壬生狼
「わたしか?私は京都守護職預かり「新選組」三番隊組長・・・・・斎藤一よ・・・・あなた最近巷で騒がしている辻斬りかしら?」
月夜に照らされ空色のように深く蒼い髪がキラキラと輝きその少女は剣一を襲う浪人にそう言う。なんかこの人、小波義姉さんと似たような感じがする・・・・
「ああっ?そうだよそれがどうしたんだよ!壬生に住んでいる幕府の飼い犬さんよ!」
と、浪人は彼女に対し挑発的な言葉を察するが彼女はふっと鼻笑いして
「飼い犬っね・・・・・私たち新選組が飼い犬ならあなたは差し詰め道の真ん中でふらふらと彷徨う野良犬ってところね。さっきからキャンキャンと負け犬ほどよく吠えるっていうのはこのことかしら?」
「な、なんだと!」
と、彼女に挑発された浪人は顔を怒り真っ赤にする
「この小娘がぁ!やろーぶっ殺してやぁーるっ!!!」
浪人は刀を構えなおし、斎藤一に斬りかかる。
「あ、危ないっ!」
剣一がそう言うが一は浪人の剣撃をよけてて左に回り込む
「なっ!?」
「こんな斬撃・・・・まだ維新志士の斬撃に比べれば子供の遊びよ・・・・」
彼女の青色の瞳が冷たくギラギラと光る・・・・
「ひっ!」
「死になさい・・・・」
そう言い彼女はその浪人を袈裟懸けに斬り、浪人は絶命した。血なまぐさい道の中居るのは斎藤一と剣一の二人だけだった。剣一は腰が抜けて動けない。なぜなら初めて人に刃物で襲われたこと、もう一つは初めて人が死ぬのを見たことが原因だった。
「・・・・っと・・・・・ちょっとあなた!」
「はっ!」
剣一は一に声をかけられ正気を戻す。
「な、なんですか?」
「なんですかじゃないわよ。あなたこんな時間にそれに妙な格好ね西洋の連中と似ているけど・・・・・・」
そう言い彼女は俺のそばに近づく。そして俺の首筋に刀を向ける
「あなた何者?もしも維新志士の連中の仲間だったら・・・・」
「だったら?」
「あなたを斬らなくちゃいけないわ」
と目を細めてそう言う。あれ?なんかデジャブを感じる。すると・・・・・
「あっ!いた!」
「あ、土方さん。」
とそこへ刀を手に土方さんがやってきた
「美風。なぜお前がここにいる?お前は確か任務中だったはずだぞ。それにこの仏はなんだ?」
そう言い花桜梨はさっき彼女が斬った浪人の死体を見て彼女に訊く。ちなみに仏とは遺体のことである
「はい。その任務も終わり。副長や局長のもとに報告しに行く途中、この少年が最近問題となっていた辻斬りに襲われていたので助けました・・・・副長。この少年のこと知っているのですか?」
「ああ、美風こいつはな。藤田剣一っといってな近々新選組の隊士になる奴だ」
「‥…こいつがですか?」
と斎藤は疑いのまなざしで剣一を見る。
「ああ、明日。こいつの腕を見るために入隊試験をやる予定だ。その際お前には試験官の一人として出席してもらいたい」
「・・・・わかりました。謹んでお受けします。それでは副長。私は局長への報告をするため屯所に戻ります。では」
そう言うと彼女は土方に一礼すると屯所に帰っていた。
「あ、あの・・・・・土方さん」
「馬鹿者っ!!」
「っ!?」
いきなりの怒声に俺は固まってしまう
「どれだけ心配したと思っている!それもこんな夜中に!今回はたまたまうちの隊士がここを通りかかったからまだよかったが、下手をすればお前はこの浪人に斬り殺されていたのだぞ!ここはお前のいた平和な世界とは違う。ここ京都ではな人殺しが当たり前のようにあるのよ!とくに夜中は怪しい連中がうようよしているそんな中、刀も持たずに歩くなんて・・・・・」
「すみません・・・」
確かに彼女の言う通りここは俺のいた世界とは全く違う。ここは幕末…二つの政権が血で血を洗う時代。しかもその激戦であり血で塗られた歴史を持つ京都に今俺はいる。俺は何のためにここに送られたのか・・・・・もしも義父さんや義母さんがいたらなんて言ってくれるんだろう…そんなことが頭をよぎる
「・・・・はあ~まあ、怪我はないようだし。剣一。今後、夜は勝手に外を出ないでね。いい?」
「わかった土方さん」
「そう、それじゃ戻るわよ。明日はあなたの入隊試験だからな」
そう言い俺は土方さんについていき屯所に戻るのだった。戻った時近藤さんは優しい笑顔で俺を出迎えてくれた。
そして俺は明日の入隊試験のため寝るのだった。
局長室
「よかったな花桜梨。あいつに怪我はなくて・・・・」
「そうね近藤さん。今回は幸いに美風がいたからよかったけどね・・・・そう言えば近藤さん」
「ああ、美風からの報告聞いたわよ。最近浪士や志士どもが不穏な動きをしているみたいね」
「ええ・・・何か知らないけど何かを企んでいることは確かね」
「・・・・で、明日の入隊試験。どうするの?」
「ええ、剣一の試験官に3人よこすわ。もしその三人に善戦出来たら合格にするわ」
「そう…あの子合格できるといいわね」
「そうね・・・・」
そう言い二人は剣一のことを考えるのだった。