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すごい兄とすごいロリコン

作者: 相口夏来

 「血の繋がった家族になんてことを言うんだ!」

 ああ、また言った。またそんな言葉を教室いっぱいに響かせて。

 私がそういう、人をやたらと煽誘する言葉が嫌いなのを、忌み、厭うのを知っていてこいつは使うのだ。

 とても使えた言葉ではない。


 そもそも、血の繋がりが何だというのか。同じような構造のDNAで出来ているからって、そんなに大層な繋がりと言えるのだろうか。そうであるとしたら、私はもう嘆くしかない。

 あの、あの妹と同じDNA構造を持っている事ですら辛いのに、それが世間一般に重要視されると思うともう気が気でない。


 料理は、お世辞にもうまいとは言えない。家族のよしみで食べたが最後、2日は動けなくなる。ほうきとちりとりを持たせるとゴミがむしろ舞い散るし、掃除機で何度ふすまに穴を開けたかわからない。化粧を教えろとせがまれた母が仕方なく一から教えても、結局は妖怪になりたいのかと一蹴される始末。というか、私がそう言った。


 そうやって、どれだけ妹の醜態を並べ立てても、友人はむしろますます厳しい視線を向けてくるだけだ。

 まず妹が居るだけで羨ましいらしい。それが、そんな無垢な行動をしているともなれば、愛でて当然、貶せば刺し違えるのも覚悟しているらしく、実に妹愛に溢れた同級生である。

 彼は私の呆れっぷりを、教室の真ん中で公然と非難する。

「可愛い妹じゃないか!」

「お前は次元を見誤っている。ここは3次元だ。縦と横と奥行きがある世界では、ただの迷惑な存在だ」

「じゃあ、オレにくれよ。幸せにしてやる」

「馬鹿野郎。このロリコン」

「妹を愛して何が悪い! そもそも、可愛いならなんでも許されるんだぞ? 知らないのか?」

「可愛いけどさ」

「ならどうして無碍に扱う」

「お前は今まで耳栓でもしていたのか。人間には知性や理性があり、それを発揮しなければ人間たりえない。いくらなんでも限度ってものがある」

「妹に人格の完全性なんて求めてはならない。可愛さだけを求めるんだ」

「ロリコンに聞くだけ無駄だったか」

「だいたい、お前が厳しすぎるんだ。3歳5ヶ月と17日の幼女に、料理なんかさせるなよ」

「僕はできた」


 妹持ちと少女性愛の論争に終わりはないようだ。

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