謎の浪人少女
「・・・・・・遅い」
新選組の屯所では、剣一の上司であり新選組の副長である。土方歳三こと花桜梨がイラつきながら書類仕事をしていた。
「あいつめ・・・・ただ、手紙を奉行所へもっていくだけの簡単な仕事でしょうに。何をしているのかしら」
なかなか、お使いから戻ってこない剣一に花桜梨がそう呟くと
「・・・・・まさか道に迷っていないわよね?それとも維新志士や浪人たちに襲われたりとかは・・・・・いいや。美風がついているんだ。それはまずない・・・・だが、万が一っていうこともある・・・・もっと護衛を増やすべきだったかな」
「彼のこと心配?」
「いや、別にあんなやつのことは・・・・・・・・・・ん?・・・・て、さ、桜さん!?」
急に誰かの声がしたと思って花桜梨は後ろを振り向くとそこには新撰組局長である近藤勇こと桜が立っていた
「で、花桜梨。もう一度聞くけど剣一君のことが心配?」
「べ、別にあいつが心配とかどうでもいい!ただ帰りが遅すぎるから・・・・・」
「大丈夫よ。美風ちゃんもいることだし、もうすぐお昼だし、大方どこかの蕎麦屋でそばを食べながら休憩でもしているんじゃないかな?」
「仕事をさぼって?」
「それはないと思うわよ?会って間もないけど。私から見るにあの子、とってもまじめな子だと思うわよ」
「しかし・・・・もしも」
「も~花桜梨ったら昔から心配性で過保護ね。少しは彼のこと信用しなさい」
「べ、別に私はあいつのことなど・・・・・・」
「そうは言うけど。彼方動揺して書類に書く文字、間違っているわよ」
「なに!?」
桜にそう言われ花桜梨は慌ててその書類を見ると
「アハハハ!冗談よ。カマかけただけ」
「もー!桜さん!!からかわないでくださいよ!!」
「ごめんねぇ~生真面目な花桜梨を見るとついからかいたくなっちゃうのよ。まあ剣一なら大丈夫よ。さっきも言ったように美風がいるんだから」
「はぁ・・・・だといいんですが」
とため息をつく花桜梨であった
一方、剣一はというと・・・・・・
「ん~うまいぜよ!!やっぱり軍鶏は鍋もいいけど、そばに合わせてもいけるぜよ!!」
「あはは・・・・・」
「ほら、おまんも食え!!ここの蕎麦屋はすっごくおいしいぜよ。遠慮する必要はないぜよここは私のおごりぜよ」
「あ・・・・はい」
どうしてこうなってしまったのだろう・・・・・自分は確か花桜梨さんに頼まれた用事を済ませ屯所に帰るはずだったが、帰る途中、偶然、チンピラから助けた少女と出会い。そしてなぜか一緒に蕎麦屋でそばを食べていた。すると・・・・
「おい、あの小僧・・・・新選組だぜ?それに一緒に食べている浪人の少女誰だ?すげぇ可愛いんだけど?」
「あの小僧。新選組のくせにかわいい女の子と蕎麦を食べているなんてけしからん」
と何やら若い男性客からすごい目で見られている。正直言って視線が痛い。すると少女が
「ん?どうかしたぜよ?蕎麦美味しくないの?」
「え?ああ。いや。美味しいよ。君が勧めるだけあるよ」
「そうぜよ~ここは京の中で一番うまい蕎麦屋ぜよ。それに財布にも優しいし」
と、にっこり笑う少女。その少女を見て何らかの人懐っこさをを感じる。何という過か、この食えない感じは幽お姉さんのと似ていた
「えっと・・・・ところで君の名前は?」
「おお、そうじゃった。そうじゃった。私としたことが自己紹介が遅れてしまったわね。私は土佐の脱藩浪人の坂本竜美龍馬ぜよ。ま、気軽に竜美と呼ぶぜよ。何なら親しみやすくおりょうと呼んでもいいぜよ」
「っ!?」
その言葉に剣一は驚く。坂本龍馬。その名前を知らない人はいないほどの超有名人物だ。土佐の生まれで(現在の高知県)その革新的な頭脳で、先の日本のことを思い、そして不仲であった薩摩と長州を同盟させる薩長同盟でも知られる人だ。というより龍馬も女性なんだ。まあ、花桜梨さんたちを見て薄々わかってはいたけど・・・・
「あ、・・・・あの・・・・竜美さんって‥…本当にあの坂本龍馬なんですか?」
「ん?あの竜馬かどうかは知らんぜよが。坂本龍馬なら私ぜよ」
「あ、あのもしかして乙女さんっていう男勝りのお姉さんとかいます?」
剣一がそう聞くと龍馬こと竜美は怪訝そうな表情をし剣一の顔をまじまじと見る
「あんた・・・・・なんで姉さんのこと知っているぜよ?」
しまった!この時剣一はそう思った。そしてすぐに誤魔化さないといけないそう思った
「え?・・・・・あ、えっと・・・・・噂になっていた・・・・・からかな?」
「・・・・・・」
剣一は慌ててそう言うと竜美さんはじーと剣一のことを見ていた。これはさすがに無理だったか?剣一がそう思うと
「あはははは!!!」
「っ!?」
と、いきなり竜美が笑い始めた
「いや~はちきん(男勝り、または強気な女性のこと)の乙女姉さんがまさか京でも噂になっているとは。驚きぜよアハハハ!!」
と、豪快に笑う
「いや~あなた新選組の子なのに面白いわね~新撰組の人で笑ったのってあの沖田以来だわ」
「え?竜美さん。菊代のこと知っているの?」
「ええ、直接会ってはいないけど。遠目で見ておもしろいな~って」
「ああ、なるほど・・・・」
確かに菊代って新選組のムードメーカな感じだけど・・・・・
「で、おまんそう言えば名前を聞いていなかったぜよ。名前は?」
「え?ああ俺は藤田剣一。最近隊に入隊したばかりさ」
「そっか剣一というぜよか。ところで剣一。おまんに一つ質問があるぜよ」
「なんですか?」
「この世についてどうおもっちょる?黒船来航以来、西洋からくる異人がやってきて今の幕府も日本も混乱状態。中には攘夷・・・・武力で外国連中を打ち払おうとする者さえ出てきておる。今の日本外からはお椀の中の喧嘩じゃ、その隙をついて西洋列強どもがこの日本を征服する可能性は多いにある。だったらどうするか?もし剣一ならどうするぜよ?」
と真剣な表情でそう聞く。今の日本のことを考えどうするか考えるところはやはり性別が変わっても坂本龍馬なんだなと感心していた。そして剣一は少し考え
「そうだな・・・・・日本を統一して近代国家。もとい富国強兵国政策をとるかな?」
「近代国家?」
「ああ。外国の技術や文化を勉強して吸収して、そしてそれを日本流にアレンジ・・・・まあ日本流に改良して西洋列強に負けず。そして対等な国に育て国力を上げる・・・・かな?」
剣一は自分の思ったことを言うと竜美は
「驚いたぜよ・・・・まさか私と同じことを考える人がいるなんて。皆に話しても誰も理解されてもらえなかったのに・・・・・」
と、感心した表情でそう言っていた。すると竜美さんは剣一の両肩をがっしりつかっみ
「ねえ!あなた私たちの仲間にならない!?」
「え?」
突然の言葉に剣一は目を丸くする
「あなたのような人、新選組にはもったいないわ!あなたはさっきの革新的な言葉見る限り頭が切れそうね。なら、新選組じゃなくて私たちと一緒にこの国を変えていかない?あなたのその発想新選組の大使だけで終わらせるのは本当にもったいないわ!!」
目をキラキラさせそう言う竜美さん。というより顔が近いし、それにあたっているんだけど・・・・
「あ、あの・・・・・気持ちは嬉しいけど俺は新選組から離れるつもりはないよ」
「そうぜよ?う~ん。なんか惜しい気がするけどあまり無理強いもよくないわね。いいわ今日は諦めるけど。でも私は諦めないから。あ、それと私はそろそろ行くね。やらなければいけないことは山ほどあるから」
そう言い竜美さんは懐から小銭を出すと
「店主さん。ごちそうさん。お勘定二人分ここに置いておくから」
と、そう言い立ち上がり
「それじゃあ、また会いましょうね新選組隊士の剣一さん」
と、ウィンクをすると竜美は店から出ていくのであった
「・・・・あれが坂本龍馬か・・・・確か坂本龍馬って・・・・あっ!いけねっ!早く屯所に戻らないと花桜梨に叱られる!!」
そう言い慌ててそばを食べて屯所へと戻るのであった。そして屯所に戻ると
「お帰り、剣一・・・・・手紙を奉行所に届けるのにずいぶんかかったじゃないか?」
屯所に戻り花桜梨の部屋に行くとそこには眉間に青筋を立てた花桜梨が座っていた
「え、えっと・・・・・」
剣一が冷や汗をかき説明しようとすると花桜梨はため息をつき
「はぁ・・・・大方、道にでも迷ったんでしょ?さっき美虎が剣一のやつが道に迷っていたって言っていたからな」
「えっえっと・・・・」
「それともお前は任務を放棄して女遊びにかまけていたのか?ならば士道不覚語として切腹・・・・・」
「いいえ!ちゃんと奉行所に渡しました!だけど道に迷って遅くなってしまいました!!」
「そ、ならそれでいいわ。話は終わりよ。自分の部屋に戻りなさい。・・・・・・・それとよく頑張ったわね」
「え?」
「何でもないわ!さっさと戻りなさい!」
「は・・・はい」
そう言い剣一は部屋を出ると、入れ違うように桜が入ってくる。そしてその顔は笑っていた
「何よ桜さん?」
「いや?花桜梨も少しだけ素直になったかな~って」
「何よ。まるで私が素直じゃないみたいじゃない」
「ふふ・・・・・ところで剣一君の護衛をしていた美風なんだけど・・・・」
「美風がどうしたんだ?」
「なんか若い大使から聞いた話だとなんでも。若い男をこそこそと追跡しているところを岡っ引きの人に見つかって今奉行所に連行されたって」
「はぁ!?あいつ剣一の任務をほっぽって何をしているんだ!?」
「それで奉行所の人が今屯所にやってきて・・・・・」
「わかった。あいつの迎えに行ってくる」
頭を抱えながらそう言うと美風を迎えに行くため奉行所へと向かうのであった
一方、奉行所では
「いや、君ね・・・・・いくら好きな男性だからといってこそこそ後をつけるのはどうかと思うよ?」
「だから好きではないといっているだろ!私は任務のためあいつを監視・・・・」
「はいはい。照れて隠さなくてもいいぞ。今どきの乙女にはよくあることだ。しかもその相手が同僚ならばなおさらだね」
「だから違うといっているだろ!!おのれ藤田剣一めぇーーーーーー!!!!」
と、奉行所の取調室でそう叫ぶ美風で会った




