第5話 王都。
春の王国美術展でテオは新人賞を受賞した。
授賞式後に王立美術アカデミアの特待生として迎えられることになった。
主治医のケヴィン先生が身元引受人になり、先生のお宅から通うことになった。
テオの両親ももちろん私も、それなら安心だ。
実家の母が心配して、私のことも貴族用の学院に通ったらどうか?と提案してくれた。王都にはすぐ上のロルフ兄が近衛騎士で勤めているから、泊るところもあるし、と言って。
…私としては…都会の生活がしたかったわけでもないし、これといってあこがれもない。おじさまが春先に脚立から落ちて腰を痛めたのもあって、テオのいない間、この領でできることをするつもりだと断った。
「…でもね?エヴェ…テオフィルは、その…とても素敵な殿方になったでしょう?あなた、心配じゃないの?」
「?」
「他の女の子が、放っておかないと思うわよ?」
「え?だって、母上…テオは私と結婚するんですから。」
エヴェは首をかしげる。母が何を心配しているのかよくわからなかった。
15歳になったテオは、私より少し背が高くなった。
私の好きな菫色の瞳はいつもキャンバスを見つめている。
銀色のもこもこの髪は邪魔らしく、私が頼まれてよく切っていた。アトリエで絵を描いているテオにシーツをかぶせて、切っていく。毎回のことなので、随分と私のカットも上手になった。
小さい頃よりもご飯を食べるようになったし、夜は引きずってベッドに運んで眠るまで見ている。そうでもしないと一晩中絵を描いてそうだ。テオは少しずつ、丈夫になった。熱もあんまり出なくなったし。
王都に行ったらケヴィン先生が近くにいるし、そうそう心配することもない。二年たったらここに帰って来るのだし。テオがもっと勉強したいのなら残って勉強してもいい。それまでこの領地を守るのが私の仕事だと思う。
それに…王都は遠い。急いで行っても5日はかかる。
行ったり来たりはテオの体に負担がかかるだろうから、夏休みになったら私が行けばいい。そうエヴェは思った。
りんごの花のつぼみが膨らみだす頃、テオは王都に向かって出発していった。




