02-06-03 君にこの風の音が届きますように
風音が死んだのは、修行場ではなくシェルランドの王城であった事を知る者は少ない。そして、国王やシェルランドを守る為に殺されたことを知る者も、本当にごく一部の人間しか知らない。
「あのね、おにいちゃん……あの日、私は王様に城に招かれていたの。私が会いたいって頼んだの。そしてその日……レンデルの人達が城を襲った」
「そんな、ありえないっ」
神楽崎は呆然と呟く。そんなこと、知らないと。
だって、風音は修行中に事故で死んだとメイザース家の人々は言ったのだ。一緒に同行していたというヒイラも。だいたい、城に襲撃があったなんて話も聞いたことが無い。まったく記録にないのだ。
「そうだね。だって私が頼んだんだもん。絶対に公表しないでって」
だから、実の兄の元にも真実は伝わらなかった。真実を知っている当事者たちは風音の為に真実を徹底的に闇に葬った。たとえ、誰が調べようとも出ないように決して書類に残さなかった。
「あの時期に、なにがあったか覚えてる?」
「……」
正直、神楽崎はその時何があったのかなんて覚えていない。風音が死んだ、もしかしたら殺されたのかもしれないと言うその想いに囚われて、周囲など見て居なかった。だから、いつの間にか戦争が終わっていた時は驚いていた。
そう、戦争が終わったのだ。風音が殺される前に起こった白蓮の大虐殺が原因となって。
「白蓮の、大虐殺……?」
だが、なぜそれが関係あるのか神楽崎には分からない。風音も母も父も、シエラル王国とは無縁の場所にいたはずだ。知り合いなども居ない、シェルランドもシエラル王国と親密な訳でもない。
「あの虐殺でシエラルは戦争を辞めるようにって圧力をかけてみんなが従った。でも……あの時……もしも敵国によって国王が殺されたり城を占拠されていたりしていたら……どうなったと思う?」
神楽崎は言葉を失った。
まさかという思いでいっぱいだった。
「……たぶん、シエラルだけじゃ止められなかった。まとまりかけていた停戦なんて忘れて、また戦いが起こっていた」
「なんだよ、それは……風音は……お前は……国王を守って、戦争を起こさないために死んだって言うのかよ!!!」
風音は何も言わなかった。
ただ、じっと神楽崎を視ていた。
「そうだ。すまなかった」
どこからともなく、青年の声が響いた。
雪を踏みしめて三人の男が現れる。
少し苦しげなグラント、そして彼を支えるエルバート、怪我なんてしてないとばかりに平然と佇むヒイラ。
苦い顔をしながら、グラントはまた謝った。
「すまなかった。君に、言うべきだった。風音殿が死んだ理由を。……これ以上戦いを長引かすことはできないと、秘密にしてしまった罪を」
「だが、きっと真実をあの時教えたとしても嘘だと話を一切聞かなかっただろうね、君は」
辛辣に言うのはヒイラだ。彼も風音が殺された現場にいたのだ。だが、神楽崎に同情などしない。彼はなにもかも聞くことを拒否した。メイザースを拒否し、そしてこのような凶行にいたったのだ。同情も謝罪もするつもりはない。
「オレは……でもっ、メイザースの奴等は風音をっ」
無理やり風の愛し児としての力を示せと、アルトよりも強く慣れと強制した。そう続けようとした神楽崎だったが、またしてもしれは風音によって否定される。
「おにいちゃんは嫌いだってずっと拒否していたけどね、でもみんなほんとは優しかったんだよ。シルフさんとお母さんがいなくなったのはメイザース家のしきたりとか古い習慣のせいだって分かってた。でも、それをいままで正義だって信じていた人達にはどうにもできなくて、でもどうにかしようとしていたんだよ。だからわたし、がんばろうって思ったの。わたしががんばって当主になって、メイザースのしきたりを、古臭い習慣も概念も、全部変えてやろうって! あのくそじじいもくそばばあどもを変えてやろうって!!」
「……だから、国王や私達にどうすればいいのか助言を求めて来たんですよね」
優しい声でグラントは続ける。
メイザース家のしきたりや強さを求めるやり方が嫌で月剣にその身を寄せていたグラントにもその話は来た。
確かに修行はつらい物だったが、それだけではない。部屋に閉じこもってメイザースに不信感を募らせていた神楽崎は知らない。メイザース家が少しずつ変わって行っていた事に。
風音は、メイザース家を変えようとしていたのだ。
「そんな、嘘だっ」
神楽崎は否定する。
そうしないと……いままでやってきたことは何だったのか分からない。
「嘘だ! 嘘だ!! 嘘に決まっている!! そんな……こんなことって……」
メイザースへの憎しみは。この思いは。真実を知った所で、もはや手遅れだ。
メイザースの一族をこの手で殺してしまったあとなのだ。
メイザース家に集っていた者達を女も子どもも関わらず、殺しつくした。
「そんなっ」
弱々しい声で神楽崎は何度も否定した。
膝をつき呆然と地面に腕をつく。
ぼろぼろと滴が落ちて地面を濡らす。
「うそ、だ……」
風音は戦争をこれ以上長引かせないために、いらない火種を闇に葬った。
なら、神楽崎は?
セレスティンとして争いの火種をあらゆる場所に巻き、そして犯罪に手を染めた。
風音が、犠牲になったことも知らずに。
「…………嘘だ!!」
ふらふらと立ちあがった神楽崎は漆黒の風を巻き起こすと、逃げるように空へと向かう。その後を、躊躇わずにアルトは風を纏って追いかけた。
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だありえない、嘘だ、うそなのだ……混乱した頭で神楽崎は考える。
こんなの、ありえないと。
だが、心の奥底ではあの風音は本物で、きっと言っていた事は真実なのだろうと思っている。
あまりの事に耐えきれなかった。
空を飛んだはいいが、ふらふらと力を制御できずに神楽崎は間もなくして墜落した。
体中の力が抜け、立っていることもできない。
「は、はは……ははは……」
今まで何をやっていたのだろうと涙が頬を伝って落ちる。笑うしかなかった。
もはや、何もしたくなかった。セレスティンに帰ることも……出来なかった。
風音は争いを止めようとしたのだ。兄である神楽崎がこれ以上争いを起こせば、きっと風音は悲しむだろう。
もういっそのこと、死んでしまった方がいいのかもしれない。そんなことを考える。
ふと、音がして彼はその方角を見た。
追って来たアルトなのかと思ったのだ。だが、違った。
「お前……あぁ、そうか……プルートはなんでもお見通しってことか……」
無言で佇む死神の様な彼に、神楽崎は笑った。これで、死ねると。
アルトが神楽崎の元に追いついた時、すでにそれは終わっていた。
「えっ、かぐら、ざき……?」
神楽崎が雪の上で倒れ伏していた。
呼びかけるが、彼は動かない。周囲の雪が赤く染まっていくだけだ。
まさか、ありえないとアルトは近寄る。
風音に魔力をかなり渡してしまったため、大きな魔術はもう使えない。アルトは走る。
「え……ねぇ、神楽崎っ」
もう一度、強く呼びかける。返事は無い。
まさか、死んでいるはずが無いと、確認しようとした。
だが、斃れた神楽崎に近寄ることを許さないとばかりに、彼の前にフードをかぶった者が立ちふさがった。
アルトは斃れた神楽崎に呆然としてそこにいた人物に気づかなかったのだ。
「あなたがっ、神楽崎を!!」
「……裏切り者には死を。彼は暴走しすぎた。もはや、セレスティンの思想とは遠い場所にいる」
そう言った彼に、アルトは言葉を失う。
知っている声だった。
絶対に忘れるはずが無い。だって、彼は……。
「マコ、ト!!」
彼は、玻璃を殺したのだ。
怖い、でも、退けない。憎い、どうして裏切ったんだと叫びたい、けれどこれ以上声が出ない。
歯を食いしばり、アルトはマコトを睨みつける。
対する彼は、フードを脱ぐとアルトを平然とした様子で見た。
「今回は彼を殺しに来ただけだ。音川と戦うつもりはない、動くな」
「っ!!」
マコトは無防備に背を向けると、神楽崎の腕を掴みゆっくりとその身体を持ち上げる。
まるで、こちらのことなど気にしていない。だが、アルトは体が動かなかった。
どうしてなのか分からない。必死に体を動かそうとするアルトをちらりとマコトは見る。が、すぐに前を向いてしまった。
そして、神楽崎を引きずりながら歩きだす。
「マコトっ! 待ってよ……神楽崎を殺したのっ?! ようやく、ようやく風音ちゃんの声が届いたのに!」
だが、マコトは振り返らない。
「なんでっ、答えないの! 私は、貴方を許さない!! 絶対……ぜったいに」
玻璃を殺した、さらに神楽崎まで……アルトは涙を溜めながら叫ぶ。
サイはマコトをぶちのめしてでも捕まえて話を聞きたいと言った。でも、話を聞くまでも無い。彼は、またもやアルトの目の前で凶行を繰り返した。
「アルト……」
追って来た雷華が、口元に手を当ててアルトとマコトを見守る。
「絶対、許さない!!」
「なら、次はその手の震えを止めることだ」
手が震えていることをいい当てられ、アルトはその手をぎゅっと握りしめる。
弱みを見せたくない。
「……日野は、無事だ。それよりも、本家に居る日野の姉を……見るべきだ」
「……」
思わずマコトを直視する。
何を考えているのか解らないその目は暗い紫紺に濁って見えた。
なぜ、そんなことをマコトがいうのかがわからない。
アルトは出流の姉である泉美を思い出そうとする。
そういえば、最近全く会っていない。
当主就任に向けてごたごたしていたとはいえ、お隣さんだと言うのに泉美の姿をまったく見ていないし、泉美もアルトの家に訪ねて来ることは無かった。出流誘拐の話はすでに泉美の元に届いているはずだ。
「なにを、知っているの?」
「……せいぜい気をつけることだ」
そう言うと、マコトは姿を消した。
文字通り、まるで透明になったように。すうっと、その場から消えた。
神楽崎と共に。
結局、メイザース家は数人を残して殺された、そして神楽崎はマコトによって殺された。
アルトは結局、誰も救えずに事件は終わりを迎えようとしていた。
シェルランドの王城で、アルトはゼルシアに招かれて滞在していた。ヒイラもいるが、彼はアルトを避けてあれ以来会ってはいない。
事件の結末に気落ちするアルトに、ゼルシアやグラントは礼をいい、励まそうとした。神楽崎は風音の言葉を聞き、そして真実を知ることができた。それはアルトがしたことだと。
だが、アルトは神楽崎がマコトに倒されて引き摺られていく事を見ているしかなかった。
二日後の午後のことだった。そろそろ家に戻らなければとアルトが準備していた時、彼は訪れた。
「アルトさん、よければお茶でもどうですか」
そう誘ってきたのは、グラントだった。
連れられてきたのはグラントが滞在している一室。そこには、先客がいた。
彼は、グラントの後ろから来たアルトを見ると、思わず席を立ち、怒ったようにグラントを見た。
「ヒイラ、おにいちゃん……」
「っち」
グラントがなにやら耳打ちをすると、ヒイラはしぶしぶと言った様子で座りなおした。アルトのほうは向かないようにあらぬ方向を向いて。
そんなようすをグラントは苦笑する。
「さてと、アルトさん……いろいろ迷ったんだけど、一つ、君に伝えるべきだと思ってね……」
アルトに席を勧めると、グラントは自分でお茶を入れ始める。慣れた様子で作業しながら彼は話す。
「四年前の事件……風音さんが無くなった時の話を」
「でも、私がそれを聞いていいんですか?」
今まで秘密にしてきたことだ。そのせいで神楽崎が今回の事件を起こしてしまったと言ってもいいだろう。アルトはメイザースの血を引いているとはいえ、部外者だ。
「もう四年も前のことだ。それに、君はむやみに周囲に話したりしないし……同じアーヴェの人間だろう?」
「……はい」
グラントとヒイラは所属する場所が違うとはいえ、同じアーヴェの仲間。ということなのだろう。グラントはたいした問題じゃないと言う。
「あの事件は戦争を続行させたかったレンデル帝国の過激派がシェルランドを襲った、と言う事になっている」
グラントは紅茶を配りながらいう。その表情は硬い。
「だが、違う」
「えっ?」
隠されていた事実が、さらに嘘だったのかとアルトは驚きに思わず声をあげた。
ヒイラを見ると、当時者であったヒイラも既に知っていたことなのだろう、平然としている。
「私達月剣の者達が調べたところ、多くの者はレンデル帝国の軍人だったが、数名軍人として記録のないモノが居た。そのうちの一名が……セレスティンに所属している者だとつい最近分かったのだ」
「……まさか」
「あぁ、おそらく……。彼等は、戦争をさらに長引かせようとしたのだ」
それが事実なら、なんてことなのか。アルトは呆然とグラントの話を聞いていた。
神楽崎は、風音が死ぬ原因となったシェイランド襲撃を裏で手を引いていた者がセレスティンだと知らずに、メイザース家を恨んでセレスティンに入って勘違いの復讐をしてしまったのだ。
「セレスティンに踊らされていたんだよ、あいつは」
ヒイラが冷たくいう。
「そん、な……そんなことって……」
あんまりじゃないか。酷すぎる……。アルトは唇を噛みしめる。
「で、暗い話はここまでにしましょう。折角入れた紅茶が冷めてしまうし……もうこれは終わってしまった事。今は先を見据えるべきですから」
「……」
正直、過去のこととアルトはわり切れないが、グラントは話題を変える。
そんなに簡単に終わらせてしまっていいのかと思うが、グラントとしてはこれ以上情報を渡すつもりは無かった。
「それで、アルトさんは音川家の当主として就任したと聞いたんだけど……ということは、ちゃんと風破さんと呼んだ方がいいのかな」
「えっと、アルトで慣れているのでどちらでも構いませんよ」
「そう。じゃあ、アルトさん、当主就任おめでとう。お祝いに……しっかりと話をしないといけないと思ってね」
「ありがとうございま、す?」
お祝いに話とは何なのだろうとアルトが首をかしげていると、なにかに気づいたのかヒイラが顔色を変えてグラントを引っ張って何事か囁く。しかし、グラントはまるで聞いてないとばかりにアルトを見たまま話し始める。
「ヒイラ君がメイザースに来たのは、君の為だ」
「グラント! そんなことがあるわけ無いだろう! そもそも、もともとオレはメイザース家に来る予定だったんだ!!」
いつもの冷静さなどかなぐり捨てて、ヒイラは怒鳴った。しかし、グラントは笑って首を振る。
「……ヒイラ君、そろそろ素直に言ってあげればいいじゃないか。君が音川家に帰らなかったのは、可愛い妹には選択肢を作ってあげたかったからだって」
「勝手なことをいうな!」
「妹がどんな道を選んでも大丈夫なように。自分はもともとメイザース家に行く予定だったんだから、妹が音川を選びやすいように」
「グラント!!」
「本当は心配で心配で、妹が神楽崎と戦うなんて聞いていても立っても居られなかったくせに」
「グラっ、おまえなっ!!」
いつも澄ました顔をしたヒイラがそんな表情をするのが本当だと言っているようなものだった。
「そう、だったんだ……」
呆然とアルトは呟いた。
アルトはずっと自分のせいでヒイラは家を出て行ってしまったのだと思っていた。もともとメイザースに行くはずだったヒイラを押しのけ、風の愛し児であったがゆえにメイザース家に望まれたアルトがいる音川家が嫌なのだと。
それは、思い違いだったのだ。
アルトがいたから、音川家からヒイラもシルフも、居なくなったのだと。
アルトが原因であることは変わりないが、アルトが嫌だったのではない、その本当の理由が、嬉しかった。
「な、なぜ泣くっ」
「え?」
ヒイラが慌てた様子で聞いて来る。そう聞かれるまで、アルトは気付かなかった。
そっと目元を拭うと確かに涙がたまっていた。
「……えっと、どうしてかな」
その後、アルトはシェルランドに一晩だけ長居することになった。ヒイラとこれまでの時間を生めるように……少しだけ話をして。
アルトの元に、小さな白い鳥が現れたのは、さらにその数日後のことだった。
エルバートから水晶を通して事件の顛末を聞いていたシルフは、ありがとうと言うと通信を斬った。
辺りは暗く何があるのかまったく分からない闇に包まれている。遠くで、ポツリポツリと明かりがあった。
シルフは深い森の奥にある樹齢何百歳にもなる古木の上で太い枝に座りあたりを見ていた。
ふわりと風が吹く。優しいそよ風に思い出すのは年の近い妹とその娘と息子。
そして、いつの間にか大きくなっていくアルト。
「可愛い子……貴女の風は私の願いと希望だった」
アルトは神楽崎との戦いのとき、自らを『すべてを破壊する風』と評したのを風達のうわさで聞いた。でも、それは違うとシルフは微笑む。
アルトの……風破という名前を考えたのはシルフと玖朗の二人だ。きっとこの子は音川とメイザースの争いに巻き込まれてしまうのだろうと、考えて考えて……二人で決めたのだ。
「この閉ざされた世界に吹きこむ新たな風、メイザースの因縁も音川の風習も全て吹き飛ばして破壊する新たな時代の子」
きっと、アルトならば大丈夫。
神楽崎を救える。音川の……そして日野の苦しみも、きっと変えてくれる。
きっと……。
そう信じて、再び空へ飛び上がった。
ならば、セレスティンの――いや、プルートのたくらみを潰すのは自分の役目だから。
かつて、目の前で失われた命を助ける事の出来なかった少女が居た。彼女はそれがゆえに地上に囚われ続けている。そんな彼女の見られなかった結末を、見るためにシルフは生きてきた。そして、今は沢山の理由を持っている。
だから、戦わなければならない。――世界をこれ以上壊させないために。
暗い夜、シルフの姿はすぐに見えなくなった。
靴の音が静かな廊下に響く。
白い廊下を歩く黒い人影があった。
フードを深くかぶった彼は、よく見ればところどころ血に汚れている。自分の血ではない。他人の返り血だ。
彼は、目的地に着いたのか一つの扉の前で止まる。
扉を叩くと入ってくれと声がする。
無言で彼は扉を開けて中に入った。そこには、プルートがいた。
「さて、どうでした?」
「お前の予想通り、神楽崎は音川アルトによって戦闘不能に。セレスティンの目的であるこの世界への反逆に対して疑問を持ち、これ以上駒として使う事は不可能と判断して、殺した」
「わかりました」
にこやかにプルートは報告を聞く。つい先日まで共に戦っていた仲間を殺したと言う報告だというのに。
いや、きっと彼にとってセレスティンに居る者達は別に仲間などではないのだろう。ただの、使い勝手のいい道具。
消耗品だから、裏切って殺されても、べつに変わりはいると気にする事も無い。
「……ところで、そろそろみたいですよ」
さっさと部屋に戻ろうとしていたマコトに、プルートは声をかける。
「……」
「あなたの出番。もう、そろそろみたいですよ」
「そう」
たいして気にした様子無く、マコトは頷くと勝手に部屋を出て行く。
閉まった扉を、プルートはじっと見ていた。楽しくて仕方ないとばかりに。
「くくっ、そう、もう少し……もう少しで、お前を殺せる……ようやくだ」
歪んだ笑みは狂気を孕んでいる。
彼は、何度も嗤った。
「何百年も待ち続けたんだ……なぁ、計画が成功しようとしまいと、その時がお前の死ぬ時だ……偽物のオベロン」
今月も二回更新をしたいと思います。
アルトと神楽崎の戦いはこれにて終了です……次はカリスとテイルの話。
黒の騎士団とマコト、そして灰かぶりのはなしになるかと。




