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贖罪の剣  作者: 金田 歩夢
第二章 ウォーダム
12/21

フィルネ到着

翌朝

「それじゃ、行ってくるよ。」

ユーマは剣を携え、頭にゴーグルを着け、学ランを身に纏い、覚悟を決めた表情で言った。

「達者でな。」

ジャックはそれに応えた。

ジャックとの別れを機にユーマのピース・カンパニー打倒の旅が始まった。


ゴングから数キロ先にある街『スーポンド』

『お前に1つ言い忘れていたことがあったな。』

贖罪の剣が急に口を開いた。

「なんだよ。その言い忘れたことって。」

ユーマは剣の言葉を不審に思い、猜疑する。

『お前が復讐すべき人間を全て殺し終えた時、私はお前の願いを1つ叶えることが出来る。』

急な話だったため、開いた口が塞がらない。しかし、そんな話到底信じられるはずもない。

「馬鹿なことを言うな。だったら、死んだ人間を生き返らせることも出来るってのか?」

ユーマは当然反論した。

『出来る。と言ったら?』

目から鱗のような話だ。当然、リファやヨーコさんを生き返らせることが出来るのならこれ以上の贖罪、罪滅ぼしはない。

「まあ、話半分ってところかな。大体、お前が話せること自体おかしな事なんだ。」

しかし、ユーマは冷静だった。彼の心に宿るのは、復讐のことだけだった。

『信じるも信じないもお前の勝手さ。まあ、精々復讐に努めろ。』

そう言うと、贖罪の剣はまた、物を言わぬただの短剣となった。

「俺は俺のやりたいことをするだけだよ。」

ユーマは一言呟くと、フィルネを目指し、また歩を進めた。


『フィルネ』到着

「ここがフィルネか。」

街の喧騒はゴングよりは落ち着いており、豊かな営みが広がっている。

「旅、、の、。御方、、よ、、。」

そんな平和な雰囲気とは似つかわしくない出で立ちの男が話しかけてきた。

「ん?貴方服がボロボロじゃありませんか。どうしたんですか?何かあったんですか?」

ユーマは情報を得ようと思い、柔らかい物腰で尋ねる。

「いや、、。実はここ最近お金を持ち合わせてなくてね。良かったら、ご馳走して頂くことは出来ませんかね?」

乞食か。ユーマはそう思ったが、取り敢えず情報が欲しかったため、その男に食事を奢ることにした。

近くの食事処

「いやぁ〜。助かりました。なんとお礼をしていいのやら。」

先程の萎びた様子とは打って変わって、男は元気に話し始めた。

「貴方が居なければあそこで野垂れ死ぬ所でした。本当にありがとうございました。これからは兄貴と呼ばせてください。兄貴!なにかして欲しいことがあればなんでも言ってください!」

男は軽い口で勝手に話を続けている。

「兄貴なんて呼ばなくてもいいですよ。それより、この街について知っていることなんでもいいから教えて欲しいです。」

ユーマは情報を引き出そうとする。

「いや!兄貴と呼ばせてください!あと、その質問には答えられるか怪しいです!なにぶん自分もこの街に来て日が浅いもので、、。あ!でも、これは有名だから兄貴も知ってるかも知れませんが、この街は『ピース・カンパニー』が保護した難民が多くいるらしいです!なんでも、この街の中心にある『ウォーダム』という工場のオーナーがピース・カンパニーに関係あるとかないとか、、。まあ、それくらいしか話せることはありませんね。面目ないです。」

後半はジャックから聞いていたため知っていたが、前半部分で既にここが敵地であることが分かった。

「なるほど。ありがとう。」

ユーマがそう言うと、

「兄貴の力になれたなら嬉しいです!また困ったことがあったらなんでも言って下さいね!それでは!」

と男はそそくさとその場を立ち去ってしまった。

「、、、。名前すら聞けなかったな。まあ、いいか。」


ユーマはその後も情報収集を行った。得られた情報はウォーダムの工場長の名前が「ウィル・クアット」であること。この街の主権の大部分をウィルが持っているということ。街の人はピース・カンパニーのこととウォーダムは無関係だと考えていること。皆ウィルを慕い、尊敬していることであった。


その日の晩 宿屋

「ウィルは街の人から随分と慕われている様だったが、そんな人物がゴングを襲った集団の1人なのだろうか。」

ユーマは復讐するべきか否か葛藤していた。

『ふん。そんなに小難しく考えるな。お前が私に身体を貸せば、ウィルとやらが復讐するべきか分かるが、どうする?』

贖罪の剣がまた口を開いた。

「この際だから、お前の能力について1度話してくれよ。お前も復讐したい人間に取り憑くのに、なにか理由があるんだろ。」

ユーマはまだ贖罪の剣のことをあまり理解していなかった。

『、、、。全て話す訳には行かないが、まあ良かろう。話さずお前の復讐心が薄れるのは御免だからな。まず、私は人の体を乗っ取ることができる。そしてその人間の復讐したい相手が分かる。しかし、目の前にその人間が居なければ分からない。言わば、私の目は復讐すべきか否かを判別する機械だ。復讐すべき人間は赤く見え、そうでない者は青く見える。』

贖罪の剣はあっさりと情報を開示した。

『まあ、今はここまでだ。また、話すべき時に話そう。私は眠る。』

そう言うと、贖罪の剣は黙りこくってしまった。

「おい!ちょっと待っ、、。また黙っちまった。贖罪の剣の能力、、、なるほどな。でも今は、復讐すべきかどうかを自分で判断しよう。明日、ウォーダムに直接逢いに行くか。」

ユーマはそう決め、今日の所は疲れも溜まっていたため、眠ることにした。


その日の晩 ウォーダム

「ウィルさ〜ん。な〜んか余所者が俺らのこと嗅ぎまわってるって、街で噂になってるッスよ〜?」

男がそう言うと、

「構わないさ。いつも通りの業務を行い。街の平和を守る。それが僕たちの役目だろう。」

もう1人の男はそれに返答した。

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