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騙る世界のフィリアリア  作者: 絢無晴蘿
第二章 -神騙り-
75/154

02-05-03 まがつもの

その日、日が昇りきり、そしてまた日が落ち切るまで彼女は部屋から出てこなかった。



星原本部、アヴィアの庭。クイーンの称号付きであるラピスはようやく話し終わった内容を思い出して頭を抱えた。

部屋には誰もいない。先ほど地の大精霊代理の瑪瑙が出て行ったばかりだ。

そして、アヴィアの庭には現在前地の大精霊グランドアースの子らである翡翠、琥珀……そして晶が滞在していた。

グランドアースの死後、彼等は星原に保護されることとなったのだ。翡翠と琥珀はどうにでもなる。この二人は精霊で在り、自由に生きられる。しかし、晶は違う。

精霊と暮らしていたとはいえ人間であり、彼が生きて行くには人間の世界を知らなければいけない。これまでグランドアースの庇護の元に育ち、彼は人の世をあまり知らないのだ。

このまま人の世に居るのならば生きる術を、翡翠と琥珀と共に生きて行くのならば、瑪瑙がその下準備を整わせるまでの期間の保護を。それは、グランドアースからの星原の依頼の一つだった。

彼等がいつまでアヴィアの庭に居ることになるか、まだ分からない。その間、三人は星原の仕事を手伝う事になるだろう。

それはいい。

「アイリ……」

彼女は、無事帰還してから一度も部屋から出てこない。

行方不明、連絡もつかない、その間の星原襲撃……もしやセレスティンに殺されたのではと心配していたのが前日。それが無事だと分かり、喜んだのもつかの間。まさか、この様な帰還になるとは思っていなかった。

アイリの複雑な事情を知っているラピスは、心配していた。

アイリは自らの力を嫌悪している。

呪詛に特化した能力。逆に言えば呪詛返しなども得意で在り、それで今までの罪を贖って来た彼女にとって呪詛返しを失敗したということは贖う事が出来なかったということである。

「大丈夫、なのかしら……」

ティアラは星原の襲撃事件の事はまだ言っていないと言う。こんな状況のアイリにこれ以上追い打ちをかけるような報告はさすがに時間を置いて話したいというティアラの考えに、ラピスも同意した。

まだ、伝えられない。

アイリが居なかったその間にあった悲劇を。

霧原誠が裏切り、千引玻璃を殺したという惨劇を。



暗い部屋に独り、アイリは居た。

見なれない部屋。いつの間に星原の本部は変わってしまったのだろうか。

一ヶ月ほど居なかっただけだと言うのに、星原は様変わりしてしまっていた。

部屋には相部屋であるティアラの物が転がっている。アイリの私物は箱に詰められている。

以前からアイリが使っていたシーツがかけられていたベッドに横になり、アイリは目をつぶっていた。

アルトも出流も、テイルともまだ会っていない。あのうるさいカリスなら来るかもと思ったが、彼も来る様子は無い。本部の中の様子と言い、なにかがあったのは明白だった。

それをティアラに聞きたい。だが、今は独りでいたかった。

矛盾しているかもしれない。だが、あと一晩くらいは、独りでいたかった。

目の前で、また、助けられなかった。

呪いに侵された精霊を、助けられなかった。

どうすればよかったのだろう。マコトならなにかいい案を出してくれただろうか。いや、彼でも無理だっただろう。なんせ彼自体……いや、今は辞めておこう。

どうすればよかったなどと過去のことを考えるより、今は先のことを考えるべきだ。

「でも、な……」

それでもわり切れない。

ふと、アイリは顔を持ち上げる。

部屋唯一の扉を、誰かが叩いたのだ。

「アイリさん、いいですか? 扉越しで構わないので、よければ聞いてください」

扉越しから声が聞こえて来る。彼は、アイリの返事もまたず続けた。

「本当に、ありがとうございました。貴女が居なければ、きっと母はもっと苦しんで逝ったはず……」

しかし、結局は死んだのだ。救えなかったのだ。

アイリは目を伏せる。

なんで助けてくれなかったのだと罵られた方がましだった。

「それでも、貴女は自分を攻めるんでしょうね……。でもね、これだけは本当なんです。貴女が時間を作ってくれたから、フィーア様と母は再会できた。フィーア様は事情あって、神域からなかなか出られないらしいです。呪詛に気づいた時、どうがんばってもフィーア様が母の元に来る前に母は呪いによって死ぬだろうと絶望していたんです。でも、会えた。母は、満足して、救われて、逝ったと思うんです……」


ほんとうに、そうだろうか?

アイリには分からない。

けれど、本当にそうならば……本当ならば……。


ぽたりと雨が落ちる。

ぽたぽたと、何度も。

嗚咽を漏らしながら、アイリは目を閉じる。


自分は、救えただろうか。

いや、救えはしなかった。

だが、心は救えただろうか。






世界の中心。世界樹の神域と呼ばれるその場所に、精霊達が集まっていた。

世界樹からは少し離れた場所で。そのすぐそばには泉と、地下へ続く洞窟がある。その洞窟を下ると、地底湖があると言うが、ここ数百年はどの精霊も中へ入ったことは無かった。

集まっていた大精霊のうち一人が、震える声で呟く。

「さきほどの光は、アレか」

精霊達を束ねる者、彼等が、恐怖に色を失う。

その意味を知らない若い精霊達はただ、古き精霊達が震えるのを何事かと怯える。

そして一人、もう一人、さらに一人、悲鳴に似た叫びが響いた。

「うそだ」「ありえない」「なぜ、アレがいるんだっ」

「そんな、アレは」「違う、アレのはずがないっ」

「そうだ」


「「「「アレは死んだのだ」」」」


彼等の視線は自然とある場所へと集中する。

地底湖へと続く小さな洞窟。そこへ入ろうとする者は誰もいない。その先には入ってはならないと言う無言の了解が彼らにはあったからだ。

「探して、今度こそここに封じ込めなければ」

そう言ったのは誰だったのか。

ただ、その言葉は多くの精霊の耳に入り、同意の声が出た。

「まさか、死んでいなかっただなんて。いっそ、死んでしまっていれば……」

「さすがにそれは不謹慎ですわ」

誰かが『彼』の死を望み、そして誰かがたしなめる。


それを端で聞いていた雷を司る大精霊である雷華の心境は複雑だった。


雷の大精霊雷華。彼女が大精霊となったのは神話の時代と呼ばれたその時より少し後のことだ。たしか、現在進行形で話題となっている『彼』が問題を起こす以前に発生して当時の雷の大精霊であるティアットに拾われた。だから、精霊達が恐れている理由を知っている。

地底湖に眠るのは、死んだはずの『精霊もどき』だ。

詳しい話は当時の大精霊以外伝えられなかったが、これだけは知っている。

『精霊もどき』はこの神域に黒の女神スフィラを招きいれ、世界樹を滅ぼそうとした。

その時の戦いで『彼』は呪いに侵され死んだ。その遺体が地底湖に眠っているはずだった。

だと言うのに、『彼』とよく似た力の波動を昨晩、多くの精霊が感じた。

本当に一瞬、聖フィンドルベーテアルフォンソ神国と呼ばれる人間の国の首都から。突如天を貫くかのように立ち上った光から。

正直、雷華は『彼』のことをこんなに過敏に反応しなくてもいいのではないかと思っている。神話の時代に封印された彼がいつの間にか逃げ出していたとして、彼は今何をしたと言うのか。べつに精霊達に接触する事も世界中に不利益になりそうなこともしていない。今のところ。だというのに、彼等は過剰に反応し過ぎではないのかと雷華は思うのだ。


「もう、やめぬか」


恐怖に染まっていた精霊達の間に入ってきたのは、凛とした声。

闇の大精霊咲闇だった。

彼女もまた雷華同様浮かない顔をしている。

彼女は雷華と違い、『彼』が封印された時も大精霊の一人として存在していた。『彼』の事をよく知っていた。

「あの子は、悪意があった訳じゃない。我らが害し、閉じ込めた故に逃げ出し、無知ゆえにスフィラをここに招き入れた。悪いのは、悪は我らであろう? 今のところあの子は我等を敵視していない。そっとしておけばよいだろう」

「……まて、咲闇。その言い分からして、もしやアレが生きていることを知っていたのか?」

バルジークが鋭い視線で問いかける。彼を包む周囲の炎が、その心に反応するかのようにメラメラと燃え上がる。

背の低いマナが迷惑そうにバルジークを見上げていた。

「……あの子は死んだ。それ以上言う事は無い」

対して咲闇は冷静な様子で応える。

「だがっ、実際にオレ達はアレの力を感じた!!」

「あーもう! まどろっこしいわね! とにかく、本当にまだ封印されているのか視て来ましょうよ」

マナが地底湖の入口を指して叫んだ。確かにそうだとフォントやセルシアスが頷き、他の精霊達は降りて大丈夫なのかと顔を見合わせる。

なんせ、何百年と立ちいりを禁止された場所だ。

大精霊だけが見に行く事になると、力の弱い精霊達はほっとしたように表情を緩める。

「さあ、行きましょう」

マナが先頭を行く。

地底湖への道は長い。暗い洞窟の中を進む。

バルジークやフォントの炎と光で辺りは明るく照らされるが、濃い影が至る所に在る。

そして、風が吹いた。

狭い通り路を抜けると場所が開ける。

数百人が入れそうなほどの大きさの地底湖が広がっていた。

ぴちょんと水滴が落ちる音が静かに響いている。そして、地底湖の中心辺りに、亡霊が居た。

「あれは……」

声に気付いたのか、白い影がすっと消える。だが、彼等は見た。たしかに人間の霊だ。

「これ、視て!」

マナが地底湖の底を指差した。水底をよく覗き込む。と、暗い奥深くに深い亀裂が幾つも入っていた。

地底湖に安置されていたはずの『彼』の姿はどこにもない。

「まさか、この亀裂から逃げ出した?」

「くそがっ、一体いつだ!」

「……おそらく、十数年前の戦争時でしょう。あの頃、神域が不安定で何度も崩れかけ地震が起きた。その時に……」

彼等が口々に話し合う中、咲闇は何も言わずに一番後ろを歩いていた。

地底湖にいた亡霊、彼女の事はよく知っている。まさか、彼女が関係していたのかと考えたが、それは無いだろうと否定した。

「……シェルリーズ、居るのか」

『……久しぶりです。咲闇様』

小さな声が咲闇の周囲に響く。

『もう少し、ごまかせると思っていたのですがね……フォント様の御推察通り、あの子は以前、地震が起こったとき、水底の亀裂に流され行方が分からなくなりました。でも、あの子は死んだの。だから、もう……もう、死んでまでここに縛りつけられているのは見たくなかったから、私は……何も言わなかった』

「同意見よ」


精霊達の話し合いは何時間も続いた。

死んだか死ななかったのか、そんな不毛なことばかり繰り返す。

雷華が気付いた時、すでに咲闇の姿は無かった。






四番目のジョーカー、ファントムはふと顔をあげて遠い場所を見た。


彼が居るのはとある酒場。と言っても、本業は酒場では無く情報屋。

そう、ここは三番目のジョーカーがよく現れると言う情報屋バラッド。

少し栄えた町に一件はありそうな小さいながらも凝った作りのバーだ。

店主のレガート・レントは招かれざる客に困惑しながらも注文された酒を出した。

「どうしました?」

質問を投げかけて来たファントムが突然あらぬ方向を見て固まっているのを見て、思わずレガート・レントは声をかけた。

「いえ。どうやら私の同朋がなにやらやらかしたらしく……」

ファントムはその後もその方向を見ていたが、やがて諦めたようにため息をついて酒をあおる。

「なにごとも無ければいいんですけどね。それで、どうなんでしょうか」

「セレスティンの情報についてですか」

そう、ファントムがこの情報屋に来たのはセレスティンの情報が欲しいと言う理由からだった。

表向きの理由は。

「えぇ。ここは三番目のジョーカーも使っていると聞いて来たのですが」

なにやらニコニコと何を考えているのか分からない笑みでファントムは聞く。

レガート・レントもまた、表情に感情を出さないようにしながらあやふやな返答をする。

ファントムの考えていることが分からなかったからだ。

彼はセレスティンの情報をと言っているが、それ以外の理由があるはずなのだ。彼はこれまでセレスティンに所属し、独自のルートの情報も持っている。それなのに、なぜわざわざレガート・レントの元へと来たのか。

「……具体的には、どんな事を」

「そうですねぇ。たとえば……裏切り者と言われている霧原誠のこと、とか?」

「……はぁ。彼の事についてはこちらはなにも情報を持っていませんよ。せいぜい、四年前にセレスティンに拾われて、二年間黒騎士で暗殺者をしていた、くらいしか」

「へぇ」

何もかも知っている、こちらのことなどお見通しとでも言うようなファントムの笑みにレガート・レントは内心やっかいなのが来たとため息をつく。正直、レガート・レントはあまりセレスティンにもアーヴェのジョーカーにも関わりたくはないのだ。

「これ以上は、ちゃんとお代を払ってもらわないと。たとえば……貴方がなぜセレスティンを裏切ってアーヴェについたのか、とか」

「ん? そんなことでいいんですか」

まさか、ここまで簡単にファントムが話すとは思っていなかったレガート・レントは少しだけ驚きながらその先をうながした。

「別に、セレスティンに思い入れなんてないし、それよりも優先させたい事があっただけですよ」

「それだけで、セレスティンを抜けたんですか?」

「ええ。だって、私にはそれだけしかないので」

あっけらかんとファントムは言う。

「……セレスティンは裏切り者を許さず、逃げた者は誰でも追手に掛けられて殺されると聞いてますけど」

「あぁ。よく来ますよ。まあ、私を殺すなんて寝言は寝て言えっていう話ですかね」

からからと彼は笑う。仮面越しだが、なんとも表情豊かな人だなんてレガート・レントは思った。

「…………因みに、優先させたい事とは」

「愚かで愛おしい友人からのたった一つの頼み事ですよ。本当に彼は馬鹿だから、一つだけ願いを叶えると言ったら、あろうことか自らの親友の弟妹の事を守って欲しいだなんて抜かしたんですよ。その前にどこにいるのか、そもそも生きてるのかすら分からないってのに」

「それは、一体誰なんですか」

「友人の事ですか? あぁ、私の友人は……夢条(ひびき)といいましてね」

「……」

にやにやと笑う彼に、レガート・レントは固まった。

あまりにも場違いな名前を聞いたからだ。

「な、んで……夢条響を……いや、なんで彼の友人……? まさか、彼が生きているのか?!」

「さぁ? 最期に会ったのは四年前でして、今は生きているのか死んでいるのか」

「四年前……」

あまりにも衝撃的な内容だった。当たり前だ。

十年以上前にアーヴェを裏切り行方不明になったうちの一人、あの夢条響が生きていたのだ。しかも、得体の知れないファントムの友人だと言う。

嘘なのか。いや、嘘だとしてもなぜそんなことを言わなければいけないのかが分からない。

「数十年前から世話になっていまして、あぁ、私と彼の出逢いは本当に最悪でした! まったくもってあの小僧と長い関係になるとは思いませんでしたよ。あぁ、私が話せるのはここまで。さすがにこれ以上は追加料金です。なんてね」

セレスティンの元幹部で現在は敵対していたはずのアーヴェの四番目のジョーカー、ファントム。彼の過去についてレガート・レントはほとんど情報を持っていない。セレスティンに入る前の記録が一切ないのだ。

そんな彼が、やはり行方をくらましてから情報が一切ない夢条響と知り合いだった。しかも、行方をくらました後に接触した。それはあまりにも大きな収穫だ。

「私が知りたい情報には、足りますかね?」

「……わかりました。霧原誠について、もう少しだけ話しましょう……といっても、私も本当にほとんど知らないのですがね……」


霧原誠――黒騎士に所属していた時の名は、紫の悪魔。彼は、セレスティンに入るまでの記録が一切ない。そもそも、彼本人事態にセレスティンに来る前の記憶が無い。彼は四年以上にセレスティンに入り、なぜか黒の騎士団に二年間だけ(・・・・・)所属する事になったのだという。

その二年間で暗殺者として名をあげ、アーヴェの長、アーヴェ・ルゥ・シェランの暗殺に失敗し、姿を消した。表向きには暗殺の失敗により処分されたなどと言われていたが、セレスティンの所属に戻っただけだったらしい。

そして、数ヵ月後に表向きはセレスティンから逃げ出し、星原に助けを求めた。

義兄霧原陸夜が彼を保護したのは偶然だった。霧原誠と後もう一人、黒騎士の暗殺者灰かぶりが星原の皇の館に現れた時、陸夜はすぐに二人を保護したが灰かぶりがある組織に追われていること、マコトを助けて欲しいことを伝えこと切れた。その遺言を重く受け止め、陸夜はそれ以後霧原誠と名乗ることになる紫の悪魔を義弟として引き取り、星原で働くことになった。それが二年ほど前の話だ。


「私が知っているのはそれくらいですよ。彼が一体何者なのか、なぜアーヴェ・ルゥ・シェランの暗殺を行ったのか、死んだ少年は誰だったのか……はっきり言って分からないことばかりです。セレスティンにはあまり関わりたくないし」

「……なるほど」

カランと氷がカラのコップの中で音を立てる。

「じゃあ、最後に一つだけ。……オベロン計画って知ってます?」

「……」

「なんでも、数十年……いや、数百年前から計画されたアーヴェ・ルゥ・シェランを殺すための計画だと聞いたのですが。その計画の為にセレスティンは無謀な実験と失敗を繰り返してきた……と……」

「私はセレスティンの事が嫌いです。出来れば関わりたくない。……知りません」

「そうですか」

ファントムは平然とした様子のレガート・レントを見て笑いながら席から立ち上がった。懐から酒代をだすと、ごちそうさまと声をかけて出て行く。

店の中に沈黙が下りた。レガート・レントは動かない。

時計の針の音が異様に大きく聞こえて来る。

そして、数分立った後、レガート・レントは息を大きく吐き出した。

『お疲れ様です』

どこからともなく少女の声が聞こえて来る。

パンドラボックス・イトコヒメシステムと呼ばれる人工知能だ。本体は機械で、肉体を持たない。

彼女はレガート・レントの助手にして大切な相棒だった。

「ほんと、疲れたわ……お嬢、さっきのちゃんと記録してある?」

『はい、ご心配なく。それにしても、彼は……』

「あぁ……あぁっもう! ふざけるなよ! なんでいまさらオベロン計画の事を知ってるやつがアーヴェに来たんだ!」

頭を抱えたレガート・レントはごつんとカウンターに頭をぶつけながらうめく。

「もうすぐなんだ! あとちょっとなんだ! だっつーのになんでこんなところでっ。知ってる人が一人でも少なければいけないってのに……このためだけに、旦那が必死になって戦って来たっつーのに!」

『ですが、まだ計画の裏までは分かっていないはずです』

「それが厄介なんだよっ。計画を知って中途半端に手を出されたら、それこそ狂気の沙汰じゃないっ」

『どうしますか?』

「どうするもこうするもない……とにかく三番目の旦那に連絡して--」

と、レガート・レントは言葉を止める。

入口の鈴が鳴ると、そこに女性が入ってきたのだ。

茶色の髪の女性が入ってきた。その手にはこの店の黒い名刺。

「すみません、ここなら三番目のジョーカーと連絡が取れると聞いたのですが?」

「……いつからここは三番目のジョーカーとの連絡所になったんだ」

以前、写真で見たことのある女性の来店にがっくりと肩を落としながらレガート・レントはため息をつく。


「とりあえず、ようこそ情報屋バラッドへ」




実は、晶君のお父さんの親戚がすでに物語中に登場しています。いつか、明かされることがあるかもしれません。

そして、最後にようやくアインちゃんが登場。ずいぶん前に書いた番外編ヘンゼルと迷いみこの残された謎とかは三章で決着がつくかと。

次話は半年ほど放置されているアルトちゃんの話を……。


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