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贖罪の剣  作者: 金田 歩夢
第一章 旅立ち
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修行の成果

2日後

「ふっ、ふっ、はぁ!」

木刀と木刀とがぶつかり合い、鈍い音が辺りに響き渡っていた。

「そんなものではお前を復讐の旅に出せんぞ!ユーマ!」

ジャックは鋭く、厳しい形相でユーマを駆り立てた。

「クソっ!一撃、一撃が、、重いっ!捌き、、きれないっ!」

ユーマは疲弊しきっており、これ以上は腕が上がらない状態だった。

「ユーマ。次は魔法を出しながら、剣を振ってみろ。」

ジャックはどこか焦っているようにユーマを急かした。

「もう、、今日は、無理だ、、。」

そう言って、ユーマはその場に倒れ込んでしまった。

「そんな体たらくで奴らを排斥しようなど、甘い!甘すぎるぞ!」

ジャックの厳しい叱責がユーマに激を入れている。

「はぁ、、とは言っても、ジャック。お前が強すぎるんだよ。それに奴ら奴らと言うけれど、一体どれほどの敵なんだ?街に来てた奴らにはそこまでの強さを感じなかったぞ?」

ユーマは率直な疑問をジャックにぶつけた。

「街に来てたのはただの下っ端さ。一人で相手するにはちょいと多すぎる量だったが。そのせいで守れるものも守れなかった、、、。」

ジャックの後悔と不甲斐なさで顰めた眉がユーマの心に刺さる。

「リファとヨーコさんが死んだのはジャックのせいじゃないさ。寧ろジャックは街の被害を最小限に抑えてくれたと思うよ。なぁ、俺まだ頑張れるからさ、魔法を出しながらの剣術のコツ教えてよ。」

ユーマがそう言うと、ジャックの表情も少しだけ和らぎ、いつもの調子とはいかないまでもジャックが笑うようになった。

「ふん。まさかユーマに励まされるようになるとはな。歳はとるもんじゃねぇな。」

と、ジャックは笑い、ユーマに剣術を教え始めた。


その日の晩のこと、

『何を悠長なことをしている。早く復讐に向かえ。それこそお前の宿命、生き甲斐だろうが。』

贖罪の剣がユーマに問いかける。

「まだダメだ。俺が強くならなきゃ、お前だけの力に頼っていてもいつか限界が来る気がする。」

ユーマは決心したように答える。

『そうか。まあ精々「自分の力」で頑張るんだな。』

贖罪の剣が意味深な問いかけをするが、ユーマは稽古に疲れ、寝てしまっていた。


翌日

「今日こそ俺を倒して見せろ!ユーマ!」

ジャックが昨日よりも元気になっていた。

「今日の俺は昨日の俺より強い。舐めてもらっちゃ困る。」

ユーマもジャックに応えるように自信満々に答える。

「さぁ、来い!」

「望む所だ!」

二人の声が空に響き渡る。そして、、、


3ヶ月後

ユーマの身体は見違えるように変わり、腹筋は六つに割れ、腕も太くなっていた。

「はぁっ!」

ユーマの剣技は3ヶ月前とは比べ物にならないほど強靭なものになっており、既にジャックを圧倒する程に成長していた。

「クッ、、。クソッ!結構強くなったじゃねぇか。」

ジャックはユーマの剣技を躱すので精一杯となっていた。その刹那―――

「、、、ッ!!ガァ!!」

ユーマがジャックの一瞬の隙を突き右脇腹から左肩にかけてを木刀で叩いた。

「やった、、、。ついにやった!ジャックから一本取ったんだ!」

ユーマは歓喜し、ガッツポーズをジャックの前でしている。

「ふっ、、、。この短期間でよくここまで成長したもんだ。認めよう、お前の強さを。」

ジャックは笑みを浮かべつつ、ユーマの努力を称えた。


その晩、ジャックはユーマに問いかける。

「本当はお前を復讐の旅になど行かせたくなかった。成功しようと二人は戻ってくることはないし、失敗すれば死があるのみだ。お前の復讐には何の意味がある?」

もっともな質問である。しかし、ユーマはこう答える。

「俺がしたいからするんだ。そこに意味なんかないよ。強いて言うなら死なせてしまった二人への贖罪かな。」

悲しい顔でそう答えるユーマの表情の裏で何かが燃えていた。

「まあそうだろうな。こんな問答でお前を止められるのならとっくに諦めているはずだ。お前の好きにするといい。だが、俺は今でも反対しているし、協力はしないからな。」

ジャックはユーマに釘を刺す。

「分かってるよ。それにジャックは十分協力してくれたさ。後は俺一人の問題だから。」

ユーマは決意を抱いた。覚悟を決めた。そういった表情であった。

「よし、ならば最後の協力だ。敵の組織について今一度整理しよう。奴らの名は『ピース・カンパニー』。主に戦争孤児や、紛争で行くあてのない人々に居場所を提供している。しかしそれはあくまで表の顔。裏では窃盗、強盗、殺人等様々な犯罪の手引きをしている。規模も膨大で、王国も見て見ぬふりをしている始末。敵の数は不明、敵のボスも不明だ。それでも行くか?」

ジャックはユーマに最後の問いかけをする。

「行くよ。俺は最後までやり切るんだ。」

ユーマの目に迷いはない。

「ならば、明日の朝、ここから北西に位置する『フィルネ』の街にある『ウォーダム』という工場を目指すんだ。そこはピース・カンパニーの幹部が工場長をしていると噂がある。そこに行き、敵の情報について仕入れるんだ。そこから先どうするかはお前の自由だ。」

ジャックが有力な情報をユーマに教えた。

「なるほどね。貴重な情報、どうもありがとう。取り敢えず、ピース・カンパニーをぶっ潰そうと思うよ。」

ユーマは最早復讐のことしか頭にないようだった。

「ユーマ、、、。気をつけるんだぞ。」

ジャックは少し複雑な表情をし、寝床に入っていった。

「ああ!色々とありがと!ジャックには感謝してもしきれないよ!」

そういってユーマも床に就いた。


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