第一章第九話 無意識の構築。
少し、ルキ目線も入れてみました
そして兄さんの見よう見まねで扉に手を翳す。
何を呟いていたのかは分からなかったが、自然と言葉は生み出された。
「……術式、展開…対魔結界…」
呟くと扉の周りに淡く白い光を放つ蝶々が現れた。
私が翳していた手を真下に振り下ろすと、蝶達は徐々に記号や数字のような文字に変わり始める。
それらが一本の紐のようになり、術式は完成した。
「ま、真利亜…何で術式を……」
驚きを隠せないのか、兄さんは椅子から立ち上がって私を見つめる。
しかし、そんなことを聞かれても私には分からない。
ただ、無意識に身体が動いていたから。それだけで、他に理由はない。
兄さんの質問に答えるために、振り返ろうとする。
ぐらり、と。
首を動かした瞬間、視界が揺らぐ。
そのまま、意識は闇の底へと沈んでいった。
.◇. side ルキ .◇.
マリア様が、術式を解除…そして新たに構築した。
先ほど結界師殿と話した内容では、マリア様は術式について何も知らないはず。
やはり、"勇者の末裔"というのが関係しているのか。
「っ!? マリア様!」
そんなことを悠長に考えていたが、マリア様に視線を戻した。
マリア様の身体は車椅子の上で揺れ、瞳と刻印からは光が失われていく。
術式の構築で大分無理をしたようだ。
床に倒れる前に駆け寄り、その身体を支える。
相変わらず、見た目以上に軽いマリア様。
どうやら気を失っているだけらしい。
無意識に安堵のため息が漏れる。
結界師殿もマリア様の状態を知ると安堵していた。
「お部屋に寝かせてきましょうか?」
「あぁ、うん…お願いするよ」
力の抜けている状態の軽い身体を抱きあげる。
そしてリビングを後にし、マリア様のお部屋に行く。
中に誰も居ないのは知っているが、一応ノックしてから入った。
「…失礼しま~す……」
電気をつけ、術式だらけの部屋の隅に置かれた真っ白なシーツのベッドへマリア様を寝かせる。
無論、これは巫女に課せられた使命であり、私意は含まれていない…と思いたい。
「でも…無防備すぎますよ マリア様
ここに居たのが私ではなく、黒の刻印を持つ者達だったらどうするおつもりですか……」
これは単なる独り言。
別にマリア様を攻めているわけではなく、確認したかっただけ。
その後、数十分ほど経ってからマリア様は目を覚ました。
.◇. .◇.
無意識に術式を解除、そして構築…マリア怖い←