第三話『怒髪衝天のオオカミ娘』
「なっ・・・」
「だっ・・・」
『「なんだてめぇ!?」「だれだおまえ!?」』
衝撃と焦燥の叫びが見事にシンクロした。
お互いの糾弾に怯みながら、先行したのはケモミミ娘の方だった。
「てめえ!水着のみのりを抱えて何してやがる!ま、まさか誘拐か!?ロリコンってやつか!?」
「俺はロリコンじゃねえ!」
真っ先に口から飛び出た応答に、自覚があったのだと悲しくなった。
「じゃあ何なんだてめえは!」
「俺は調査目的で月から来た者だ。
今はこの娘に地球の環境や生活状況を教えてもらいながら少しばかり世話になってるだけだ。」
「・・・月から・・・ってえことは、お前も人間か」
「ああ、そうだが」
威勢の良かったケモミミ娘は、急に険しい顔になった。
まるで外敵に対して威嚇をする獣のように。
俺は1歩後退し怯んだ。
「お前からはあいつらのくせえ臭いがしやがる」
あいつら?一体どいつらのことだ?
「おい、一体何のはなし・・・」
俺が言いかけた途端、背中で眠っていたみのりがまどろみから帰ってきた。
「・・・ん、ぅん・・・あれ、くーちゃん・・・?」
半分寝ぼけながら、オオカミ娘を“くーちゃん”と呼んだ
「くーちゃん?」
俺が何とも可愛らしい仔犬のような名前を復唱すると、
オオカミ娘の険しかった表情が赤面と怒りで威迫ない顔になった。
「おいみのり!!その名前で呼ぶなっつってんだろ!!」
毛を逆立てて必死に怒鳴るが、よっぽど恥ずかしかったようで先程の威勢は全く無かった。
「あ、おんぶで運んでくれたんだね。ありがとう」
「お、おう」
今更おぶられていることに気付き、背中から降りた。
「それで、くーちゃんは今日もお魚を持ってきてくれたの?」
「まあな」
目を逸らし応えるくーちゃん。
どうやら彼女(?)はみのりに魚をおすそ分けしているようだ。
「じゃあ今日のお礼はスイカだよ」
「おっマジか」
曇っていた顔が少し晴れた。
ビリビリに破れたハーフデニムから飛び出た尻尾が、左右に少し揺れている。
「・・・何見てんだよ」
「いや、分かりやすいなと思って」
「うっせえ」
何とか場の空気は和んだようだ。
「わあ!ニジマスなんて珍しいね!」
「ああ、たまたま獲れたから持ってきた」
テーブルの上には、大きな葉に乗った“ニジマス”と呼ばれる魚が2尾並べられていた。
「よおし、夕ご飯はニジマスの焼き魚だね!」
「ジャガイモも焼いて食おうぜ」
2人とも上機嫌な様子だ。どうやらニジマスというのはそれだけ美味いのだろう。
またまた地球の未知を味わえることに心躍る。俺も楽しみになってきた。
日はほとんど西の水平線に隠れ、空には淡い藤色が馳せていた。
服に着替えたみのりは台所で鼻歌を歌いながら夕飯の準備をしている。
俺とオオカミ娘は少しバツが悪そうに居間に座っていた。
「・・・おい」
しばらくの沈黙の後、向こうから投げかけてきた。
「何だよ」
「あたしはお前のことをまだ認めた訳じゃねえ」
「ああそうかい」
「お前がみのりのそばにいる資格があるのか、あたしが試してやる。」
「は?」
「試験だよ試験。お前もマンガとかで見たことあんだろ?ハンター試験的な」
随分と物騒な試験だな
「一体何の試験をやるんだよ」
「ケッケッケ、まずお前にはこれをやってもらう」
ガサゴソと押入れの中から何か四角い物体を取り出してきた。
「スーファミだッ!!」
「何・・・だと・・・!?」
スーファミもとい、スーパーファミコンといえば、旧人類の“失われし刻限”の一つ・・・その名は永い永い年月を経ても根強く生き続け、現代では再現不能の神器として取り扱われる伝説の逸品・・・そんなものがこの島に、この家にまさかあったとは・・・それだけでも地球に来た甲斐があったというものだ。
「ソフトは何なんだ!?」
「格闘対戦ゲーム、“太郎伝説”であたしとタイマンしてもらう」
タイマンも何も、1VS1でしか遊べないが。
「お前は格ゲーは初めてか?」
「いや、いま月面で流行りの“BIT RAIDERS”でかなりやり込んだから、格ゲーは得意な分野だ」
全月面大会予選まで進んだ事がある。腕にはそれなりの自信がある。
「じゃあハンデは要らねえんだな?」
「それは俺の台詞では?」
「ケッ!調子づいてられるのも今のうちだゼ、月面人」
お互いの視線がジリジリとぶつかり合う。一触即発の空気が部屋に張り詰めた。
「あたしが1P、お前は2Pだ。一本勝負で、使うキャラは自由。技の制約もねえ。何の枷もない、これは“死合”だ。てめえの命をかけるつもりでやりやがれ」
「いいだろう。人間がどれだけの英智と文明を築いてきたか、ケモノ風情に教えてやろう」
『レディー、ファイッ!!』
命を賭した闘いが今、幕を開けた
「ケッ!ガードばっかりじゃあいつまで経っても勝てねえゼ!カチャカチャカチャ」
「くっ・・・!」
何だこのコントローラは!2フレームは遅延してやがる!思考と判定のラグがあり過ぎて、判定が追いついてねえ!
「さっきの威勢はどこいきやがったぁ!」
オオカミ娘の苛烈なコンボが容赦なく俺のHPを削っていく。
何か対応策は無いのか・・・
HPが半分を切ったところで、俺はガードをやめ、通常技での攻めに徹した
「やっと攻撃する気になったか三下が!」
「・・・・・・・・・カチャカチャカチャ」
ひたすらに技の入力を続ける。もちろんコンボなど関係の無い雑な技の連続だ。だが確実にHPを削っていく。
「チマチマとムカつく殴りだぜ!」
相手は完全に後手に回っている。HPが並び始めた。まだ勝ちは見える
「調子乗んじゃねえぞ!」
相手も焦りを感じ、攻めの姿勢に替わる。もはや攻防戦ではなく、ただの殴り合いだ。
しかし、俺は最初の守りの時点でオオカミ娘の特徴を分析していた。
「喰らいやがれ!」
「・・・!」
『タイガーキック!』
「なにッ!?」
俺の繰り出したタイガーキックは見事に相手に命中した。
「てめえ、タイガーキックを対空で使うなんて邪道だゼ!」
「ふん、確かに初代のタイガーキックは突進技というのが定石だった。だが、新作が出るにつれ、この技は対空技としても使われるようになった。そう、お前は昔の常識にとらわれたが故に、ジャンプ攻撃の“返し”を予見出来なかった」
相手はコンボを繋げる時、必ずジャンプ攻撃から始める。いわゆる“バッタ戦法”だ。それさえ分かれば、あとは操作遅延の調整のみ。オオカミ娘の思考パターンを先読みさえ出来てしまえば遅延調整は造作もない。これが人だからこそできる状況の分析と適応だ。
「さあ、くーちゃん。お前のパターンは見え透いている。残り4割を堅実に削るだけだ」「その名前で呼ぶな!このロリコン!ぺド!」
「んだと!?」
もうただの罵り合いになり、真剣だった技の読み合いはただのゴリ押し戦になっていた。こちらのHPは2割、相手は3割・・・劣勢ではあるが、冷静さで言えばこちらの方が上だ。いけるぞ・・・!
「これでトドメだッ!」
お互いトドメの超必殺技を解き放つ。そのタイミングは俺でも読み切れないほどほぼ同時だった。当たり判定が速かった方がこの闘いの勝者となる。正に神のみぞ知る勝敗。実力や技量ではない、“運”だけが俺らの心臓を握っている。
さあ、勝利の女神はどちらに微笑むのか・・・
『K.O!』
『1P ウィン!』
「よっしゃあぁ!!」
「なん・・・だと・・・!?」
どうやら俺は勝利の女神に唾を吐かれたようだ。
「ケッケッケッ口ほどにもねえザコじゃねえか」
「クッ・・・言いたい放題言いやがって・・・」
煽りに煽られ俺のメンタルは決壊寸前だ。
「いや、待てよ。格ゲー経験者とは言ったが、俺がやっていたBIT RAIDERSは3D格闘ゲーム、それに対して太郎伝説は2D格闘ゲーム。これらは似て非なるもの。つまり俺とお前には圧倒的な経験値のアドバンテージが・・・」
「言い訳か?ロリコン野郎」
「ロリコンじゃねえ!」
「ケッケッケ、負け犬の遠吠えとは見苦しいなぁ月面人」
「何とでも言え。俺はお前にリベンジを申し立てる。」
「ケッ!いいぜぇ受けて立ってやろうじゃねえか」
ケモノは殺意バリバリの顔で拳の骨を鳴らす。またもや命を賭した死闘が幕を ・・・
「ごはんできたよー!」
・・・開けなかった。
豪勢な夕飯には叶わないということだ。それはオオカミ娘も同じだった。とりあえずスーファミの電源を落とし、しばし冷静になって食卓に座った。
食卓の上にはオオカミ娘が捕ってきた“ニジマス”という魚と、
緑、白、赤、更にはオレンジに彩られた野菜たちが瑞々しく陳列していた。
「いただきます」
「召し上がれ!」
よっぽど味に自信があるのか、みのりは満面の笑みを浮かべる。
まずはみのりの育てた野菜を食べた。トマトの中から溢れる汁は、まるでフルーツのように甘かった。レタスやキュウリは味付けがされていないにも関わらず、ほんのりと甘く飲み物のようにジューシーだ。そして米の代わりとなるジャガイモの炒め物。一口大に切られており、味付けはシンプルに塩コショウのみのようだ。ジャガイモの1切れを食べる。外側はサクッとしていながら、中はホクホクとしていて瑞々しい。そこに絶妙な塩加減がジャガイモのポテンシャルを格段に上げていた。月では一生味わえない、正に母なる大地の恵みだ。
「ニヒマフもうめえにゃあモシャモシャ」
豪快に焼き魚を頬張る姿は紛れもない獣そのものだった。
少しばかり戦慄しながら、俺もニジマスをつつく。口に入れた途端、ニジマスの肉はホロッととろけて脂とともに消えていった。その食感はこの島に来て初めての絶品だった。思わず唸りを上げてしまった。
「本当に美味いなこれ」
「そりゃああたしが捕ってきたからな」
「それは関係ないだろ」
「くーちゃんありがとう」
みのりはオオカミ娘の眼をしっかりと捉え礼を言う。オオカミ娘は気恥しそうにそっぽを向いた。そりゃそうだ。俺もあの眼差しの餌食にされたのだからよく分かる。この少女の瞳は宝石のようにきらびやかで水晶のように神秘だ。1度見入れば必ず虜になる。そういう力がある。
その後も円満な食事が続いた。
「さあ、勝負の続きだド三流」
食事を終え、後片付けも終わった途端にオオカミ娘は勝負を吹っかけてきた。
美味いもんも食った。こいつのパターンも織り込み済みだ。最高のコンディションは整った。
「上等だ。次に跪くのはお前の番だ」
そして終わらぬ死闘の幕が、いよいよ開けてしまったのだった・・・
〜翌朝〜
「クー・・・スピー・・・ニヘヘ・・・」
俺らの後ろでみのりが気持ちよさそうに眠っている。
そして俺達は
「こっ、これでっ・・・96対97だ・・・ハァ・・・ハァ」
「ケッ、・・・まだ終わってねえぞヒイ・・・ヒイ」
息も絶え絶え、無為な対戦を続けていた。もはや勝ち負けではない。先にダウンした方が本当の敗者だ。
「いい加減・・・のびろ・・・この・・・ハァ・・・バッタオオカミが・・・ハァ」
「まだ・・・まだだ・・・まだ終わっちゃ・・・い・・・ね・・・え」
そして最後の拳が奴の命に届いた
「・・・リーサルだッ・・・!」
「K.O!」
「ぐはっ!」
とうとうオオカミ娘を打倒し、真の勝利を収めた。奴が倒れるのを確認すると俺も勢い良く身体を倒した。俺ももうギリギリの所だった。この闘いは何とか俺の勝利で幕を下ろしそうだ・・・
〜数時間後〜
「マラソン勝負だ!人間!」
あれだけの死闘を繰り広げたというのに、オオカミ娘はすっかり元の状態に戻っていた。
「どうなってんだ、お前のスタミナは!?」
「ケッ!あんなんでバテてたらこの先やってけねえぞ」
「とにかくマラソン勝負だ。この島の砂浜からぐるっと島を半周だ。森には入んなよ。分かったな!」
「いや待て、試験は合格だったんじゃないのか?」
「誰も試験が一つとは言ってねえぞ」
流石オオカミきたない!
「さあつべこべ言わず走っぞ!」
「くそお・・・」
燃え尽きかけていた体力と闘志を無理やり再燃させる。これは本当に死ぬかもしれない。そのままあの世にゴールインしてしまってもおかしくはない。
「その前に・・・」
みのりが仲裁に入る。
「何だよみのり」
バツの悪い顔で返すオオカミ娘。
「いなり様にお参りにいくよ」
「イナリ様?」
俺は初めて聞く単語に思わず聞き返した。
「ああ、そういやあ今日は神社に行く日だったか」
「うん!あ、あなたは初めてだったね」
きょとんとする俺に説明を始めるみのり
「大きな森の少し入ったところに竹が生えてる林があるんだ。そこには古い神社があって、3日に1度ここで出来た野菜や果物をお供えに行くんだよ。」
「そんな習慣があったのか」
「今日は何を持ってくんだ?」
「さくらんぼといよかんだよ!」
両手で掲げたバスケットの中には、さくらんぼが3房とイヨカンが1つ入っていた。どちらも強く、だが優しい色をしていた。
「さあ、いこ!」
俺はみのりとオオカミ娘の後を着いていった。
家の裏に行くと、そこには森の入口が佇んでいた。入口に入っていく2人。俺も森に呑まれるように入口を通る。すると最初に目に入ったのは立ち入り禁止の柵だった。森の大きな道とは別の脇道に仰々しく立つ不釣り合いな柵。非常に不吉な雰囲気を、この先から感じる。だが、今は気にしている場合でもないだろうと思い、2人の後を追った。森に入って10分ほど経った所に分かれ道が現れた。2人は迷わず右に進んでいく。すると間もなくして木々は減り、点々と新緑の竹が並んでいた。無造作のようで整然と生え揃った竹林は、どこか神秘的な空気を漂わせていた。この領域は他の場所とは違う。“本能的に”そう感じた。
「ほら、あれが鳥居だよ」
トリイと呼ばれる門のような寂れたオブジェの前で一旦止まり、一礼するみのり。あの粗雑で乱暴なオオカミ娘でさえ、一旦止まり軽く会釈をした。
この行為はそれだけ大事なことなのだと察し、俺も2人を真似て遅れて一礼をする。そしてようやく2人は進み始めた。恐らくこれはこの場所での“礼儀”なのだろう。日本はそうした風習や礼儀を重んじてきた。郷に入っては郷に従え。ここは月ではない。地球だ。彼女達には彼女達の生活と日常があり、それは彼女達にとって当たり前の事だ。俺の当たり前と彼女達の当たり前は違う。同じ人間であろうとそうでなかろうとだ。
「祠に着いたよ!」
トリイを抜けた先、二つの犬のような石像の間にホコラはあった。随分と古びていて風情のある面持ちだ。ホコラの前には前に供えたであろう空のバスケットが置いてあった
「えへへ、ちゃんと食べてくれたんだね」
嬉しそうに前のバスケットと新しいバスケットを交換するみのり。これを食べているのは動物なのだろうか?確かイナリというのはキツネのような動物であるとどこかの文献で見たことがあった気がする。
「今日は出てこねえみてえだな」
「最近暑いからね。さっ、お参りして帰ろう」
バスケットを供えると手を合わせ静かに目を閉じるみのり。俺も見よう見まねで合掌する。目を閉じている間は、風に揺れる笹の葉の音があたり一面に木霊した。その一瞬かはたまた数十秒か、“精神世界”のような一時が俺の心を浄化していった。感じたことのない感覚に戸惑いながらも、神秘的な体験に感服していた。
「それじゃあ帰ろっか」
「ああ」
「おう」
トリイを出た後も一礼をし、来た道を戻っていった。
「2人とも無理しないでね。」
結局やるはめになったマラソンのモチベーションが全く上がらない。心が浄化されたとは言っても体力までは回復しない。
「帰ったら冷たくて美味しい果物いーっぱい用意しとくね!」
「ホントか!よし、絶対勝ってやる」
みのりの一言で俄然やる気が湧いてきた。こうなれば勝つしかない。勝ってこのオオカミ娘を完封してやる。対抗心と闘志は有頂天に達しつつあった。
「みのり!合図頼んだ!」
「は〜い。それじゃあ位置に着いて、よーい・・・」
ジリッ・・・・・・
「どん!」
ビュンッ!!
試験第二ラウンドのピストルがなった。
「へん!やっぱただのロリコンもやしだったな!」
「ぜぇ・・・ぜぇ・・・ぜぇ・・・勝てるわけねえ・・・ぜぇ」
「2人ともお疲れ様!」
完敗。僅差ですら無かった。やつは見た目通り俊敏で疾風のように速かった。その姿は正にオオカミ。人間がオオカミの速さに追いつけるはずもない。
「まだだ!まだ一勝一敗だ!」
俺は次の試験を挑んでいた。俺の中には沸沸と煮えたぎる闘争心が芽生えていた。何としても勝ちたい。認められたいという強い意志が。
「・・・いいぜ!どんどんかかってきな!」
それから何日も俺はオオカミ娘に挑み続けた。
魚釣り、早食い、遠泳、木登り、滝行、レースゲーム、オセロ、チェス、人生ゲームー
片っ端から勝負を挑み続け、一進一退の攻防が続いた。
しかし、勝負は次第に勝ち負けや優劣をこだわるものでは無くなっていった。ただの殴り合いではない。相手を敬い重んじるからこそ成り立つサシの闘い。
俺らの中に一つの“結束”のようなものが生まれつつあった。
正に“好敵手”
相手がいて初めて成り立つ勝負。敗北がなければ勝利もない。そう、闘いというのは良き敵がいなくては成り立たない。闘う相手がいることの意義を知った俺達は自ずと手を取り合っていた。
「お前ならみのりを任せられる。あたしの負けだ」
「いや、負けなどない。俺たち2人の勝利だ。」
固い握手を交わし、強い絆を確かめ合った。
俺は認められたんだ。それが今更になって嬉しかった。自らの手で掴み取った勝利。俺は今までにない満足感を覚えた。
「さあ最後の試験だ」
「・・・・・・・・・は?」
「これが本当に最後の試験。これをクリア出来ればお前を本当に認めよう」
「いや、さっきお前なら任せられるって言ってたよな?」
「最後の試験、それは・・・」
無視ですか
「太郎伝説でみのりに勝ってもらおう」
「は?」
みのりに?太郎伝説で?
「え〜、勝てるかなぁ・・・」
みのりは不安そうにコントローラを弄っている。一体どういう風の吹き回しだ?みのりと対戦だと?
「みのりに勝てばいいんだよな?」
「ああ、そうだ。対戦して勝てばいい。簡単だろ?」
「まあ、それで試験に合格出来るんなら、例えみのりだろうと容赦はしない」
コントローラを構える。みのりも自信なさげにコントローラを握る
「優しくしてね・・・」
その台詞は反則だろ
まあいい。
これで終わらせる。長かった死闘を・・・!
『ファイッ!』
『K.O!』
『パーフェクト!』
「(゜д゜)」
「えへへ〜やったあ!」
ソレハヒトノウゴキデハナカッタ
テモアシモデズ、オレハタタキノメサレタ
「ケッケッケッ!!みのりになめてかかりやがって!あたしですら1度も勝ったことがないのによお!ケッケッケッ!」
大笑いするオオカミ娘。
どうやらまんまとハメられたようだ。
「てめえ最初から試験なんて合格させないつもりでやりやがったな!?」
「気づかなかったのかロリコン野郎!ケラケラ」
「うるせえくーちゃん!」
「その名前で呼ぶなっ!このへなへなもやし!」
「んだと!?」
「2人とも仲良くなって良かったあ」
「「んなわけあるか!!!」」
2人の叫びは見事にシンクロした。
第三話『怒髪衝天のオオカミ娘』ー完