異世界の乗り物
「おはよー!」
リファの元気いっぱいな声が部屋中に響き渡る。
「ん、、、おはよ、、。」
結局考え事をしていたらいつの間にか寝てしまったらしい。窓から差し込む光がとても眩しい。
「今日はリファにこの街を紹介してもらうことにしたわ。」
陽子さんが部屋に入ってきてリファの肩をぽんっと叩いた。
「任せといて!私が隅の隅まで紹介するわ。」
リファは胸に手を当て自信満々の様子だ。
「じゃあお願いするよ。」
俺はリファに委ねるように言った。
店の外に出ると、リファは店の裏からスクーターのような、しかしそれにしては一回りサイズが大きい乗り物を引っ張り出してきた。その乗り物には驚くことにタイヤがついていなかった。
「リファ、それはなに?」
俺が首をかしげながら聞くとリファは
「えぇ!?知らないの?」
と真剣な顔で驚いた。
「そっか、しょうがないよね。ユーマは小さい頃に捨てられて、一人で生き抜いてきたんだからね。」
リファが悲しそうな顔で俺を見つめて言った。
「え?」
俺がそう言うとリファもたて続けに
「え?」
っと言った。
「そうやって今朝母さんから聞いたんだけど、、、。違ったかな?」
リファはぽかんとした顔でこちらを覗き込んでくる。
「あ、、いや、、そ、そう、そうだよ!いやー、なんでリファが知ってるのか驚いただけだよー。」
「ふぅーん。そういうことね。」
あぶねぇ。俺の演技力が皆無だったら相当怪しまれていただろう。なるほど、陽子さんがそういう設定にしてくれたのか。設定を作ってリファに言うのはいいけど、そうしたことを俺に言って欲しかったな。
「さぁ、ユーマ!時間が無いわ行くわよ!」
リファはスクーターのようなものに乗り込み後ろの空いた場所をポンポンしながら俺に言った。
「え?乗っていいの?」
「何言ってるの。ユーマだけ走らせるわけにいかないでしょ。さ、はやく。」
リファはそう言って急かしてくる。
(うへぇ。緊張するなぁ。)
俺はそう思いながら渋々その乗り物に乗った。
リファは頭のゴーグルを目にあて、右手のハンドルをグイッと回した。すると、車体が浮き始めた。
「うそだろ、、、。浮いてるよ。」
俺は感動した。完全にSFの世界の乗り物だった。
「そうよ。この乗り物はフロートバイクって言ってね、何年か前に作られたの。風魔法と機械のハイブリッドよ。」
リファはまるで自分が開発したかのように誇らしげに語った。
「魔法?リファは魔法が使えるのか?」
俺は聞きなれない単語に違和感を覚え、リファに聞いてみた。
「えー!?そんなことも知らないの?よくこの世界で生きていられたわね。魔法は練習すれば誰だって使えるものよ。いいわ、いい機会だから魔法について私が知ってることを教えながら街を紹介するわね。」
まじか。魔法って誰でも使えるんだ。そう聞いて俺の少年の心がすごく高揚しているのを感じた。
「ぜひ教えてくれ。いや、教えてください!」
俺がそう言うとリファは
「OK!」
っと言って車体の左ハンドルをグイッと回し、フロートバイクを走らせた。