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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

03:禁断の被服

作者: 佐々木レン
掲載日:2026/05/10

禁断の被服、あるいは暴かれる銀青の雄。

リアナは今回お休みです。

王都の司令部に隣接する、広大な作戦会議室。


初夏のじっとりとした熱気が籠るその大部屋では、数十人の将校や一般兵士、文官たちが、次なる遠征のための物資調達や書類整理に追われ、慌ただしく駆け回っていた。




「……ひどい熱気だな。換気はどうなっている」




不意に、部屋の入り口から絶対零度の低い声が響いた。

その一言で、室内の喧騒がピタリと凍りつく。全員が弾かれたように直立不動となり、入り口に現れた軍司令官、ギルベルトに向かって息を詰まらせた。


「は、はいっ! ただいま窓を……っ!」


文官の一人が慌てて窓を開けに走る中、ギルベルトは苛立たしげに眉根を寄せ、部屋の中央にある巨大な作戦卓へと歩み寄った。



壁際に控える護衛の兵士たちは、直立不動の姿勢を保ちながらも、長机の中央に立ったその男――ギルベルトから、どうしても視線を剥がすことができずにいた。


普段の彼は、どれほど過酷な状況下であろうと、軍服の第一ボタンまで決して外すことのない、文字通りの「氷の将官」である。

隙など微塵も見せず、その銀青色の髪一本すら乱れることを許さない。



だが、抗いようのない酷暑が、あの完璧な男の装甲をついに剥ぎ取っていたのだ。


重厚な軍服の上着はとうの昔に脱ぎ捨てられ、身につけているのは漆黒のベストと、汗を吸って肌にべったりと張り付いた薄いシャツのみ。無造作に肘のあたりまで捲り上げられた両腕が長机に突かれ、分厚い地図をガシッと押さえつけている。その丸出しになった前腕には、戦士としての獰猛さを物語る太い血管がくっきりと浮き出し、脈打っていた。



何より周囲の理性を狂わせたのは、その大胆に開け放たれた胸元だった。



「……ふ、ぅ……」



ギルベルトが地図を睨みつけながら、暑さを逃がすように深く、重い呼気を吐き出す。

そのたびに、大きく開いたシャツの隙間から、露わになった白磁のような肌と、深く刻まれた大胸筋が重々しく波打つのが見えた。乱れた銀青色の前髪から滴り落ちた汗の雫が、鋭い顎のラインを伝い、その雄々しい胸の谷間へと吸い込まれるように滑り落ちていく。



「……この地点の防衛線は、すでに意味を成していないな」



次なる戦地を見据えて唸るその声は、熱気のせいか酷く低く、掠れていた。

喉仏が上下する生々しい動き。汗に濡れて光る、鋭い翡翠の瞳。


決して弱っているわけではない。むしろ、物理的な熱に晒され、一枚の皮を剥かれたことで、ギルベルトの内に潜む圧倒的なオスとしての覇気が、むき出しの暴力となって周囲に撒き散らされているようだった。


男ばかりの空間であるにも関わらず、誰もがその無防備で生々しい着崩し姿に当てられ、頭の芯が痺れるような目眩を感じていた。歴戦の将校たちでさえも、もはや地図など見てはいない。皆、熱に浮かされ、汗に濡れて輝く将官の圧倒的な色香に完全に呑み込まれ、息を潜めてその一挙手一投足を見つめている。



隙のない男が、抗えない過酷な環境によってのみ見せる、剥き出しの肌と熱。



その姿は、どんな精巧な戦術や号令よりも強烈に、その場にいるすべての者の心臓を鷲掴みにし、完全に蹂躙していたのである。



(……なんなんだ、このお方は……っ)



若い兵士や文官たちは、ゴクリと生唾を飲み込んだ。



露わになった喉仏。厚い胸板、強靭な腰、そして長い脚。

すべてが「男」として完成されすぎていて、もはや暴力的なまでの色気を放っている。彼らは同性でありながら、その姿から目を離すことができなかった。



まるで、見てはいけない神聖な儀式——あるいは、絶対に触れてはならない猛獣の裸体を覗き見てしまったような、強烈な背徳感と焦燥。


禁断のものを見てしまったという罪悪感が、彼らの顔を火のように赤く染め上げ、脳髄を痺れさせていく。



触れれば火傷しそうなほどの生々しい熱量と、周囲の酸素すら奪い尽くすような圧倒的な引力。ただそこに立っているだけで周囲の理性を焼き切るような、濃厚で暴力的なまでの雄の色香が、作戦室の空気を完全に支配していた。




「……貴様ら、何を見ている」


挿絵(By みてみん)




不意に、卓上の地図を見下ろしていたギルベルトが、深い翡翠の瞳をゆっくりと持ち上げた。

微かな苛立ちを含んだ、絶対的な支配者の眼差し。


ただの一瞥。たったそれだけで、彼に向けられていた何十もの泥濘のような熱視線は、冷や水の中へ叩き落とされたように凍りついた。


「ひっ……!」

「も、申し訳ありません!!」


弾かれたように全員が顔を伏せ、蜘蛛の子を散らすように元の作業へと戻っていく。


だが、彼らの心臓は狂ったように早鐘を打ち、網膜には先ほどの漆黒のベストに包まれた圧倒的な着崩し姿が、消えない焼き印のように刻み込まれてしまっていた。



ギルベルト自身は、自分の肉体が他者にどれほどの劇毒を撒き散らしたかなど意にも介さず、ただ気怠げに髪をかけ上げ、再び冷酷な目で地図へと視線を落としたのだった。




ありがとうございました!

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