらいで盛り上がってガキかよ

私までガキ臭さ移りそー』






「なにこれ?!私こんなの知らない!!!」





「まだとぼけんの?!アイコン果穂の使ってる筆箱じゃん!しかも、うちらしか知らないことも書いてあるし!」




『@XXXkahoXXX 2018年10月2日


チサの彼氏って年上リーマン、くそオヤジwwwいつも自慢気に話してくるけど、そんなおっさん誰も羨ましくねーよwww』



『@XXXkahoXXX 2018年10月2日


こっちがせっかく謝ってやってんのにチサたちシカトしてくるし草〜

保健室までわざわざ行ってやってみゃーこにも謝ってやったのにキレてくるしほんと草w』







「本当に私じゃない!!!」









ガラッ




「おい、みんな何やってんだよ!」




登校してきたゆうくんが教室の異様な空気に気付き、私を庇うように目の前に立ってくれた






「優大くん…みゃーこたち、果穂にいろいろ言われてて…」



その姿に更に腹を立てたのか、みゃーこが私が持っていたチサのスマホを奪い、ゆうくんに渡した





「これは…でもだからってこんないじめるようなこと…しかも本当にかほがやったかなんて分からないだろ?!!」



「優大くんのことも書かれてるんだよ?」





ゆうくんは半信半疑でみゃーこの手からスマホを受け取った







『@XXXkahoXXX 2018年10月2日


ゆうくんもしかしてまだ覚えてたのかなー?ウサギ小屋でのこと。引越したくないって言ったゆうくんに私、また戻ってこればいいよ!ずっと友達なんだから!って言ったんだよねー。本当に戻ってきたし!もしかして私を追いかけて…?ストーカーかよ、怖w』



『@XXXkahoXXX 2018年10月2日


隣の席にいると、ゆうくん授業中ソシャゲやってるの目に入ってうぜー目障り』



『@XXXkahoXXX 2018年10月2日


ていうか、全然思い出せなかった時点で気にもなってないこと気付けwwww』






「ウサギ小屋…これ…俺とかほしか知らないはずの…」








「え?ウサギ小屋…?」




あ、もしかしてゆうくんが転校する前に2人で話してた時の…?




えっなんでそんなこと知られてるの…?!!







私は自分じゃないという否定の気持ちより、なんで私と相手しか知らないことまで書かれてるのか恐ろしくなってしまった。





「否定しないってことはこれ、かほが書いたってことでいいの?」



「え!ち、違う!!!私じゃない!」




「でもなんであのことも書かれてるの?」



「知らない…本当に私じゃない!!」







ゆうくんは私を信じたい気持ちと、Twitterの文章で困惑した顔をしていた






「もう、優大くんも話すのやめなよ、みゃーこも凄くショックだった。こんなこと思ってたなんて…」







「ちが…っ!!!」






ガラガラッ




「ほらー!席に着けー!」




先生が入って来てみんな慌てて席に着いた






「おい、岩沢!椅子とスカート濡れてるけどどうかしたのか?!」



「あ…えっと、ジュースこぼしちゃって、ジャージに着替えて来るので保健室行ってきます」



「おー、気を付けろよー」





クスクス…







思わず私は嘘をついて教室を出た








思えばこれが良くなかったかもしれない。







私が何も言わないと分かったのか、いじめはどんどんエスカレートしていった。





元々気の強かったチサを筆頭に、他のクラスメイトも憂さ晴らしになるのか一緒にいじめてきた。






みゃーこはどうやら我関せずのようで、被害者顔でゆうくんの傍にいるようになった。




ゆうくんも最初はいじめを止めてくれていたが、私のフリでどんどん悪口が悪化していくTwitterに呆れた様子で、私を庇うこともなくなってしまった。






運営に削除をお願いして、1ヶ月後、やっと例のアカウントは消えた。




でも私へのいじめは消えなかった。









「おーい、岩沢ー!お前、ビッチって本当?Twitterにも50人斬りって書いてあったけど!俺の相手してよー」


「やめとけよ!変な病気移るぞ!」


「確かにー!ははっ」





こういった男子の言葉の性的暴力も日常茶飯事





チサや他の女子に髪を切られたり水をかけられたり、私のフリをして気持ち悪いと評判の先輩にラブレターを出されたり、スカートを切られたり…




とにかくいろんなことをされた






正直、こんないじめに慣れていく自分が怖かった…






でも、それでも耐えれたのは、みゃーこに直接いじめられてる訳では無いし、いつか許してくれると思えたからだ。





『みゃーこと果穂は親友だもんね!』





この言葉を信じて私は頑張れた。









冬休みに入り、きっとみんないじめのことなんて忘れて切り替わるんじゃないか、冬休みが明ければ席替えもあるし、みゃーこも許してくれるんじゃないか





私はそんな甘い考えで冬休みを過ごした







どこにも出かけない私をお母さんは心配していたし、ボロボロになって帰ってくる私にいつも「大丈夫?」と声をかけてくれた。




当時はそれすら苦痛で、私は素っ気ない態度であしらってしまっていたし、教科書なども持って帰らないようにロッカーにしまっていたから、これと言った証拠もなくお母さんも私を問いただせなかったんだろう。






冬休みが明け、少しの希望でいつもより軽い足取りで学校に向かった。






教室に入る




こちらを見てざわめくみんな…





あー、何も変わってない。






私は落ち込み自分の席へ戻った






始業式が終わり、先生が来てホームルームが始まると席替えだけ行われ、私は1番後ろの、ゆうくんから離れた席になった。




やった…!これで解放される!





私はそう思い、今日改めてみゃーこに話しかけようと心に決めた。






ホームルームが終わりみんなチラホラ下校しだした。





みゃーこは委員のことで先生に呼び出され資料室に向かった。





私も急いでみゃーこを追いかけた。











資料室にみゃーこが入ってすぐ私も入った。





「みゃーこ!!!!」




緊張で声が裏返る




「なに?」



こちらを見て返事をしてくれた。

それだけで涙が溢れてくる…








「あの…本当にごめんなさい!!!

Twitterのことは本当に私じゃないし、みゃーこのこと大好きだから、もう一度やり直させて欲しい!!ゆうく…優大くんのことも本当に私にはそんなつもりないし、みゃーこの方が大事だから…!!!!」





思ってることは言えた…




これでやっと仲直りできる…!


私はそう信じていた





「はあ?今更何言ってんの?」




いつもの優しい口調はなく、みゃーこは荒々しく話し出した





「つーか、最初からあんたなんか友達じゃないし!教室で浮いてたけど顔は悪くないから一緒にいてあげただけ!みゃーこ別に深い関係の友達いらないし!その場で楽しければ良いだけだったのに、あんたがみゃーこの1番みたいな面してたから、合わせてあげてただけなんですけど。」



「みゃーこ…?」



「ふっ。まさかこんないじめになると思わなかったけど、いい気味。


ゆうくんゆうくんうるさかったし、みゃーこより目立つって何?


Twitterだって自業自得だし、今更あんたがやってないなんて信用するやついんの?


みゃーこはおまえなんかいなくなればいいってずっと思ってるよ、だからもう話しかけてくんな」




そう言ってみゃーこは資料室から立ち去った。







今のがみゃーこの本音…?



優しくて可愛いみゃーこの口からあんな言葉が出てくるなんて…






本当はきっとあんなキツイこと言える性格だったんだ…





隠されてたことも悲しいけど…




みゃーこの本心もあんな姿も知らなかったのに、親友なんて…



そりゃあ認めて貰えないよね…







私は絶望した。





みゃーこの裏の顔を知ってしまったことにではなくて、そんなみゃーこを知らない、みゃーこにあんなことを思わせてしまった自分に、Twitterは別人だと信じて貰えなかった自分が悔しくて…








それからのことはあまり覚えてない






毎日いじめられる




それの繰り返し






みゃーこという心の支えがなくなってしまった私は空っぽ同然






中学の友達も、いじめられたばかりの時は何も知らなかったからか遊んでくれたけど、途中から多分噂を聞いたのか!誰とも連絡がとれなくなった。















私はなんの為に生まれたんだろう?



私の居場所って…










気づいたら屋上にいた。







そう、死のうと思ったあの日











屋上に手足をかける自分の姿で



ふと我に返った。

















「ちょっと、果穂ー?またぼーっとしてるし!本当にどうしたの?」






「あ、ううん!ごめん!なんでもない!早く行こっか!」












今日の4限目の理科…







絶対告白される訳にはいかない。





絶対繰り返さない!!!!!!


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