学校
「おっはよ!」
昨日と変わらない元気な声で俺は目を覚ました。
「おはよう、リファ。」
今日から学校だ。内心不安な思いを募らせながら、リファと共に登校した。
「む、君がユーマ君ですか?おはようございます、君のクラスを担任するサーリ・ゼズィラという者です。今日からよろしくお願いしますね。」
学校に着くと自分の担任と思われる人物に出会った。
「おはよ!サーリ先生!」
リファは元気な声でそう言うと、
「ポランセヌさん、私は先生なのですから『おはようございます』と言いなさいと何度も言っているでしょう?」
と、先生に諭された。先生の顔立ちは中性的で、男か女かよく分からない見た目をしている。
「あ、それとですね、リファさん。ユーマ君は何属性でしたか?」
先生は書類とペンを持ってリファに尋ねた。
「えっとね、ユーマは陰属性だよ!」
とリファが言うと先生は、
「そうですか。ありがとうございます。」
と、爽やかに答えた。
「では、ユーマ君。一緒に教室に向かいましょう。」
先生はスっと立ち上がり歩を進めた。
『一年三組』
教室の扉の上に掛かっている木片にそう書いてあった。元の世界では高校三年だったが、ここでは一年スタートらしい。教室は少しざわついていた。
「はい、みなさん。お静かに。今日は転校生を紹介します。ヒイラギ・ユーマ君です。」
教室のざわめきがもっと激しくなった。クラスメイトは見たところ人間が三割、それ以外が七割といったところ。
「ユーマ君はこの国に来たばかりなので文字はわかりませんが、言葉は通じるので仲良くしてあげてくださいね。」
サーリ先生はそう言うと、俺に「席はあそこです。」と指示した。俺の席は教壇から見て一番右の一番奥のところで、よく空きがちな所だった。空いていた席に座った時、隣にいた人間らしき人物が話しかけてきた。
「よう!転校生君!えっと、、ユーマ君だっけ?よろしくな!俺は人間のベルフ・エールだ。」
ヤンチャそうな顔立ちの少年だ。
「よろしく。」
俺は笑顔でそう言った。
ホームルームが終わった後、先生は「転校の手続きがまだ終わっていないので」と俺を校舎の外にある施設へ呼び出した。
「ユーマ君は陰属性を持っていましたね。陰属性の中にはさらに七つの属性がある事をご存じですか?」
「はい。リファから聞きました。」
すると、先生は施設の扉をゆっくり開いた。
「ユーマ君にはここで魔法適性検査を受けてもらいます。ああ、気負いしなくても大丈夫ですよ。検査と言っても、とても簡単ですから。」
そう言って先生は俺に一冊の本を渡した。
「えっと、その本の四ページを開いてください。そこに『我、汝の闇を知り、汝の闇を顕界に召喚せん。』と、書いてあるでしょう?それを詠唱、、。まあ、音読してください。」
俺は先生の言う通りに
「我、汝の闇を知り、汝の闇を顕界に召喚せん。」
と言った。こんな言葉元の世界で言ったら、一発黒歴史確定だ。すると、目の前に直径1メートルくらいの黒い球状の靄が出てきた。
「ほぉ、素晴らしいですね。えっと、『闇』は二重丸っと。」
そう言って先生は持っているボードに挟まっている紙に何かを書いた。
「それでは次のページを捲ってください。そこに『濃霧に蠢く物、我に力を与えよ。』と、あるはずなので、同じく音読してください。」
俺はまた言われた通り音読した。すると、今度は辺りに霧がかかり始めた。(まあ、三秒くらいで晴れたけどね。)こんな感じのやり取りを今のを含めて六回行った。
「はい、終了です。お疲れ様でした。ユーマ君は素晴らしいです。『呪』を除く全ての属性に二重丸がつきました。」
おー。俺は我ながら「すげぇじゃん。」と、感心した。だが、一つ気になったので質問してみた。
「先生。あの、その、音読するやつって毎回言わなきゃダメなんでしょうか、、、?」
すると、先生は爽やかに微笑んで
「ああ、大丈夫ですよ。慣れれば心の中で言うだけでも、もっと慣れれば感じるだけで魔法は使えるようになりますから。私もこの詠唱はダサいと思いますからね。」
良かった。危うく黒歴史製造機になる所だった。
「さぁ、クラスに戻りましょうか。」
先生は静かに施設の扉を開けた。