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その10


 村が始まってからの20日間、エロ漫画家の猫アンポンテはずっとドラクエライバルズをやっていた。村で最初にレジェンド到達したのも彼だ。基本的にウニャウニャ言ってるだけで、そこらの野良猫並みに利にも害にもならない男。絵がうまい以外には何の役にも立たない男。それがアンポンテだった。

 ところが21日目。突如として彼は覚醒。死者の知識を結集した最終奥義『ねこレクイエム』を発動させ、セカンドインパクトを引き起こしたのである。


 ねこレクとは、簡単に言えば村側と狼側の政治闘争を終わらせて第三陣営に速やかな勝利をもたらそうとする奇襲作戦だった。『聴け!! すべての生存者よ』から始まる一連の演説は全プレイヤーの注目を集め、一瞬にして時流を変えた。

 発動のタイミングも完璧だった。それぞれの陣営が握る票数をカウントすれば、黒幕が消えたこの日に発動するのが最善であり、1日遅くても1日早くても効果がないという文字どおりの奇襲攻撃であった。


 20日目までまともにログを読んでなかったアンポンテに、何故このようなことが可能だったのか。タネを明かせば、なにもかもが伯爵の描いたプランだったのだ。猫は霊界の伯爵案を貼り付けただけ。とんでもない手抜き野郎である。

 だが本当にとんでもないのは伯爵だ。もはや蘇生の可能性もなく勝ち目は100パーセントゼロなのに、ここまでの計画を練ってアンポンテを焚きつけたのだから。それもイヤがらせのためだけに。どれだけヒマなんだ、この男は。おとなしく死んでることもできないのか。


 このイヤがらせ猫レクイエムは狂人たちを絶望のどん底に突き落とし、狼側にとどめを刺した。獏の能力『霊界のログが見える』という事実は何を意味するか。『死体スナッチwwwおつwwwぜんぶ見えてるわwwww』ということだ。3週間におよぶ狂人たちの努力は、すべて無意味だったのである。ひでえ。

 この獏COは狂人視点から見るとあまりにひどすぎて、つるぎにはかける言葉も見つからない。……まぁ最終日に吊られる村人つるぎとしては良い配役だったな。こうしてダイジェストにも出番がいっぱいもらえるし。


 ねこレクを発動させたアンポンテは、その日の処刑予定だったホットコーラ、まもの仁などの票を取り込んで狼ハイカラを処刑しようと熱心に働きかけた。一日中ライバルズをやりながら『原稿がーー原稿がーー』とニャーニャー騒いでた猫とは別人のような活動ぶりである。

 最初は伯爵にそそのかされて作戦開始しただけの猫だったが、おそらく彼の中に眠っていた人狼プレイヤー魂に火がついたのだろう。あるいは単に『このクソ男爵ムカつくにゃ。ぜってぇブチころがしてやるにゃ』と思っただけかもしれない。なんにせよ、アンポンテは本気モードに入ってしまったのだった。その熱意を原稿に向けろよ。


 本気になったアンポンテは、わりとガチで強かった。賛同票を得るためにイラストを描くなどは常套手段。対抗して紗紋やみとみとも絵を描くと言いだしたものの、エロ漫画で金を稼いでるプロに勝てるはずもない。

 しかし公正な視点から見れば、プロ絵師のアンポンテがこれをやったら票を金で買うのも同然で、人狼ゲームのマナー(?)というかルール(?)に抵触してるんじゃないですかね……。

『男爵も同じようなことやっただっろっにゃっ!』と反論するかもしれない。たしかに彼は酒をもらってアイコンをゆーろに返したり、おっさんラムに投票したりもしたが、あれは別に酒もらってなくてもやったことなので。票を金で買うのはよくないと思うんだ、うん。


 しかもアンポンテは、いままで自重していたという霊界ログの貼り付けも平然と行うようになり、ブチ切れ本気モード覚醒。アンポンテの言うことは信用できないけどせんべえの言うことなら信用できる、という同意者まで得るに至るのだった。

 この村では大した見せ場もなく死んだせんべえだが、その卓抜した推理力洞察力は人狼界最強と言っても過言ではなく、『全盛期のおせんべ伝説』なるコピペがまことしやかに出回るほどである。あまりに推理精度が高すぎて、『3日目までに全ての狼を言い当てなければ黒』とまで言われるほどの男、それがせんべえ。

 彼の残した偉業は枚挙に暇がないので割愛するが……そんな最強村人せんべえと扇動者伯爵の力を借りての、必殺ねこレクイエム。これはさすがにハイカラ死んだな……と狂人たちも思ったし、ハイカラも辞世の句を詠んだことだろう。


 だが結果、投票は綺麗にまっぷたつに割れ、神のサイコロによってハイカラは生きのびたのであった。

 翌日もアンポンテは懲りずに猫レクを続行したものの、やはり投票は5:5に割れてハイカラは神の選択により生存。ここまで頑張って生きてきた仁まものは、ようやく霊界に落ちたのであった。

 余談だがハイカラは数日前にもデブマーンとのダイス勝負に勝っており、確率50%の処刑を3回切り抜けたことになる。襲撃センスゼロの狼どもだったが、この幸運ぶりだけは評価しても……ていうかLUC極振りのピーキーな狼スタイル、やめてくれませんかね……。


 ともあれそういう次第で、ねこレクは25%の不運ハードラックダンスって、あえなく玉砕。『原稿に戻るにゃ……』と力なく呟いて、ライバルズに戻る猫ぽんてなのであった。

 大体このポン猫は『みんな、まもの仁さんを救うにゃ!』とかほざいてたけど、本当はそんなこと微塵も思ってないからな。『世の中ね、顔かお金かなのよ』という回文を地で行く男が人情だの義理だの考えるわけないだろ! こんな社会不適合猫を信じて散った仁が哀れすぎるわ! ざまあ!


 そして『次回最終章』とか前回言ったような気もするが、アンポンテがポンすぎて打鍵が捗ってしまったので、もうちっとだけ続くんじゃ。



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