4話『やっぱ俺にはあの子しかいない!』
スウはミルクを飲み終わり、お婆様が買い物に行った後、すぐに魔法の練習を行う。
(取り敢えず、まずは気持ちを落ち着けないと魔法は使えないらしいし、気持ちを落ち着けることようにしてみよ)
そして、スウは深呼吸をして心を鎮めようとした。
が、落ち着いたのは短く魔法を使うとき失敗してしまうことや使えなかったら自信がなくなるのではないかと思ってしまう。
(クソがっ! やはり昔から自信喪失する癖がついてしまったせいで、やはり妙に落ち着かん、前世ではやはり落ち着いていたことはあったが、どういうときだったっけ)
スウは少し前世の頃を思い出す。
(そういえば、夏風チレイたんのフュギアを予約した時、予約が遅くて手に入らないと聞いたときは少し不安になったが、発注してもらえる目処が付いたら少し安心し、心が落ち着いたな、まああの時は買えない時は買えないし、仕方ないと考えたがやはり少し不安だったがな)
スウは前世のことで少し懐かしむ。
(しかし俺にとって、夏風チレイたんは愛すべき人、そして彼女を見ていると自然と心が安らいだ)
そこでスウは閃いた。
(そうだ! 夏風チレイたんの妄想をよくしていつも心を和ませていたのなら、心を落ち着けることと一緒のはず、そして好きな人に教えられながらするようなものだし案外すぐに出来るようになるかもしれない、英語も愛する恋人の言葉を理解しようとするとすぐ覚えられるみたいだし、チレイたん自身は魔法を使えないけど方だけど)
それでも、スウは妄想してチレイたんを妄想することにした。
そして、妄想によってポニーテールで水色の髪でジト目のメイド服を着た獣耳の少女が現れた。
「スウ、今から私と一緒に魔法を覚えましょう!」
(チレイたんキターーーーーーーーーー!! 妄想だけど)
自分で皮肉は言ったが愛するチレイたんに久しぶりに会え、歓喜した。
「もう、恥ずかしいのでそういうことを言うのはやめてください、それよりも、お婆様が帰ってきてしまう前にさっさと魔法の練習を始めますよ!」
(申し訳ございませんでした!)
「そんな畏まって謝らないでください、さあさっさと始めますよ」
(はい、わかりました)
そして、妄想夏風チレイたんとの魔法の練習が始まった。
「さあ、一緒に手を上に上げて、集中してください」
スウは、チレイたんのおかげで落ち着きながら手を上げた
「そして、イメージしてください、魔力を少し出すイメージを」
(はい)
そして、言われた通りにすると、体の中の何かが手から少しずつ抜けていくように感じた。
「そして、火をイメージしてください」
そして、スウは目を閉じ熱く燃える火を出来る限り想像した。
すると、掌が少し熱く感じる。
そして、目を少しずつ開けると、掌の上に火があるのが見えた。
(出来た!!)
と思ったと同時に火がすぐに消えてしまった。
「だめですよ、すぐに油断しては」
(すみません、でもありがとうチレイたんなんだかコツがわかった気がする。)
「それはよかったです。それに、火の魔法が出来たので次の魔法で少し休憩しましょう。あまり、無理をするのはよくないので」
(ありがとうチレイたん、僕のことそこまで考えてくれて)
チレイたんは照れくさそうに
「いえ、そんな大したことはしていません」
と言った。
(ああ~かわいいなああ!!)
「やっやめてください!! 帰りますよ!!」
(まっ待ってください!! すいませんでした。少し、愛が漏れてしまって)
「いくらあなたの妄想でも、あなたの記憶から出来ているんですから、私がそう言われるのが苦手なこと知ってるでしょう! もうっ!」
(すいません)
チレイたんは怒ったためスウは、すぐさまチレイたんに謝った。
そして、数分が過ぎた。
スウは、まだ赤ちゃんからかすぐに魔力が回復した。
「そろそろ、休憩もやめて魔法の練習を再開しましょうか。お婆様が帰ってきて見られたりしたら、驚いてしまうでしょうし」
(そうですね、それに火の魔法を使うことが出来ましたし。まずは、様々な魔法を使っていって、魔法のイメージを掴むようにしていきたいです。火以外にも色々と種類はあるそうですしね、最初は火でしたのでその対極の水の魔法を使ってみたいですね)
「わかりました。では、水の魔法を使ってみましょう。さっきと同じような要領で魔力を少しずつ出していくようにして水をイメージしてください」
スウは、さっきと同じような要領でイメージをした、そして手から何かが出てくるような感じがして、目を開けてみると手から水が零れていた。
(うわっ! ヤバ!)
「落ち着いてください、落ち着いて水を固定するイメージをしてください」
スウはチレイたんの言われた通りにイメージすると、水は手から零れず少しずつ丸く形を整え始めた。
「うまくいきましたね、いきなりのことでびっくりした時こそ、物事を冷静に見るようにすれば自然と何をすればいいのかが分かるようになっていくので、慌てないように心がけてください。それにしても数分でよくここまでできましたね、やはり前世の記憶があることで多少は手際よく出来るようになるのでしょうか。イメージもおそらく、妄想のおかげかもしれませんね」
(チレイたん! ありがとう、あなたはやはり俺の心の神だよ、それにここまでできたのはチレイたんのおかげだし、多分俺一人ではここまですることはできなかった、結局お婆様が言ってた2歳で魔法の訓練をする年まで魔法が上達することもないし、魔力も鍛えることが出来なかったと思います。しかも、今もまだ魔法を使ってるのに、さっきみたいに体が疲れた感じがあまりしません、きっと少しずつ魔力を取り込める容量が増えてきているのかもしれないですね)
「そうですね、でももう水の魔法はやめてもいいですよ、他にも色んな魔法が使えるので、余計な魔力を消費して、他の魔法が使えないのはもったいないです。なので、次は続けてどんな魔法を使うかを考えましょう」
チレイたんはそう言って、スウは、水の魔法をやめた。
(チレイたん、僕風の魔法で一回飛んでみたいと思う。なんせ前世で母さんが良く空を飛ぶ夢を見たといったのにもかかわらず、俺に限ってなぜか鼓膜をまち針で刺される夢や砂を口の中に詰められる夢や拳銃で心臓を何回も撃たれたのに死なない夢とか見たもんだから空を飛ぶ夢を見たことがなくて、だから一回でもいいから空を飛んでみたいと思ったことがあるんだよ。いいかな)
「わかりました。そうしましたら風の魔法を使ってみましょう。なので、作者が実際に見て、未だに思い出してしまうようなことを言ってしまうのはやめましょう」
(チレイたん、そんなメタ発言はやめような)
「すいません」
(いいんだ、さあ練習の続きを始めよう)
そして、風の魔法で空を飛ぶ練習に移った。
「では、風の魔法で浮遊するには自分の周りに風をまとう必要があります。そこからまず自分が宙に浮くように風を少しずつ下に噴射するようにイメージしながらやってみましょう、赤ちゃんの頃に移動を考えると、そのまま魔力を消費してしまいベッドに一人で戻ることが出来なくなってしまうので、そこはもう少し大きくなってからにしたほうがよさそうですね」
(はあ~やっぱり赤ちゃんの頃ということだけあって、出来ることにも限度があるものなんだな。まあお婆様に見つからないように練習するなら仕方ないか、てか俺なんでお婆様に内緒で練習してるんだっけ。なんか問題あったっけ?)
「さあ? お婆様に心配でもかけたくないからじゃないですか?」
(……多分それかな?)
「もう、自分のことなんですからしっかりしてください」
(申し訳ない)
そんな会話の後に、風魔法浮遊を行う。
(まず自分の周りに風を覆うようなイメージして、宙に浮くようにしたから風を噴射、そして、少しずつ浮いていくようにと)
そうすると、自分が囲いより少しずつ浮いていくことに気づいた。
(すごい、正直感動してる。ありがとうチレイたんこれで少しは自信がついて……)
「ただいま~スウちゃん大人しくして……」
スウが浮いているところにお婆様がちょうど帰ってきた。
(あっ、まずっ! いや落ち着け、こういう時こそチレイたんも冷静でいるように言っていたじゃないか、そうだ、俺はまだ赤ちゃんなんだ、怒られることはない。ならこれを利用すればただの天才だと思われるだけだ。囲いから出たわけでもないし、今のところお婆様に心配をかけるようなことはしていない。だから大丈夫だ。少しずつ、少しずつ降りよう)
そうして、スウは囲いのベッドの上にゆっくり降りた。
(よし降りれた、お婆様はどうだ)
するとお婆様は、目を輝かせ、
「すごいわ、まだ生まれて間もないのに魔法が使えるなんて、あなたには才能があるのね、私、すごくうれしいわ」
(良かった。お婆様、めっちゃ嬉しそうにしてる。もう隠れて練習する必要はないかな)
「そうですね、では私はこれで、魔力ももうそろそろ尽きそうですし、続きはまた明日にしましょう」
(わかりました。また来て僕を支えてください)
「もう、わがままなんですから、わかりました。これからもよろしくお願いします」
そのまま妄想チレイたんは薄くなっていく
そして去り際に、
「前世でも今でも愛してくれてありがとうございます」
と小声で言って消えた。
(チレイたんっ! 忘れるもんかよ、あなたのこと大好きなんだからさ! やっぱり俺はあなたがいないとだめだわ!)
スウは、少し涙を流しながら思った。
「あらあら、スウちゃんどうしたの、泣きそうになって? 我慢してるみたいだけど泣きたいときは、泣いていいのよ、私お婆様なんだからそれぐらい分かるのよ」
それを聞いたスウは、
「ああああああああああああああああああああああああああああ」
妄想のチレイたんとの別れを思いっきり泣いた。