世界最強の・・・
それは、ひどい光景だった。
「嘘だろ・・・?」
そんな、現実を否定する言葉しか漏れることはなかった。学園長が認めた、夢が、大和が、ラズが・・・。みんなみんな、呼吸をしている様子はなかった。
「お出ましか。元世界最強」
その言葉を聞いて、相手が誰かは瞬時に理解できた。
「お前か。魔帝!!」
「特に、大和という男の子には期待をしたかったね。君の、息子だったんでしょ?どう?息子が無様な死に方をしたことは」
「許せるわけがねぇだろうが。やっと見つけた息子を、こんな目に遭わせやがって!!」
「声を荒げたって仕方がない。元世界最強なら、分かるでしょ?結局、ものの数分で死んだっていうことは、実力が足りなかっただけの話なんだよ」
「それとこれは別だ。俺の大切な生徒を殺しやがって!!」
「だったら、仇を執らないのか?」
「あぁ。やってやるよ」
息子を殺された気持ちが、生徒を殺されたことが、許せるわけもない。冷静に、判断できなくなっている。あぁ、いつぶりだろうか。こんなにもガチギレをしたのは。そして、本気を出そう。って思ったのは。俺は、この一撃で終わらせるつもりだった。何故なら、元世界最強だから。俺が姿を消したことで世界最強の座は奪われたが、この俺は世界最強に相応しい男だ。だったら、やってやる。
「隻眼」
「だろうな!!」
そうして俺はそれを放った。のだが、
「流石に対策されているか」
その攻撃は、難なく交わされてしまった。
「隙あり!!」
「まずっ!!」
なんとか、急所に直撃するのは避けた。
「中々、上達してるじゃねぇか」
「俺だってな。この戦いは負けるわけにはいかねぇんだよ。故に、鍛練を積んできた。その成果を見せてやるとしよう」
そうして、そいつは放つ。その、とんでもないものを。
「死鬼断律」
「うそ、だろ?」
そいつは、世界三大異能を放った。まずいまずいまずい。このままでは、ほんとうに死んでしまう。
「大夢!!頑張って耐えろ!!」
しかし、そんなことを言われても、耐える方法が___。
「いや、」
ここぞ、解放という時だ。人は、危機に瀕したときに異能を覚醒させる。だったら、
「死者壁」
それは、爆ぜた。しかし、俺たちは、
「なんで、生きているんだよ!!」
耐えきってみせた。
「はっ。これが世界最強だ」
さて、やられたならやり返す。それは当たり前の事だろう。だから、
「覚悟しておけよ?」
そうして、思いっきり地を蹴り、一瞬で魔帝との距離を縮めて、そして、
<<ドーン!!!>>
力強く、その拳をお見舞いしてやった。そして魔帝は数十メートル飛び、やがて近くの木に激突した。
「いってぇ」
そこには、大きなクレーターが生成されていた。それほど、大きな力だったんだろう。しかし、これだけじゃ、まだ足りない。どうしたら・・・
「・・・」
私たちは、その戦いを呆然と眺めているだけだった。しかし、私たちはその戦いに干渉することは出来なかった。それは、学園長とやらの人物も同じようで、参戦することは出来なかった。だってそれは、元世界最強と、世界最強の衝突だったから。これは、干渉してはいけないというしきたりが、自然と完成していた。私は、このしきたりを重々把握していた。しかし、守ろうとは思わなかった。何故なら、これはただの戦いじゃないから。これは、世界を賭けた戦いだから。だから、私からしたらそんなお決まりはどうだってよかった。今、元世界最強の意識は完全に魔帝に向けられている。故に、私の存在は意識中にすらないはずだ。だから、
「隙ありだよ」
そうして私は、その男の心臓の場所に、”ナイフを、突き刺した”
刹那、とても鈍い音が静まり返った世界に響き渡る。元世界最強の心臓部に、その紅い色に滴るナイフが突き刺さっていた。そのナイフの先端は、夜明けの夕日に照らされていて、血が滲んだその血液は、太陽に照らされるように光っていた。そうして、突然急所を突かれた大夢は、そのまま膝からドサッという音を立てて、そして。『倒れた』
また、追い討ちをかけるように魔帝が大夢の頭を、思いっきり殴り付けた。それによって、大夢の頭は・・・。
「っ!!大夢!!」
それ以上は、言うことも、見ることも出来なかった。元・・・いや、世界最強は、死んだ。殺された。最期は、無惨な姿に変わり果てて。自称神という、とてつもない存在にナイフを突き刺されて、死んだ。
「あぁ、あぁぁぁ・・・」
そんな、気のない呻きが漏れるしかなかった。
「これで、終わりだ」
いや、悲しんでいる暇はない。
「まだ、終わっちゃいねぇよ・・・」
まだ、俺という、学園長は生きている。世界最強は死んだが、学園最強は死んでいない。だったら、
「殺してやる」
そう、呟いた。俺は、若返った学園最強。故に、
「っ!!」
一殴りで、魔帝は数十メートル、いや数百メートルほど飛ばされた。だが、そんなんで終わるようなそんな優しい奴なんかじゃない。だから、俺は更に魔帝に攻撃を放つ。
「うぐっ!!」
こいつが、どんな表情をしているかなんて知らなかった。そんなの、眼中にもない。大夢をこんな無茶苦茶にしたんだから。その怒りを、止めることが出来なかった。何度も何度も、そいつの体と顔面に拳を打ち付ける。そうして、気づいたときには、
「・・・」
その魔帝は、言葉を発していなかった。その体に触れると、とっくの間に生気は失われていた。これで、仇は執れただろう。しかし、その瞬間、
「本当の世界最強は、俺だ」
そんな、一つの声が響き渡るのだった。




