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贖罪の剣  作者: 金田 歩夢
第二章 ウォーダム
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ウィルとランツ

街の人々は口々に王国軍が来たと言う。逃げ惑う人々、飛び交う魔法、崩れる建物。まさに地獄絵図であった。異端排斥運動。後に現在の王「ルシフ20世」のルシフ悪政と呼ばれる忌まわしき歴史の一つである。

「ラ、、ランツ兄ちゃん!何が起こってるの?」

ウィルは不安そうにランツに近寄る。

「わっかんないけどぉ〜。ウィルはぜぇ〜ったい俺が守るねぇ〜。」

ランツは焦りながらも、ウィルが不安にならない様、毅然に振る舞う。


最初の爆発から数時間が経った。建造物は全て破壊され、街は見る影もない。ウィルとランツは運良く逃げ延び、荒れ果てた街だったものを見つめる。

「ランツ兄ちゃん、、、。僕達、、何か悪いことしたかな、、。」

ウィルは涙を浮かべながら呟く。

「何も悪いことはぁ〜してないよぉ〜。ただ俺はさぁ〜、何も出来なかった自分とぉ〜王国軍にぃ〜ムカついてるだけぇ〜、、。」

ランツは静かに怒っていた。その時だった。

「なんだ?まだ生き残りがいたのか?」

ウィルとランツの後ろから声が聞こえる。ランツは咄嗟にウィルを庇う。

「おっさぁ〜ん。何者だぁ〜?王国軍かぁ〜?」

ランツは警戒している。ウィルはその後ろで怯えながら男を見つめる。

「おっと、すまない。君たちを怖がらせるつもりはない。俺の名前は───。君たちのような難民を保護する活動を行っている。ピースカンパニーという組織の長だ。」

男はウィルとランツに手を差し伸べ、ピースカンパニーへと招待した。


その出来事から5年後、2人は自衛のための戦闘術と人前に出るための言葉遣いを身につけ、ウィルはピースカンパニーの子会社であるウォーダムの社長にランツはその補佐として選ばれた。

「ランツ兄ちゃ、、。もとい、『ランツ』。これからよろしくお願いします。」

ウィルは襟を正しながら、ランツに話しかける。

「あぁ〜。よろしくねぇ〜、『ウィルさぁ〜ん』。」

ランツは緊張するウィルにニヤつきながら返す。



────現在

「ぐっ、、。これが、走馬灯ですか、、。まさかここまで、、手元が震えていたなんて、、。」

ウィルはもう限界だった。心音は遠くなり、呼吸も薄くなっていく。ユーマに放った渾身の一撃もユーマの頬を掠めただけで有効なものになり得なかった。

「危なかった、、。はぁ、、。でもこれで、、俺の、、勝ちだ、!」

ユーマも限界が近づいていた。シャドウ・マリオネットは形を維持するので精一杯だった。

「こんな、、ところで、終わりたくない、、!ランツ、、兄ぢゃん、、!助けでっ、!!」

ウィルは最後の断末魔のような願いのような叫びをあげ、倒れた。ユーマはその声を聞くことなく気絶してしまった。すると、声が響いた瞬間、ランツの身体が起き上がった。

「お、お、お、俺れれれれを、ををを、よよよんだだだぁ〜〜???ううううぃぃるるるははおお俺れががま、ままももるよよよ!!」

壊れた機械のようにランツはユーマにトドメを刺しに来る。

「ししししねねぇぇ!!」

ランツは拳を振り上げる。その時、ランツの腕と上半身が切り落とされる。

「あああれれれぇぇ〜??なな、なななんんででぇぇぇ〜〜〜??」

ランツはそのまま倒れた。

「『まったく、、。世話のやけることだ、、。私が出ていなければ、お前は死んでいたんだぞ。私に感謝しろ。』」

贖罪の剣がシャドウ・マリオネットに乗り移り、ランツを攻撃したのだった。

その攻撃を最後に工場から音が消えた。街の人々の騒然とした声や、野次馬が集まってきている音が静かな工場内に響く。




「そっかぁ〜。じゃあ〜ウィルはぁ〜、何になりたいのぉ〜?」

ランツはウィルに問う。

「えへへ、僕はね、市長さん!市長さんになって街の人をもっともっと笑顔にしたいな!」

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