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第8話 祝賀会。

「あの人はあまり、派手な色身を好まないから…」

衣装室に並んだドレスから、おとなしめのピンクのドレスを取り出して、姿見で自分に合わせてみる。黒髪に良く似合う。


王国美術展の授賞式。

美術アカデミアの最終学年は皆作品を出品している。


グランプリは、私のテオフィルに決まっているわ。

作品は予め見せてもらった。みんな黙り込んでしまったわ。ふふっ。


踊りだしたい気分だわ…そう思いながら、テオフィルの瞳と同じ色のアメジストのネックレスを選んでつける。髪を侍女に梳いてもらって…鏡に映った自分ににっこり笑う。そこには、舞踏会に行くたびに断っても断っても求婚者が湧いてくる美しい令嬢が映っていた。



***


「今年のグランプリは…テオフィル・フォン・ヘルマンの【散歩道のエヴェ】」


ほらね。さすがだわ私のテオフィル!私にはわかっていたわ!


ギャラリーの総立ちの歓声と拍手の中、今しがた名前を呼ばれた私のテオフィルが壇上に上がる。今日は正装して来たのね、素敵ね、初めて見たわ。あなた、めんどくさがって社交界に出ないから。

私の髪色に合わせた黒の上着に…タイは急いでいて色を間違えたのね?深い緑だ。ちゃんと私の色のブルーのタイを贈っておいたのに。


みんな見ている。


並木道を日傘をさして歩くドレス姿の私の絵。


ドレスの裾と長い黒髪が穏やかな風に吹かれて。

美しい緑色の中、満開の花と、足元に花びらが敷き詰められている。

花の色に飲み込まれそうな、白と濃いピンクからのグラデーションのドレス…。美しい。


称賛の声と拍手が鳴りやまない。

私は、私の選んだ人の栄光が誇らしい。


私は…この人に愛され、この人の才能を愛して生きていくんだわ。



***


二人きりでお祝いをしなきゃね。


祝賀会を先に一人で抜けて、今夜テオフィルが泊る予定の主催者が用意したホテルに急ぐ。

「テオフィルの婚約者です」

そういうと、最大の賛辞を口にして、ホテルの支配人が部屋に案内してくれた。

「ああ。婚約者のあなたがモデルだったんですね?本当に美しい方なんですね。彼が新人賞を取った時からファンなんです」

頬を赤らめながら、背の高い支配人が微笑む。


お祝いだと、ワインとグラスを二つ用意してくれた。


私は部屋で、テオフィルが帰って来るのを待った。





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