『この世界より、夢叶大和の幸せを願います』
刹那、見えない速度で何かが通った。第六感が、今すぐ動け。と叫んでいた。だから、俺は全速力で動いた。あの、動く物体より速く、夢の元へ向かった。しかし、
<<ドーン>>
それは、俺が追い付く前に地面に強く叩きつけられていた。夢が、立っていた地面に。その瞬間、俺は自我を忘れて叫ぶ。
「夢!!!」
必死に、元へ駆け寄る。その、物体が離れた瞬間。
「夢!!」
気づけば、俺は夢を抱きしめていた。瞬間、柔らかい感触が伝わった。しかし、生気は失いかけだった。
「夢!!おい夢!!起きろ!!」
何度も、何度も名前を叫ぶ。しかし、触れていてわかっている。夢の筋肉は、潰れていた。
「やま、と・・・」
「夢!!」
か細い声だが、夢が言葉を発する。
「無理はしなくていい。治癒魔法は放てるか?」
そんな俺の問いを無視して、夢は話続ける。
「ずっと、ずっと。好きだったよ。二人で無人島生活をしてから、あなたへの想いが変わった。最初は、ただのしつこい無能でしかないと思った。けど、関わっていくうちに、私は思ってしまったんだ。救いたい。と。そんな衝動に刈られたんだ。それから、時間が立たないうちに好きになっちゃった」
脈の音は、段々と薄くなっていっている。
「夢。もう喋らなくても!!」
「私は、”また”あなたと会えてよかった。幸せだった。ありがとう」
そうして、また心臓の鼓動は弱くなる。
「夢!!死ぬな!!死なないでくれ!!!」
必死に、必死に叫ぶ。夢が生気をぶり返すように。必死に叫ぶ。しかし、夢は死を覚悟したかのように。
「んーん。いいの。もういいの。叫ばなくて、止めなくても。悲しまなくてもいいの」
「なんだよ、それ」
俺は、初めて夢に声を荒げる。
「なんだよ、それ!!覚悟したかのように、そんなことを言うなよ!!まだ希望を捨てるなよ!!あのとき、希望をくれたのはお前だったじゃないか!!そんなやつが、死ぬなんて覚悟を持つなよ!!」
そう叱責すると、少し夢は俯いた。
「でもね、もう生きるなんて出来ないの。これが、私が導かれた”最期”だから。人は、必ず死ぬ。どれだけ頑張っても。長生きしても、不老不死なんて存在しない。それが、この世の理だから」
そして、もうなくなりかけの鼓動の中、夢は言葉を紡ぐ。
「あとは、全て君に任せる。だから、最期に、私から異能力を放つ。だから・・・頑張って」
力が入らない中、夢は最期の力を振り絞って、そして紡ぐ。
『この世界より、夢叶大和の幸せを願います。どうか、大和に力を与えてください』
その瞬間、俺の体に何かが備わった感覚を覚える。あぁ、だめだ。だめだ。だめなんだ。しかし、願っても願っても、それは届くことはなかった。かろうじて温もりを感じていたその体から、生気は完全に失われ、そして冷たくなった。
「ゆ、め・・・」
そのとき、俺は冷たくなった彼女の体を思いっきり抱きしめる。もう、願ってなんかいられない。これは、最期に俺に希望をかけてくれた。だから、下を向いてなんていられない。だから、俺は彼女に感謝する。
「ありがとう!!ありがとう!!ありがとう!!!」
何度も何度も、感謝を伝える。届くことを願って。そして、
「やっと、準備が出来た」
心を入れ換え、俺は魔王と向き合う。
「うぅぅ。いい物語を見せられちゃった。思わず、泣いてしまったよ」
涙は出ていないのに、魔王はそうやって語った。
「うるさい。もう、お前は許さない。ここより、殺すと誓った」
「物騒な」
「俺の大切な奴を殺した分際で、何を言ってやがる」
殺すと誓った俺は、大空に手をかざす。そうして、俺は放つ。
「隻眼。フルパワー」
それを、放つ。
「覚悟しろ。これが、俺とお前の・・・最初で最後の決戦だ」
俺が動き出したことで、戦いの火蓋は切られた。強くなった拳で、魔王の体に打ち込む。
「うっ!!やはり、先ほどよりは威力は上がっているか」
効いている様子は見せた。
「しかし、俺も魔王なんだ!!だから!!」
そうして、対抗するように放ってくる。
「神雷」
だが、俺は最強の力を手に入れた男だ。そんなもの、
「余裕で、交わせる」
「っ。面倒な奴め!!だったら!!」
そうして、また魔王は手をかざす。しかし、異能力が放たれる前に放ってしまえばいいだけ。だから俺は、
「焔炎天」
それを、ぶつける。
「うわぁぁぁぁ!!!」
そいつの体は、炎上する。
「くっ!!許さない許さない許さない!!!お前は、殺してやる!!」
燃える体の中、そいつは放つ。
「う、うわぁぁぁぁ!!!」
更に、巨大化する。そして、全身が炎上する中、そいつの顔を見る。すると、泣いているのがわかった。その表情は、あのときの表情と同じだった。
「まさか、お前だったとは」
ただ、今となってはどうだっていい。
「うわぁぁぁぁ!!」
火だるまになって炎上するそいつは、無我夢中に俺に火玉を飛ばす。しかし、
「冷静な判断が出来なくなっている!!」
今が、狙い時だ。あぁ、ここで、使うとしよう。夢が最期に、おれに与えてくれた力を、使うとしよう。そうして、俺は目を光らせて、
「これで、終わりだ」
そうして、それを放つ。
「終止」




