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9.聖女様の救出

 

 次の日。



「もうすぐ行く?」


「まだです」




 数分後。



「もうすぐ?」


「もう少し」




 数分後。



「もうすぐ行く?」


「そうですね。その方がいいでしょう」



 エリーゼは、孤児たちとたくさん遊べて満足したようで、ようやく認めてくれた。


 私の都合で時間を減らしてしまったから仕方ないよね。



「では、聖女奪還の会議を行う。まずは発見者のサムエル殿から説明してもらう」


「はい、今回聖女が見つかった場所は黒林の真ん中近くにある池のほとりです。目立たないくらいの大きさの家があり、今までは魔法で隠していたようです。

 しかし、偶然商人が通った時に家が見えたそうで、それにより発見に至りました。

 調査の結果、聖女様が1名以上おられることが判明しました。それはこの国の騎士団にも確認済みです」


「というわけだ。何か質問はあるか?」



 私はそっと手を挙げた。



「聖女ユミ、何だ?」


「どうやって聖女様がいることが分かったのですか?」


「聖属性の感知したのだ。あの家は一日に一回ほど、隠ぺいの魔法が消えることがある。そのときに感知した結果、聖属性の反応が二つあった」


「理解しました。ありがとうございます」


「他に質問はあるか?」



 みんな首を振った。



「では、作戦会議に移る。

 今回は聖女様がいらっしゃる故、それを使った盗賊どもが使っている作戦がいいと思うがどう思う?」



 基本的にみんな頷いている。



「あのー、それでは盗賊どもと同じなので勝つには至らないのでは?」



 勇敢な人が声を発した。



「確かにそうだな。だが、今まで我々は聖女様なしで対等に渡り合ってきたのだ。聖女様がいるのなら負けるわけがないと思わないか?」


「それは……そうかも」



 ガクリ。

 なんでそこで納得するのかなぁ。



「やめたほうがいいと思いますけどね」



 呟いてみたが、気付かれなかった。


 私は私ができることでもやっておこう。




 ◇◆◇




 聖女奪還の日がやってきた。



「行くぞー!」


「「おう!」」



「突撃だぁ!」



 司令官のミトメンさんが声を上げた。


 それにつられ、みんなも突撃し始める。



 今回は、魔法兵は連れてこられていない。魔法が使われると聖女様も巻きこむ恐れがあるかららしい。

 聖女様がいるところを避けて打てばいいのに。



 作戦の上では、怪我をしたらすぐ私の下へ連れて来る、というような事だったと思うんだけど。



 ……まだ、誰もここに来ない。



 まさかこちらが優勢なわけは無いから、多分負けているんだろうな。それも重傷者を連れてこれないくらいに。


 それとも他に何かあったのか。



 一応私のそばにはいつもの護衛のみんながいる。

 だから、ここまで来られても問題は無いんだけど。



「ベノン、放ってもいい?」



 あれから、私は自軍が壊滅した時に備え、大規模魔法を練習していた。



「いいですよ。多分負けていますから」


「じゃあ……土ーー崩壊せよ」



 土属性。だから、生物には効かない。だけど、それ以外のものを壊すことが出来る。


 聖女がいるところは避けて壊したんだけど……

 


 一箇所、入り口近くにポッカリとした空間が広がっていた。



「あれは……?」


「もしかしたら転移魔法が使用されているかもしれません。お気を付け下さい」



 転移魔法か……


 あり得るなぁ。



「とりあえず聖女を救出しましょう」


「そうですね」


「念のため護衛もお願いします」


「もちろんです」



「風ーー生と聖を感知せよ」



 魔法を使って聖女がいる方向へと歩き出す。

 私の魔法は万能型だけど、他の聖女は基本的に、聖属性以外は使いにくかったりする。


 だから、ベノンたち護衛に、珍しいとよく言われる。



 聖女のところについた。


 後ろには、20人ほどの屍ができた。



 ……少なくてよかった。



 生存反応は他に見られなかったから、他の人達は大方瓦礫に埋もれたり、瓦礫が刺さったりでもして死んでいるのだろう。



「ベノン!」


「は!」



 まだ全員死んだわけではない。

 聖女がいるあたりは壊していないから、そこにいる人はまだ生きている。



「聖ーー汝に神の祝福を」



 これも聖魔法。効果は身体強化。そしてこれをみんなにかけた。

 まだみんなに死なれるわけには行かないから。



 ただ、もともとの強さもあってか、勝った。



「聖女様、 大丈夫ですか?」



 駈け寄ろうとしたベノンが……消えた。



 試しにそこらにある瓦礫を投げてみた。

 そしたらそれも消えた。



 ……ここにも転移魔法がかかっている。



 そのことは、明らかだった。



「とりあえず、救出しましょうか」


「そうですね。隊長ならきっと大丈夫でしょう」



 副隊長のカンゲが同意してくれた。



「急いで終わらせて、はやく助けに行きましょう……土ーー崩壊せよ」



 壁の一部を壊した。

 まずはカンゲがいく……が、消えなかった。


 どうやらここは転移魔法がかかっていないようだ。



「聖女様、お迎えに上がりました。城に帰りましょう」


「遅い!」


「……」



 騒がしい聖女に返事をしない聖女。

 なんとも対極にいそうな二人が同じ場所にいる。



「二人?」



 そう、聖女様は二人いた。


 よくよく思い出してみると、聖女様は1人以上いると言われていたかもしれない。



「ベノンのことは心配だけど……ひとまず聖女様を連れて帰りましょう」


「そうですね」


「スピードはできるだけ早く」


「了解しました 」



 そうして、私たちは二人の聖女様を連れて、慌ただしく帰還した。

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