表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

101/258

6 カリヤとバルギラ


「馬車にお乗りください」


 ポートに促され、カリヤとネラは馬車に乗りこんだ。

 薄緑の髪の美少女ネラと、向かい合わせでカリヤは席に座った。


「ねえ、カリヤ、どうしてボクを連れてきたのさ」

「お前なら、相手もそう手出しができねえだろ」

「フフ……人を信用してないんだね。ボク、カリヤのそういうとこ大好きだよ」

「フン」


 ネラはそう微笑んだが、カリヤは面白くもなさそうに横を向いた。


「今や奴は太守代理だ。犯罪者で暗黒街のボスとの俺のつきあいがバレては、世間的にまずいだろう。テレポートの後、馬車移動とは念がいってるぜ」


 馬車に揺られること数十分。馬車が不意に止まり、カリヤたちはとある屋敷の敷地の中にいた。


暗い中、辺りを見回すと、敷地は広大で外が見えない。

促されるままに屋敷に入ると、紫の長い巻き髪を垂らした、スタイルの素晴らしい美女が二人を迎えた。


 紅いドレスは胸元が開き、豊かな胸の谷間が垣間見える。


「こちらへどうぞ、カリヤ様」


美女は艶然とした口調で、カリヤに微笑みかける。


「まさか……お前もディギナーズなのか?」

「はい、ビジョンと申します。以後、お見知りおきを」


ビジョンの案内で入った部屋には、バルギラ公爵が待っていた。

 バルギラは席から立ち、笑顔を浮かべる。


「やあ、カリヤくん、わざわざご出向いてもらって悪かったね。まあ、くつろいでくれたまえ」


 バルギラは後ろに結んだ水色の髪を揺らしながら、椅子を促す。

 カリヤとネラは、席に座った。


 と、ビジョンが赤い羅紗の上に置かれた、収納珠(リシーブ・カプセル)を持ってくる。


「まずは、頼んだことをやってくれたお礼だ。受け取ってくれ」


 カリヤは収納珠を受け取ると、テーブルの上にそれを向けた。

 ボタンを押すと光が出て、その光の中から収納されていた物が現れる。


 テーブルの上に、山のように積まれた札束が現れる。

それは50億ワルドの札束だった。


「フン、太守の命も50億なら、本人も納得するんじゃねえか? ――確かにいただいたぜ」


 カリヤはそう言うと、収納珠に現金を戻す。

 微笑みながら、バルギラが言った。


「これだけの金を見て平然としているとはね。カリヤくんは、やはりその辺のギャングとは訳が違うね」

「これは準備金に過ぎないからな。重要なのは、これをどう使うかだ。…そうだろ?」


 カリヤがマスクの上の眼を、覗き込むようにバルギラに向ける。

 バルギラは微笑した。


「まったく、その通りだ! カリヤくんは話が早いな」

「……しかし、猫耳は捕まえ損ねた。あれはちょっとした化物だな」

「まあ、猫耳少女の件は引き続きで頼むよ。時に、カリヤくんは既にある犯罪組織を傘下に収めたらしいね?」


 バルギラの言葉に、カリヤは運ばれてきたワインを見つめた。


「別になんでもないことだ。まだ始めたばかりだしな。この街のギャングは、俺が全て牛耳る」

「実に頼もしい! カリヤくんとは、これからもいい関係でうまくやっていけそうだね」


 そう言って、眼が笑っていない笑顔を見せるバルギラに、カリヤは鼻で笑ってみせた。


「フン、俺が裏を牛耳って、お前が表を牛耳る――そういうつもりか?」

「共同経営者、みたいなものだね」


 バルギラはそう言うと、自分はワインを口にした。


「ところで……ギュゲス・ネイの事だが――あれは君の仕業かな? いや、別に咎めてるわけではないんだ。ただの興味だ」

「ギュゲスの野郎は、クオンと一緒にいる眼鏡の女にやられたのさ」


 バルギラは少し、不思議そうな顔を見せる。


「クオン? そういえば、猫耳少女もそのクオンと一緒だったね。裁判所で会ったよ。ぼくの誘いに乗らなかった」

「あいつは、そういう奴さ」

「……一体、何者なんだね?」


 バルギラの問いに、カリヤは忌々しそうに答えた。


「『能なし』だ」

「は? どういう事かね?」

「転生者で能なしなんだ、気力・魔力・霊力の全ての力を持ってない」

「ならば、ただのひ弱な子供じゃないか」


 バルギラの言葉に、カリヤは薄笑いを浮かべた。


「そいつが異能を持ってる。自分を重くしたり、硬くしたりできる――そういう能力らしい。それから眼鏡女も転生者で、こいつは透明になれる。そしてあの猫耳――こいつらの力を組み合わせると、意外なほどに強い。『ブランケッツ』とか名乗ってるが――侮ると、痛い目にあうぜ」

「もう既に、あったみたいな口ぶりだね?」


 バルギラの言葉に、カリヤは不快な表情を見せた。


「バルギラ様」


 料理を運んできたビジョンが、不意に口を開いた。


「どうしたんだい、ビジョン?」

「先日、ファフニールを襲撃して研究資料を奪ったのも、そのブランケッツです。スルーとシグマがやられました」

「おお、そうだったのか! あの二人が倒されるとはね――」


 バルギラの顔から、笑いが消えた。


「どうやらブランケッツ――いや、そのクオンという少年、邪魔な存在のようだね」

「ああ。あいつは存在してるだけで目障りな奴さ」


 バルギラは何か考えている――と、その口を開いた。


「ぼくは先日、娯楽に飢える民衆のために、レース・クエストを出した。ダンジョンで発見されたサンダー・チーターを生きたまま捕獲する、というものだ」

「……それが、どうかしたのか?」


 バルギラは言葉を続ける。


「これには多くの冒険者パーティーが参加するだろう。そのブランケッツも参加できるように手を回しておく。これはレースなので、パーティー同士のいざこざも起こりやすい。そのどさくさに紛れて――」

「クオンを殺って、猫耳を奪え――か?」

「察しがいいね」


 バルギラは微笑を浮かべた。


「フン、頼まれなくてもクオンの奴は殺ってやるさ」


 カリヤはそう言うと、黒マスクを外した。

 笑みを浮かべてみせると、その口から牙が覗く。


「おお! 凄いな、カリヤくんの口は! 黒マスクも悪くないが、素でも迫力が十分だ」

「フン」


 カリヤは軽く笑うと、ワイングラスを手に取ってその口に流し込んだ。



○  〇   ○   〇   ○   〇   ○   〇



 その後、月光堂書店に戻ってエリナと合流した僕らは、家に戻ってきた。


「――それで、そのレース・クエストを受けようというんだね?」

「はい。ただ、あんまりそれは考えなくてもいいかと。ダンジョンの低層を探索しながら、もしサンダー・チーターに会ったら捕獲を試みる――というくらいで」

「なるほど」


 エリナが納得したように頷いた。


「けど、サンダーチーターに遭遇したところで、捕獲できるかどうか……。相手はBランクモンスターで、相当のスピードを持つ魔獣のようです」

「そうかあ、ちょっと今の我々では戦力不足かもなあ」


 エリナの言葉に、僕は頷いた。


「僕のバネ脚ダッシュで追いつける速さなのかどうか……。仮に追いつける速さだとしても、逃げたものを追うのはかなり難しいですね。二人の念動力や、力場魔法で足止めする事を考えた方がいいかも」

「虫人間の時みたいに?」


 キャルの問いに、僕は頷いた。と、エリナが口を開く。


「あいつの時は、クオンくんが力勝負で動きを止めていたから抑えられたんだ。動いてるものを、いきなり制動させるのは難しい」

「そうなんだ…せめて、挟み撃ちにできれば相手の動きを止められるんだけど……」


 僕がそう呟いた時、外から声がした。


「――ごめんください」


 僕たちが玄関に出向くと、そこにはカサンドラが立っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ