四重舌
噛み締めた奥歯が欠ける
それくらいの出来事は
人生の不整脈みたいに
目の前へとやってくる
雀の鳴き声に
烏が混ざるくらいに
不穏な朝だ
家を出た瞬間に
雨が降る
傘を取りに戻るか
立ち止まり考えたけれど
時計を見て諦めた
突然の慟哭と同刻に
他人の行動は
あざといほどに変わる
繋がりある誰かの不名誉であろうと
変わるのだ
物事の始まりは関係無い
勝手に出来上がったレッテル
何処の工場で作っているのだろう
ふつふつと
人が作り上げる心情は
そういう時だけ適材適所だ
個人単位が良いと
声高に言いながら
個人単位では考えられない
四重舌の玩具
己の心情のみを誘発する
得体の知れない者は
一昔前には
悪魔に取り憑かれているなんて
言われてたんだろう
案外
間違いじゃないかもしれない
自分で自分へ
取り憑いている
何かの不適合者
「幸せになる」って言う
自己陶酔している人は
幸せになるのを
なんだか
自分のタイミングで選ぶみたいな話だよね
謙虚な人は
「幸せになりたい」って言うから
謙虚な人の方が好きだよ
隣のテーブルから聞こえてきた
生温さに拍車をかけたような
そこら中に塩を撒きたい話は
聞こえている者にしか聞こえない話
周りの人間は
一瞬で小道具になるから
この世界の幸せは無いに等しい
悲しいけれど
概念だけなのだ
多様化するのと同時に
幸せも多様化して
飛び散ってしまった
どれが誰の幸せかを
僕等は
考えなくてはいけなくなった
考えられない者は
言われてしまうのだ
「それで幸せに感じるなんて
簡単で良いね」
人間の幸福を
必死に追求しながら
他人の幸福を考えられない
四重舌の玩具
己の欲望のみを発明する
得体の知れない者は
一昔前には
マッドサイエンティストなんて
言われてたんだろう
案外
間違いじゃないかもしれない
自分で自分へ
取り憑いている
何かの不適合者
人生の中にある
無駄な部分の優劣で
天国に行くか
地獄に行くか
決まるんだとしたら
どうする?
僕等の無駄は
誰かに誇れるだろうか
無意識の底にある部分を
誰かに誇れるだろうか
権利をくれと
声高に言いながら
他人の権利は考えられない
四重舌の玩具
己の心情のみを吸引する
得体の知れない者は
これから先
何も言われなくなるだろう
自らの中に
よく分からない物を作りながら
勝手に集まるだけの
自分で自分へ
取り憑いている
何かの不適合者
重たいだけのブラックホール