2、私の場合
私ほど彼を愛して止まない人は居ないと思う。
もし彼のために死ねと言われたら死ねるし(あ、でも彼はきっと止めてくれる)、何より彼が一番だ。
それが例えイケナイ仲だったとしても。
一限はだいっきらいな英語でノートと教科書を開いて流し聞きしてる。私たちのクラスの英語担当の鈴木先生(35)は結婚してない淑女な先生で授業はものすごーく固い。はっきり言ってつまんないほど。
あー、早く国語の授業にならないかぁ。そうしたら先生、来るのに。
心の中でぼやいてから机に突っ伏す。暖房が入ってるとは言え教室の端っこはひどく寒い。
結局、今日は国語が無くって(知ってたけど)先生と会えるのは放課後のホームルームだった。朝よりすこしダルそうに入ってきた先生は男子を座らせてからぐるっと教室の私たちを見回してから軽く咳払いをする。
「んー、冬休み前をだからって浮かれるなー?明日からは掃除強化週間だからジャージ持ってこいよー」
その言葉に誰も反応しない。もちろん私も。一昔前のアニメやドラマなら、先生大好きな女の子は誰よりも元気よく猫なで声で挨拶をしながら手を挙げる。けどあれって逆効果で、なーんか必死すぎるから。私はもっと恋はスマートにやりたいわ。
でも、スマートってどうやるの?
机にぱふんと突っ伏してから机の木目を指先でそっとなぞる。
先生は明日の注意点とかなんか色々話してて、本当なら一言一句聞き漏らしたくないのに、なんだか頭の中はぼやけたまま。
好きって伝えるのは簡単だったのに、この先どうしたら良いのか全然分からない。
教室中を見渡せる黒板下の台に乗ってる先生と、その他大勢とおんなじ机に突っ伏すわたし。
その距離かますごく長くてほんと嫌になつちゃう。