第二章 そして目覚める
――今は放課後、そして生徒会室。
とにかく憂鬱だ……
なぜかって?
そりゃ、あの副会長様に仕事を手伝わされているからだよ……
「あきら君、手が止まってるよ。ちゃっちゃとやってよね!」
「なんで俺が生徒会でもないのに、仕事をやらされてるんだよ!!」
「その質問何回目? はぁ……君が朝あんな事しなきゃよかったのよ!」
ダメだ……何回俺が「不可抗力だ!」って言っても無駄だな……
――遡る事1時間ぐらい前
やっと帰れるぜ。とりあえずトミカを呼んで帰るか
「おーい、トミカ帰ろうぜ」
「その呼び方やめてくれよ、そうだ朝の遅刻の件で呼び出しとかないのか?」
「残念ながらないぜ。ただ、アレをやらされるがな」
「アレか。そいつはご愁傷様だな」
俺とトミカが言っている『アレ』とは学校周辺掃除活動、まあ簡単に言うと奉仕活動だ。
下駄箱の前にはなぜか竹城怜がいた。
「じゃあな」
俺が竹城に挨拶して帰ろうとした瞬間に、襟をつかまれた。
「んぐっ! げほっげほっ……何すんだよ!」
「お前、いつの間に竹城さんと喋るようになったんだ?」
「まだトミカの前で喋ってないがな……まあ、朝んぐごご……」
「な、ななななんでもないよ。えーっと……」
「富崎だ。しかしいいのか? だいぶ苦しそうだが?」
「えっ? にぎゃー! だ、大丈夫?」
「あ、ああ……なんとかな」
「で、朝がなんだって?」
おいおい、さっき俺の口を塞いだのに無駄になるだろ……
「ちょっとあきら君借りてくねぇええええええ!」
そして、なぜか俺は生徒会室にいる
「まったくこの身長のどこから、あの怪力が繰り出されるんだよ……」
「身長がなんですって? ほんといまいち身長が伸びないのよね、あきら君の身長、私に分けてよ」
分けたら身長が同じになっちまうじゃないか。それに分けれないしな。
「そうそう、怪力じゃなくて、私の超能力の『パワーブースト』が発動したのよ。『パワーブースト』は一時的に力を上げる能力で、ほら朝にパンチだけで、コンクリートをへこませたでしょ。あれ能力が発動してたのよ」
「なるほどな……で、なんで俺がここにいるんだ?」
「私の仕事を手伝ってもらうためよ」
平然と言いやがったよ。この副会長様……
「断固断る! 誰がそんなの手伝うか。俺は帰るからな」
俺が扉に手をかけようとした時
「鍵、屋上の鍵置いていくなら帰っていいわよ……」
鍵はポケットの中にある。そいつを出せば、手伝いをやらずに帰る事が出来るが、それは同時に遅刻した時にサボる場所が無くなる事になる。しかし、出さなければ手伝わされるが屋上に行く事は可能だ。
どうする、俺よ……
「えーっと、手伝わさせてもらいます……」
「そう。じゃあ、これまとめてね」
目の前に置かれたのは、何百枚にも積まれた書類だった。
「……やっぱ、帰る!」
「帰れるものならね!?」
どういう意味かは、すぐにわかった。
扉には鍵がかかっていたのだ。
やられた。外から鍵を掛けられた……
ん? それじゃ竹城と二人きりって事じゃん!
「ね、言ったでしょ。あきらめて手伝いなさいよ」
そして今に至るわけだが……
一向に終わる気がしないこの書類を整理しているのだ……
「ほら、すぐ手が止まる!」
「すみせんでした!」
憎たらしく返しても何の反応も無い。
それか、冷たい視線を浴びせられる事も……
それから沈黙の中黙々と仕事をこなし、3時間後
「――終わったー!」
「お疲れ様。ちょっと手伝わせすぎたと思うから、何か奢ってあげるわよ?」
あの量がちょっとなのか……
「いや、奢ってもらうのは遠慮し――ぐぅ〜」
――なぜこのタイミングで腹の虫がなるんだ!!
「ふふ、あきら君の腹の虫は嘘はつけないみたいよ?」
「あ、えっと、じゃ、じゃあよろしくお願いします……」
何だこのなんともいえない敗北感は…
それからしばらく俺と竹城はファミレスに来ている。
しかし、竹城はファミレスの中をじっと見つめて入ろうとしない。
「入らないのか?」
「えっ、あ、そのこういう場所初めてなの……」
「なんでなんだ?」
「うん、まぁいろいろあるのよ……」
「――そうか、軽々しく聞いて悪かったな」
――くすっ
「な、なんだよ?」
「まだ何にも言ってないのに謝るんだ、って思ったの。くくく……」
こいつのツボはよく分からんな……
「で、入らないのか?」
「あ、そうだね」
――いらっしゃいませ……
なんだこのやる気のない声は、あれ? この声どこかで……
「「あーー!!」」
「お前いつからリア充になりやがった!」
「なんでこんな所でバイトなんかしてるんだよ!」
「ふたりとも、他のお客さんに迷惑よ……」
――俺の前にいるのはバイトの制服を着たトミカだった。
「あー! くそ、もう上がる時間だしな、もう少し時間があれば観察できたのに……」
「観察なんかするな! それにトミカが思ってるような関係じゃないぜ?」
「二人で仲良くファミレスに来てる奴に言われたって何の説得力もない!!」
「そうよ! 私がちょっと言いにくい事を無理やりやらせたからそのお詫びと言うかお礼と言うか……」
竹城、その言い方は富崎に勘違いを及ぼしかねないぜ……?
「何をされたんだーー!!」
「何にもされてないし、してもない」
予想通りの過剰反応だ。
いや内容を知らなかったらみんなこんな感じの反応なのか?
それからトミカに竹城が言った意味を教えたらようやく納得した……
まったく、ややこしい親友と副会長様だ……
突然、トミカが俺の肩をつかんで耳打ちした。
「明日必ず抹殺する……」
え? 俺、親友に殺されるの? ただ副会長とお礼って事でファミレスに来ただけなのに……
「それじゃ、また明日な……」
「お、おう」
「さよなら」
明日が思いやられるな。
俺と竹城は適当な席についてメニューを広げる
とりあえず安い物で、えーっと……
「俺、フライドポテトで」
「……。」
竹城はメニューを広げて悩んでいた…
「あきら君のオススメでもある?」
「うーん、オススメか……。あ、それなら、たらこスパゲティなんてどうだ? 安いわりに、けっこう美味いぜ?」
「ふーん、じゃあそれにするわ」
「んじゃ、店員呼ぶぜ?」
――あれ? ボタンがない? 面倒だな……
「すみませーん」
「はい」
「フライドポテトのチキンもり1つとたらこスパゲティを1つ」
「かしこまりました」
「あ! 後、ドリンクバー2つ追加していいかしら?」
――え? 自分で注文できるのかよ!!
「ドリンクバー2つ追加ですね」
「自分で注文できるんだな……」
「当然よ! バカにしてるの?」
「いや、こういう場所初めてって、言ってたから、てっきり注文もできないのかと思って」
――ガツン!
「ってぇ…… いきなり、なにすんじゃ!!」
「バカにしてたことにムカついたから……」
くそ……、こっちは親切でやってやったのに。
「あきら君が親切と思ってやった事は相手にとって親切とは限らないわよ?」
「なんで思ったことがわかるんだよ!!」
「顔に出てたからよ」
これは、いくら言っても無駄だな……
退き際も肝心ってな。
カッコ悪いけど……
しかし、さっきから窓の外からの視線(死線)を感じるのは……気の……せい……じゃ……ねぇええ!!
「ん? どうしたの?」
「いや、ちょっとシメテクル……」
――バキャ! グキャ! ドカッ!
「いやー、ちょっと害虫駆除してきた」
「そ、そう……」
俺が戻って来てちょうど、料理が運ばれてきた。
竹城はウェイターがいなくなるのと、ほとんど同時にパクッとたらこスパゲティを頬張った。
たぶん竹城も腹が減ってたんだろうな……。
「んー 意外とこういうのも美味しいんだね」
「だろ? ここにはちょくちょく来てるんだ。常連の俺が言うんだから間違いないぜ?」
「あきら君のフライドポテト、1つもらっていいかしら?」
「もちろん、いいぜ」
たかがファミレスなのに、竹城はうまそうに食べるよな。
きっと、こういう人がグルメリポーターに向くんたろうな。俺は不思議とまた機会があったら竹城を連れて来てやろうかなと思った。
――なんだかんだで竹城は、後から注文をし直して、結局そこで俺たちは晩御飯を済ましてしまった……
「いやー 意外とよく食うんだな」
「えっ……あ、うん。美味しくって、ついね。あはは……」
「俺は駅だけど? 竹城は?」
「私も駅よ」
そのまま特に何も話さず、無言のまま歩き続けた……
――うっ。なんか気まずいな……早く駅着かないかな……
ってか! 他人から見たら、やっぱり俺らって付き合ってるように見えるのかな?
俺はちょっと竹城が気になって横を向くとバッチリ目があった。
この時には駅に着いていた。
「えっと、星ってあんまり見えないな……」
――うわぁ、意味わかんねぇよ…
「そうね……私も星は好きよ?」
あれ? 普通に乗ってきた?俺が変に意識しすぎたのか……それはそれでバカみたいだけど……
「そうなんだ。あ、俺はこっち方面だから」
「私も同じ方面だけれど?」
電車の中ではまたファミレスに行くとか、生徒会の話をしていた。
「あ、私次降りるわ」
「えっ? 俺も次だけど……」
なんだか偶然にも家が近いってオチか?
まっ! そんな訳ないか。
――電車から降りると、朝のあの箱がまだ置いてあった。
なんとなく気になってその箱を持って帰ろうと思った……
「何をしてるの?」
「箱があったからそれを持ち帰ろうと思って」
「箱? どこに?」
「いま俺が手に持ってるやつ」
竹城は不思議そうな顔をして、首を傾げた
「何を言ってるの? 何もないじゃない」
「いや! きちんと持ってるよ」
なんだ? 俺にしか見えないのか?
「あきら君大丈夫? 家まで送っていこうか?」
――そのセリフは男のセリフだよ。
俺は心の中でツッコんでおいた。いやツッコむとこ間違えたな。
「大丈夫?」にツッコむべきだった。
「いいよ、あたりも暗いし……」
「そう? じゃ、私こっちだから」
「俺もだけど」
――また同じ方向……
まさか、な…… ここまで同じだということは竹城って俺の家の近くに住んでいたのか……なにせ俺の家はすぐ突き当りを右に曲がったところだからな
「俺は右……というか、もう俺の家に着いちゃったんだよな……」
「私は左よ、そういえばこの道路を挟んで校区が変わってたんだっけ?」
そう、ここまで家が近くて同じ学校に通っているのにまったく気づかないわけがない。まあ理由はさっき竹城が言ってた通りださっきの突き当りとか言ってた場所で校区が分かれる……
南区域と北区域……実は昔から仲が悪いらしいだから竹城の事も知らなかったんだと思う。
「そんじゃな、また明日」
「ええ、また明日。おやすみなさい」
「お、おやすみ」
「ただいま」
――俺の家には誰もいない……ってことはない、今日はいないみたいだけど俺の家族は、俺と両親の三人暮らしで親父は仕事で滅多に帰ってくることはない。母さんはどうやら夜勤らしい……両親が共働きだからって別に貧乏っていうわけではないぞ……
何にも不都合なく暮らしてるよ
――それにしてもさっき拾った変な箱開ける場所がどこにもないな……ん? 底になんだ? 変な形をしたくぼみがある……
それに触れると箱が開いた……
「なんだ? 石?」
箱の中に入っていたのは、まあ……石だ。深紅で透き通った感じのきれいな石だった……
俺が石を取り出そうとて触れた瞬間に石が……はじけた……?
次の瞬間だった俺は何かに頭を殴られるような激痛が走った……
――ここは……どこだ?
ん? 誰かそこにいるのか?
俺は誰かがいるほうに行ってみた。
そこにいたのは……俺?
突然、もう一人の俺が何かに触れた……
「え? 何やってるんだ?」
俺の問いかけは向こうの俺には聞こえていないらしい。
もう一人の俺が触れていたものそれは……女子……? もう一人の俺は次に「コピーアンドメモリー」と言っていた。
――何がしたいんだ? すると向こう側の俺がいつの間にか俺の後ろにいた……
『これはお前の能力だ……「接触」が発動条件になっている』
俺の……能力? そもそもお前は誰なんだよ……
『私はお前であってお前ではない』
俺であってあんたじゃない…? 意味が分からん
『時期に意味はわかる』
「って! なんで俺の心の声が聴けるんだよ!」
『言っただろう……私はお前であってお前でないと……そろそろ時間だ』
時間? 意味わかんねぇよ! もう少し詳しく教えてくれ、ここはどこなんだよ!
『ここはお前の意識の中だ……唯一私が生きられる場所だ』
もう一人の俺がそう言ったとき、俺は深い闇に落ちて行った……