贖罪の剣
それから二ヶ月の月日が経ち、学校にも慣れてきた。俺は他の人よりも簡単に陰属性の内の『呪』を除く六属性を獲得した。リファは二つ獲得するだけでも、死ぬ程難しいと言っていたが、それは本当だと思う。恐らく、俺の潜在能力『万能人』の力だと俺は解釈している。さて、もうそろそろ朝を迎えそうだ。
「おはよー、、、。」
あれ?リファに元気がない。おかしいなぁ。
「おはよう、どうした?調子悪いのか?」
明らかにリファの顔色が悪かった。
「うーん、、。頭がズキズキして、関節が痛いし、身体が熱いの。」
風邪じゃん。
「じゃあ今日は寝てて。俺、ヨーコさんに伝えてくるから。」
そう言って、俺は足早にヨーコさんの居る一階へ駆け下りた。そして、事の次第を告げると
「わかったわ。リファのことは気にしないで、今日も張り切って行ってらっしゃい。」
と、ヨーコさんは優しく微笑んで言った。リファが風邪を引くなんて、今日は嵐かと思いつつ、学校に足を運んだ。
つまらん。授業がつまらなすぎる。最初は新しい出会いや、魔法が使えたりとか、色々なことがあり毎日が楽しかったが、慣れてみればこんなもの。何か真新しいことはないかな。と思い耽りながら淡々と時間が過ぎていった。とうとう下校の時間になり、やっと帰れると思ったその時、遠くから何か爆発したような音が聞こえてきた。爆撃音がした方向に視線をやると、明らかに家のある辺りが燃えている。嫌な予感がした。俺は急いで家に向かった。家に近づくにつれ、炎上している家屋が多くなってきた。
「着いた、、、。」
扉を開けるとそこには血塗れの獣人が剣を立てて膝をついている。
「ユーマか、、。すまない、、。ガフッ。守れなかった、、。」
ジャックの奥には血塗れの女性が一人倒れている。
「ヨーコさん!しっかりして!っ、、。クソっ!!『リペア』!」
ヨーコさんの傷がたちまち塞がっていく。が、ヨーコさんは目を閉じたまま動かない。
「っ!クソっ!、、、!?リファは!?」
俺は直ぐに二階に上がった。そこには腹を長い刃物で一突きされた少女が横たわっていた。
「リファ!!おい!起きろ!『リペア』!」
リファの傷は全て塞がったが、リファは冷たいままだ。
「なんでだよ、、、。ヨーコさんが、リファが何したって言うんだよ、、。」
俺は絶望した。心を閉ざしてしまった。
「ユーマ。本当にすまない、、、。俺は残りの賊を倒してくる。後は任せた。」
ジャックはそう言い、この場からすぐに立ち去った。俺は何も考えることができず、ただ一言
「あぁ、、。」
と、虚ろに呟いた。
平凡な日常に突然訪れた惨劇。俺はやるせない気持ちでいっぱいになり、後から怒りが込み上げてきた。すると、何処からか声が聞こえてきた。
『お前は復讐したくないか?』
俺はその声に反応し、辺りを見渡したが、人の姿は見当たらない。
『こっちだ、こっち。お前のすぐ横の壁にかけてあるだろ。』
俺は振り返った。そこにはあの呪われた剣が掛けてあった。
『私の名は贖罪の剣、お前の復讐が終わった時、私がお前の望みを叶えてやろう。』
何を言ってるのかあまり頭に入ってこなかった。ただ、剣が『復讐』という言葉を使ったことだけが頭に強く残った。そうだ、復讐だ。どいつもこいつも殺せばいいんだ。
「あぁ、、やるよ、、復讐する。お前の力を貸してくれ。」
『では、私を手に取れ。』
その言葉を聞き、一瞬ハッとした。リファのお父さんはこの剣に触れ、亡くなった。自分も死んでしまうのではないか、そんな心配が、不安が頭をよぎった。だが、今はそんなことよりも復讐することの方が重要だった。それで死ぬなら本望だったのかもしれない。「あぁ。」
贖罪の剣を手に取ると、ユーマの体を黒い靄が覆った。この世のものとは思えないほど暗く、禍々しい靄だ。刹那、その靄はピタリと止み、同時にユーマの目から光が消えた。
「誰に止められようと、俺は復讐を完遂する。それまで待ってて、リファ、ヨーコさん。」