6話 『たまにはこっちから寄り添ってみよ!』
魔法の練習、格闘術、剣術、そして筋トレと最近追加したランニングを終えてスウは家に帰る途中である。
「しんどい、めっさしんどいわあ、昔からやる気の出ないやつがここまで頑張るのってこんな疲れるなんてな、毎日やってるからどんどん慣れてきてもなんかだるいわあ、
なんで毎日やらないといけないんだ、自分で決めたからか、はあでもしんど」
しょうもない愚痴をこぼしながら、スウは鍛錬をやめようとは思わなかった。
この世界に来て、たまに魔王軍とか敵が来るとか村人が話しているのを聞いていたからだ。
そのことから、自分は今戦いを避けることが出来ない可能性を考え自分の命を失うことに恐怖して仕方なく、鍛錬を続けていた。
「まあ、魔法は一通り全部使えるようになったし、後は持続力だけくらいだが、2歳でここまでくるのはなんか達成感すごいな、鍛錬に関してはなぜか相手がいないしお婆様もあまりよく分かってないからないから強くなってるのか分からない状態だからな、まあランニングに関しては、ホント2・3日前だからな、スタミナに関しては分からなくて当然かな、てか魔王軍とかどこに出没するのか分からないのか? 困るなあ、自分と関係なかったら鍛錬やめれるのに、勉強だけの方がまだましな気がしてきた」
そう思いながらスウは家についた。
すると、
「スウちゃんおかえりお母さん帰ってきてるよ」
「そうですかわかりました」
(あっ、そういえばいたなあのクソビッチママン、あの一回きり帰ってこないから忘れてたわ、てか2年もいないって魔法の先生ってそんなに仕事やばいの! ほとんどブラックだけど大丈夫? 死ぬよ? さすがに心配だわ)
と思ったが、
(いや、クソビッチママンのことだから他の男と淫乱生活に勤しんでたのかもしれないな、そう思うと、次は妹か弟が出来るのかな? それなら妹かな、姉に忠順な子に育てて俺に対して、お姉さまと言わせて見せるぜ、ゲヘへへへへ)
としょうもないことを考える。
「では、僕はお母様にあいさつをします」
「そう、そこにいるわよ」
そういってお婆様の目線の席を見ると久しぶりに見るお母様がいた。
(さて、性格は相変わらずなのかな? それとも少しは変わったかな? まあ変わる気配ないけどな)
「ただいまお母様」
「あら、お帰り自分を鍛えてるなんて感心ね、流石は私の娘だわ」
「ありがとうございます。お母様」
(顔は笑ってるけど、なんか嘘っぽい笑い方なのが丸見えですよ、クソビッチママン)
「あら、久しぶりに会って二人とも嬉しそう! 良かったわ」
(相も変わらず、クソビッチママンの悪意が伝わりませんね、お婆様は)
そう思いながら、思ったことを口に出さないように気を付けた。
「それじゃあ、私は買い物に行ってくるわ」
「わかりました、行ってらっしゃいお婆様」
「行ってらっしゃい、お母様」
そういってお婆様は買い物に出かけた。
「はあ、疲れた」
(赤ちゃんの頃から2年経つのにまったく変わってなさそうだなこいつ)
スウは少し呆れた。
(しかし、あまりにもこのクソビッチママンと関わらな過ぎるのも考えものだな、やはり人とのコミュニケーションでは人が興味あることを話すことで会話を盛り上げることが出来るはずだ、こいつの場合はビッチの話かそれとも魔法の話だな、この年でビッチの話はいやだし、しかもその経験自体前世ではなかったくそ童貞だし、魔法の話がいいな)
そう考えスウは
「お母様は、魔法の先生でしたよね」
「は、そうだけど」
「僕も魔法の勉強してるんですけど、すみませんが魔法のことを教えてもらってもよろしいですか」
「いや、疲れてんだけど、魔法の勉強してるんでしょだったらなんで私が教えなきゃいけないのバカ」
「お母様が僕を嫌ってるのは知ってますけど、その態度がいつかお婆様にバレるか分かりませんよ、なら今ここでまだ仲良くなれるようにした方がいいんじゃないでしょうか、その方が猫かぶりも分からないかと」
スウは少し嫌味っぽく言った。
「チッ! 何、ケンカ売ってんの、ムカつくわあ! 分かったわよ! 教えればいいんでしょ、仕方ないわね、ただしこれはお婆様に嫌われたらえらい目に合うからだからね」
(何をこいつにここまでさせるんだろうか? お婆様に寄生することで何かメリットがあるのかな?)
スウは不思議に思いながらも魔法を学ぶことにした。
「じゃあ、魔法はどこまで使えるの?」
(どうしようか、こいつがどこまで使えるのか知らないからなあ、どうしようか取り敢えず幾つか使えない魔法があることにするか)
「えっと火、水、土、電気、闇、光、聖、強化、転移、治癒かな」
(適当だけど)
「……嘘でしょ、あんた嘘つくのが下手すぎるわよ、適当に答えてるのがバレバレなのよ、私に教わりたいとか言って嘘をつくのはおかしいと思うわ、正直に答えなさい」
(なぜそこで正論言うんだこの女は、いや俺が悪いんだけどさ確かに、でもこうでもしないとなんか問題起きそうって気づけよ! もう知らないぞ正直に答えるからな)
「全部使えます、後は魔法の応用力をどうするかですかね、」
「……ふざけないでくれる、転移とメッセージと読心が使えないのにどうしてあなたが使え……もういいわ、あなたに教えることは何もないから、じゃあこの話はこれで終わりにしようか」
(ほら拗ねた、だから嘘ついてまであんなこと言ったのに、まあすぐばれた俺も悪いが、そこは乗っかれよ、乗っかることも必要だと思うんだがな)
スウは拗ねた母親に心の中で文句を言った。
(励まそうにも完全にプライド折られてるからもう俺が何を言っても無駄だな、仕方ないクソビッチママンの件は諦めるか)
そうして無言と気まずい時間が過ぎていき、やっとお婆様が帰ってきた。
「ただいま、親子水入らずでどんな話をしていたの?」
お婆様は気まずい状況を知らないため笑顔で話す。
「ええ、魔法について話してたの!」
ハイトは笑顔でそう答えた。
(こいつのこういうとこすごいよな、さっきまで暗い顔で涙目だったのに、それに魔法について教えてたじゃなくて、話してただから嘘ではないしな。ある意味こっちの才能がすごいよな、魔法ではなく)
「ええ、色々な話をしました、僕が今どんな魔法を使えるかなどです」
「まあそうなの!」
「ところで、お母様この子はいつから魔法を」
(おいバカ! それを聞くなよお前は、またプライド潰れるぞ! さすがの俺でも赤ちゃん頃使えたとか言われたらお前が傷つくことぐらい予想できるから! それにお婆様って結構天然でやらかすから! いや、まだ分からないぞ、俺はお婆様を信じる、お婆様なら言わない、お婆様はやればできるお婆様のはずだ)
「赤ちゃんの頃からよ、無意識なのかよく使ってたわ、しかも全種類の魔法を使ってたのよ! すごいでしょ!」
(お婆ああ様あああああ! そんな詳しく言わなくてもいいじゃないですかかあああ!)
「……そうですか! やっぱり私の娘ね、才能があるのね! すごいわあ!」
(ほおらあ、少し顔歪んだ笑顔、ちょおおこええええよおおお! てか、この時心の中どうなってんだ、読心使ってちょっと見てみよ)
そしてスウは、魔力を目に宿した。
(フザケルナ、フザケルナ、フザケルナ、フザケルナ、フザケルナ、フザケルナ、フザケルナ、フザケルナ、フザケルナ、フザケルナ、フザケルナ、フザケルナ、フザケルナ、フザケルナ、フザケルナ、フザケルナ、フザケルナ、フザケルナ、フザケルナ、フザケルナ、……)
(やべええ、ちょおおこえええ! 分からなくないがちょおおこえええ!)
スウは読心を読んだことを後悔した。
(こりゃあダメだ、完全に関係性が崩れた。もう修復できないな、はあ、まあいいか、どうせ長く会うこともなさそうだしどうでもいいか、それにクソビッチママンより魔法の力は上だそうだし、この人から教わることもないというのはある意味俺はかなりここで成長を遂げてるということになるからな、いやあちょっと達成感も感じるぜ!)
スウは、ハイトとの仲を保つことを諦め、その代り魔法の鍛錬が自分の方が上であることに満足した。
そして、数時間後ハイトはまた魔法の先生の仕事が入ったため家を出た。
そして夜になる。
(はあ、今日は疲れたなあ、鍛錬の後にクソビッチママンに気を遣うわ、ほんと疲れた。しかも、ここには俺の大好きなチレイたんはいないし、妄想なら出来るがやはり会えないというのは悲しいぜ。会話が出来るのはお婆様だが前世の頃について話すことなんてできるわけないし、どうすればいいんだろうか、ああああああ、すげえもやもや感がたまって来るわあ)
「はあ」
「あらスウちゃん溜息? 大丈夫よ、お母さんはまた帰ってくるから元気出して」
「ありがとうございます、お婆様」
(いや、そういうことじゃないんだけどな、まあ話すことが出来ないのはお母様との関係もこの人に話すのは少しまずいしな、はあ)
スウは自分の苦しみを話すことが出来ないままでいた。
(ていうか、俺この世界で何がしたいんだ? 魔法の鍛錬はモチベーションは上がったけど俺噂程度にしか聞かない魔王軍と戦うのは嫌だぞ! それに、この世界っていったい就職先どうなってるんだろう? それすら未だに分からないし、商人とか魔法の先生があるのは知ってるけど、まあやるとしたら魔法の先生なのかな? はあ、働きたくないでござる)
そう考えながらスウは自分の未来に不安を感じていた。
そうして、スウはストレスをどんどんと溜めていきこう思った。
(夏風チレイたん、僕はあなたに会いたいです、また崇拝的な気持ちでアニメやフュギアやアニメグッズを買いたいです。どうして、どうしてホントこうなったんだ)
スウは妄想ではなく前世のようにアニメや漫画、フュギアで夏風チレイたんに会いたいという気持ちが高まり始めていた。