02-04-01 張りめぐらされていく罠
「ベネトナシュ殿、スフィラ様がお呼びです」
深夜、起こされたマコトは、突然の招集に嫌な顔一つせず頷いた。
スフィラの気まぐれは今に始まったことではない。慣れた物だ。
しかし、呼びだされた部屋へ赴くと、マコトの他にも数人、その部屋に集められていた。
さっと見渡して、把握する。
皇の館襲撃時にも参加していたムラクモ、ギウス、ミスティルの三人と、プルート、そしてその後ろに影の様に秘書姿の朱月が佇む。ムラクモ、ギウス、ミスティルは三人での任務が多く、優秀なチームだと聞いている。だが、ギウスとミスティルは以前よりマコトの事を敵対視しているとの話だ。対する朱月は諜報が主な仕事だと聞いているが、その内容などは極秘扱いで、プルート個人に従っている様子だった。マコトとはあまり接点が無く、ほとんど会ったことはない。そんな彼らから視線を外すと、呼びだした本人であるスフィラがニコリと笑った。
「さて、皆揃ったようね。プルート」
「はい。これより、あなた達には……とある神を殺しに行ってもらいます」
こともなげに、プルートはマコト、ムラクモ、ギウス、ミスティルの四人を見て、にこやかに言った。
「あぁ、侵入の手引きや交戦中の外部からの邪魔が入らないように、彼女もつけるので安心を」
そう言って、プルートは朱月を前に出す。彼女はこちらを見回すと、一礼してまたプルートの後ろへとついた。
なにを安心しろと言うのか。実質、四人でどこの神を殺せと言うのか。
下位の土地神ならともかく、一国の守護神や有名な神相手ではどうなることか分からない。が、ふとムラクモのプロフィールを思い出す。彼は、変わった一族の出身だったはずだ。
神を殺し、呪われたと言われる一族であるテイル・クージス同様、神殺しの逸話を持つ一族や土地などが他にもある。そのうちの一つが、ムラクモの出身地だったはずだ。
「ちょ、ちょっと、待て! いや、待って下さい! どういう事ですか。まさか、俺たちがこの紫の悪魔とかいう奴と一緒に行動しろとか言うんですか?!」
嫌悪を隠すこともなく、ギウスが反対の声をあげた。ミスティルも同じ考えの様で、ギウスの行動に戸惑い止めながらも、マコトを疑いの目で見る。ムラクモは、なにも言わない。
「ええ。あぁ、でも、一緒に行動ではないですよ。命令に従ってください。だって、あなた達より、強いですしね」
「なっ!!」
魔術の使えない暗殺者如きがとばかりにギウスは殺気すら放ちながら睨みつけていた。
それに、マコトはどこ吹く風とばかりにプルートに次の指示を待つ。これまで、散々魔術が使えないと言われてきたので気にならないし気にする必要はないと思っていた。
だが、それをプルートは嗤ってややこしくする。
「あぁ、でも。そんなに嫌なら、戦ってみたらいいんじゃないですか? もちろん、三人がかりでもいいですよ」
「ふっ、ふざけるな! なにが三人がかりだよっ。こんなチビガキっオレ一人で十分だ」
マコトは何も言っていないと言うのに、勝手にギウスはプルートの言葉に苛立ちを募らせていく。プルートはといえば、意地の悪い笑みで嗤っていた。それが、さらにギウスの癇に障る。マコトがまったく関わっていないと言うのに勝手に盛り上がっていく。
これは、面倒なことになりそうだと、マコトは一つため息をついた。
聖フィンドルベーテアルフォンソ神国。そこは、神が守護する国である。
フィンア・ソルティナ・リーテと呼ばれる、二柱で一つの神。
光と義と昼の民を守る男神であるフィンア神。
闇と悪と夜の民を守る女神であるリーテ神。
首都には巨大な城と二つの塔が立つ。
王が住まうテアルナ城。フィンア神を崇めるフィンア・フロード教の総本山、フロード教会通称白の塔。リーテ神を崇めるリーテ・フィリア教の総本山、フィリア教会通称黒の塔。どこも観光名所で在り、一部の場所は一般公開されている。
その観光地、白の塔を訪れた少年二人は、ほとんどの観光客と同じようにその塔の大きさに驚き、良く見えない頂上を眺めていた。
「おい、なんだよこの塔。めちゃくちゃ高ぇ……」
「僕も話には聞いてはいましたけど……ここまで高いとは……」
明日の午後にある人物と待ち合わせをしていた二人は、それまでの時間、独自にクリス・ハルフォンドについて調べようと関わりのあるフロード教会に来ていた。
カリスは聖フィンドルベーテアルフォンソ神国に来た事はないが、星原に来る前は旅をしていたと言うテイルは何度か来たことがあった。だが、首都に来るのは初めてだ。
そんな様子に、二人を観光客だと思ったのか、神官の服を纏った、というよりも纏わされているという感じのまだ幼さの残る少女が近寄って来る。
「フィンドルに来るのは初めてですか?」
慣れた様子でパンフレットを渡して来る少女に、テイルは礼を言って答える。
「フィンドル神国に来た事はあったんですが、 首都に来るのは初めてで」
「オレはフィンドル初めてだなー」
「そうでしたか。フィンドルで最初にフロード教会を見て驚く人が多いですが、フィリア教会も驚くこと間違いなしですよ! テアルナ城は一階の一部が一般公開されているのでぜひ観光にどうですか?」
「あっ、はい」
慣れた様子の少女の語りに思わず頷くテイルに、カリスは苦笑いで脇腹をつつく。
「あっ! すみません。今回は観光できたわけではないので。またの機会にしたいと思います」
「そうですか……」
見れば分かるほどのしょんぼりとする少女の様子に、思わず声をかけようとしたテイルは、またカリスに頭を叩かれた。基本、流されやすいのだ。
「それよか、俺たちちょっとこの辺りに行きたいんだけど、この近くって聞いたんだが道に迷ってさ。知ってるか?」
カリスは事前に調べてあった住所を少女に見せた。
そう、二人は観光に来た訳ではない。ティアラがみつけた新聞の切り抜き記事、マリアンヌ暗殺事件の日に起こったもう一つの一家惨殺事件の現場に行こうとしていたのだ。
事件にかかわる物が見つからずとも、周囲の人に話ぐらいは聞けるかも知れないと思っていた。たった三年前のことだから、きっと惨殺事件で殺された千引玻璃とよく似た少年の知り合いくらいはいるだろうと思っていた。
「はい。知ってますよ。案内しましょうか? でもここ……貴族街の外れでなんの観光地も…………」
なにやら少女はその住所をよく見て、言葉を止める。
なにかも思い出すように首をかしげると、後ろを向いた。
「セオドア?」
「なんでしょう」
名前を呼ばれると、すぐそばの影から左目に傷を持った青年が現れた。
突然の事に二人は驚くが、動けない。
その青年は、なぜかフィンドル神国に存在する騎士団の制服を着ていたのだ。その腰には騎士団の紋章を付けた剣。なぜか棒つきの飴をくわえた少しやる気のなさそうな面持ちの青年だ。少女よりも年上で、この二人の関係は良く解らない。
「セオドア。この住所って、たしか……」
「あぁ……」
その青年――セオドアは、少女にしか興味なさそうにしていたが、その住所を見せられた途端に、カリスとテイルをじろりと見つめた。
少し気押されながらも、カリスとテイルはその視線に耐える。
やる気はなさそうなのだが、しかし相手は騎士。少しばかり緊張が奔る。
「あなた達、なぜこんな場所に?」
カリスもテイルも、なぜと問われた時の回答をすでに用意をしていた。
もしかしたら、聞かれるかもしれないと用心に越したことはない。そもそも、観光地でもない場所に行くのだから、いい訳くらい考えた方がいいだろうということだった。
「王女マリアンヌ殺人事件について調べているんです」
「……?」
「事件当日、同時刻に起こった一家惨殺事件はまったく関係ないと言う事でしたが、本当にそうなのでしょうか? 未だに暗殺者も暗殺を依頼した人物も分かっていない事件を調べる中で、一家惨殺事件についても気になり調べに来たんです」
そう、設定したいい訳をテイルはゆっくりと語った。あまりしっかり話してしまうと、用意していた答えなのがばれるかもしれないと思ってのことだ。
セオドアはそれでも疑いの目を向ける。
「あなた達は誰なんですか?」
「あっ、すみません、挨拶も無しに。私はテイル・クージス。こっちはカリス。ルフォートから来ました。近年の犯罪や暗殺事件について調べているところなんです」
ルフォート国は中央大陸の中でも一、二を争う学術都市だ。有名な学者や学園が多く存在する。学生や活発な学者は国から出て現地に調べに来ることが多い。だから、良いいい訳になるのだ。
「なるほど、そうでしたか。オレはセオドア」
「私はランジュと言います。ハルフォンド家の事を調べているのなら、私達もお手伝いしますよ!」
「えっ。私達って、もしかしてオレもですか?」
ランジュが身を乗り出すように言うと、セオドアは実に嫌そうな顔をした。厄介事には関わりたくないと言った様子だ。
しかし、本当に手伝ってくれるのならば助かる。なにしろ、カリスもテイルもフェンドル神国にはまったく明るくないのだ。
二人は顔を見合わせて、頷いた。
「是非に、お願いします」
「はい!」
「ちょ、ランジュ様! さすがに……」
「セオドア、ハルフォンド家の事は今だって犯人もエメリアちゃんのこともなにも分かってないんだよ? 私達は動く事は出来ないけど……もしもこの人達や他の人達が真相を見つけてくれたら……」
どういう意味なのだろうかとテイルは考える。そもそも、この二人の立場が分からなかった。
ランジュに対して、年上であるはずのセオドアは少し砕けながらも敬語を使っている。ランジュはただの教会の神官ではなさそうだ。
「それは……確かにそうですけど……危ない事は無しですよ?」
「うん! そうとなれば、ノランにも連絡しないといけないですね! あ、私たちの友人のにハルフォンド家と懇意にしていた人がいるんです。彼なら私達よりもいろいろ事情を知ってるはずですよ」
「そうなんですか。あの、事前に調べたには調べたんですけど、ハルフォンド家はフロード教に関わりがあったって聞いたんですが」
「その事も、ノランに聞いた方が早いかと。セオドア、ノランを呼んで来てくれますか? その間に私が彼等を屋敷跡に案内しますので」
「……なにを言っても聞き入れてくれないんでしょうね。分かりました」
しぶしぶと言った様子で、セオドアは走ってどこかへと向かう。それを見送ったランジュは、少しだけ寂しそうに笑った。
さあ、とゆっくりと彼女は歩きだす。
とんとん拍子で話が進むことにカリスは不安を思っていた。あまりにも話が良すぎる。
ハルフォンド家が昔からの貴族で、フロード教と関わりがあったと聞いて家に向かうついでに来た城の塔で、まさかハルフォンド家の事に詳しい人とすぐに出逢う事になるとは思ってもみなかった。
しかし、その彼女の正体は分からない。
話を全てテイルに任せて、カリスは二人の様子を、そして今はランジュを観察していた。
「一家惨殺事件には、新聞に書いていないことが多いんです。例えば……長女、エメラルドの遺体は見つかっていない、とか……」
暗い顔でランジュは話を続ける。
「え……そうなんですか?」
「はい。エメリアちゃんだけ、未だに行方が分からないんです。ただ、彼女のものらしき大量の血痕が残っていたため、おそらく、死亡したとされています」
「そうだったんですか……あの、もしかしてそのエメラルドさんと」
「ともだち、でした……。そのお兄ちゃんのクリスさんともよくお会いしていました。ハルフォンド家はフロード教の神官を多く輩出している家で、エメリアちゃんはいずれフロード教の神官になる予定でしたから。クリスさんも神官になる予定だったんですけどね、騎士団に入りたいと言って神官になる道を蹴って、騎士団に入団した……その年のことでした」
「……そう、だったんですね」
そう反している内に、町の外れまで来ていた。森が近く、閑静な住宅街の中に、人木は異様な空間がある。
三年前のことだと言うのに、未だにハルフォンド家の屋敷は焼けたまま放置されていた。
広い庭は草が生え茂り、木々が繁茂している。申し訳程度にロープで敷地に入れないようにとしてあるが、あまり意味なさそうだ。
「そのまま、なんですね」
「はい。誰も引き取り手が無く、このままとなっています。入っても、別に大丈夫かと」
そう言うと、慣れた様子でそのロープをまたいでランジュは入っていく。
雑草など気にせずどんどん庭に入っていく少女に、二人は慌てて後を追った。
屋敷の中は、当時のままだった。
焼け焦げたキッチン。荒らされた室内。
積もった埃の上に、ランジュの足跡がつく。
「二階から出火したらしく、二階がもっとも酷いんです。柱が倒れて、危険な状態で……」
「二階、ですか」
一階あるキッチンを覗いて、テイルは怪訝そうに問う。
キッチンは焼け焦げた跡はあるものの、原型は留まっている。
すぐそばのリビングに、埃だらけの写真立てがあった。それにカリスは手を伸ばし、埃を払った。
家族の写真だ。
新聞に乗っていた集合写真とは違う。やはり玻璃とよく似た少年が、少し年下の良く似た少女――妹と一緒に写った、幸せそうな写真。背景には、先ほどカリスとテイルがいたフロード教会が写っていた。
「このリビングで、当主が殺されていたそうです」
必死に感情を押し殺した声で、ランジュは言った。
思わず、カリスは写真立てを戻して周囲を見回す。
壊されたテーブルと椅子、そしていくつかの家具が倒れている。
「階段で、二階に上がろうとしていた母親が斬られ、二階で……クリスさん、が」
ランジュに案内され、テイルとカリスは二階に上がる。
一階よりも酷いありさまの二階は、焼け焦げ、床が抜けている場所もある。奥へと進めば進むほど、危険だった。なにをすればこうなるのか、柱が折れ、所々天井が崩れている。
「同じく、二階でエメリアちゃんの物らしき大量の出血の跡がありました。……おそらく、エメラルド・ハルフォンドを狙った犯行だったのだろう、と言われています」
「でも、その話は新聞には一切書いてありませんでしたよ。そもそも、調べても何も出てこなかった……」
一番奥の部屋は、ほとんど半壊していた。
女の子だと言うのに、足もとの悪いそこを、身軽に進んでいくランジュを感心しながら、カリスは周囲を観察する。やはり、会話は全てテイル任せだ。その方が、効率がいい。
「はい……いろいろ理由はあるのですが……一番の理由は、フィンア神からの、要望でした」
「え? 神からの、要望?」
「はい」
なぜ、ランジュはそんなことまで知っているのか、疑問はあるが、それよりも気になることが多すぎた。
「あの、ハルフォンド家について、もっとよく教えてもらえますか?」
「そうですね。ハルフォンド家について、そもそもの話をしなければなりませんね……。ハルフォンド家は代々フィンア神に仕える神官の家系で……」
「遡るとフィンドルの二大貴族、アルフォンソ家とフィンドリーテ家に継ぐ名家だったんだよ」
ランジュの言葉に付け足すように、少年が語った。
カリスたちが後ろを向くと、そこには先ほど別れたセオドアと、メガネの少年がいた。
「ノラン!」
「ランジュさん、一体全体何してんですか! ちょっとはこっちの立場も考えてくださいよっ」
セオドアと同じデザインの、しかし騎士と言うにはラフすぎる制服を着た彼は、あきれ顔でため息までつきながらそう言った。
どうやら、彼がノランらしい。
「ハルフォンド家の事を調べていると聞いて、思わず……」
「……そりゃあ、気になるのは分かりますけど、自重して下さい。それで、あなた達がハルフォンドの事件を調べているんですか」
「はい。えっと、ノランさん?」
「ノランでいいですよ。えっと?」
「あ、テイルです。こっちはカリス。ルフォートのほうから来ました」
「そうですか。わざわざ遠路はるばる、ご苦労様です。クリスのこととハルフォンド家の事を少しぐらいしか知りませんけど、僕で分かることなら話しますよ。……どうせ、大人達は調べないから」
ぼそりと、最後の言葉を投げやりに言う。
思わず、カリスはノランを見た。ランジュもセオドアも、目を伏せている。
「この国の守護神、フィンア神とソルティナ神は、ハルフォンド家の事件に対して、調べることを控えるようにと命令したんですよ。だから、大人達は調べないし、僕らもほとんどの情報が手に入らないから何もできない。ハルフォンド家は政治対してはなにも力を持ってなかったけど、宗教関連に対しては……初代の当主がフィンア神のお気に入りだったという事もあって、とても力を持っていた。亡くなった当主も、エメラルドさんも、クリスも、フィンア神がとても気にかけていたらしいですよ」
「そう、なんですか」
「クリスから言わせると、ちょっと面倒だって言ってましたけど。フィンア神の都合で将来を決定されるのは嫌だ、と。だから、騎士団に入ったそうです。死んだ後まで、彼等のせいで無念を晴らすことすらできない……」
悔しいのだろう。両手はかたく握りしめられている。
神に翻弄される辛さは、カリスも良く知っている。きっと、クリス・ハルフォンドも、神に反抗したかったのだろう。だから、神官では無く騎士を目指した。
そんな彼は、一体どうして殺されたのだろう。
今まで話を聞くと宗教関連の様に思える。しかし、エメラルド・ハルフォンドの遺体が無いと言う事が気になる。大量の出血後から死亡とされた彼女がまだ生きているとしたら? そもそも、なぜ彼女を狙ったのか。分からないことが多すぎた。
「ノラン、フィンア神の神官の目の前で、よくそんなことが言えますね」
「あっ、いやっ、今のは聞かなかったことで!」
「まあ、その辺の事は私からも何度もフィンア神に進言しているから、聞かなかったことにしておきます」
「……」
ほっとした様子で、しかしノランはため息をついた。
「正直、僕らでは八方手づまりで、あなた達の話も聞きたいのですが、どうでしょう」
「……」
カリスとテイルは顔を見合わせる。
どこまで話すか、二人は三人の協力者を前に、悩んでいた。
正直、ここまで協力してくれる人が出て来るとは思っていなかったのだ。
「……千引玻璃、という人物を知っていますか?」
「? どなたですか?」
「この人、なんですが」
そう言って、テイルは数年前に取った玻璃の写真を出す。
星原で何度か写真をとる機会があった。そのうちの一枚だ。
それを見せると、案の定ノランは息を飲み、ランジュは目を見開いた。
「なっ、これはっ」
「クリスさん?!」
しかし、この屋敷跡に残されていた写真と髪色が違う。瞳も、蒼では無く黒だ。
「い、いったいいつ、この写真を撮ったんですかっ?!」
「たしか、彼と初めて会ったころ……三年前の事です」
そして、クリス・ハルフォンドが殺されたのも、三年前だ。
「つい先日、この写真に写っている友人、千引玻璃が殺されました。その後、クリス・ハルフォンドさんの事を知り、千引玻璃と関係があるのかを調べに来たんです」
「……まさか、でも。でも、彼は、絶対にクリスじゃないですよ……。だって、たしかに彼は死んだ。僕はハルフォンド家の埋葬を見ている。似ているけれど、きっと……彼は……クリスとは関係ない、ですよ」
死んだ人間とよく似た人間がいた。それだけならばたまたまだとテイル達も信じたかっただろう。しかし、この記事をティアラが見つけてしまった。星原の皇の館で。
まるで、誰かがわざとこの記事を見つけさせたのではと邪推してしまうような偶然で。
図書館と言えば、マコトを思い出してしまう。
マコトは何時も図書館に居た。彼と玻璃の仲が悪かった事はみな知っている。そして、彼が玻璃を殺した。
本当に、たまたまなのだろうか。だから、そんな疑問が浮かぶ。
本当に、彼は、クリス少年とまったく関係ないのだろうか。
「……リーテ神に、会ってみませんか」
そんななか、ランジュが呟くように問いかけた。
ここで、たぶん本編にでない裏話。(無駄に長いです)
ノラン君のフルネームはノラン・アルフォンソ。実は二大貴族の一つであるアルフォンソ家の次男です。武のアルフォンソ、知のフィンドリーテと呼ばれ、アルフォンソ家と言えば武術に優れた人物を輩出する貴族でした。お兄ちゃんのシリルさんが天才で騎士団団長だったり。でも、ノランくんは幼いころから病弱で武術はてんでダメダメ。その分知力で補おうとして、勉強を頑張っていました。
セオドアくんは甘いモノ好きでいつも飴をなめているノランの友人。騎士団所属で実はかなりの実力者。だけどいつも糖分摂取してる。いつもだるそう。癖者ぞろいの騎士団では、結構常識ある方。フィンドルの騎士団には箱を常時かぶってる副団長とか戦闘狂とかいろいろいます。
ランジュ・ミア・ベルティーダさん。……たぶん本編に詳細が出てきそうなので設定は秘密。兄弟がいっぱいいます。
まったく出てきそうにない、彼等の幼馴染、ラミリア・フィンドリーテちゃん。二大貴族のラミリアちゃんはもともとけんかっ早い性格だったのですが、大和国に留学している間に刀の魅力にはまり、刀術習ったら才能があったらしく侍の様になって帰って来た女の子。口が悪くてノランくんをいつもいじって遊んでいます。実は、出流と友達で、よく連絡を取り合っていたり。
昔、ノランくん主役の外伝を考えていたので、実は彼等の設定は結構細かく決まっています。特に副団長さんはいつか出したい。本編には出られないと思うけど、外伝などで登場させたい。これから始まる、本編ではまったく出ていない大国同士のある出来事を当事者であるノランくんたちが奮闘する話になる予定でしたが、全然本編進んでないのでこちらも書いてません!!いつか、かきたいなぁ……。




