終末戦争
思わず、目を疑う。過去の悲しみが積み重なって、そして最近の疲労が爆発して、幻覚が見えたのかと思った。しかし、俺と同じく、そちらの人間も大きく目を見開いていた。そして、小さな声で俺の名前を読み上げた。
「大和くん・・・」
その瞬間、過去の記憶がフラッシュバックする。自然と、懐かしいと感じた。もう一度、あの声が聞けるとは思っていなかった。しかし、
「生きていたのか!?」
次に、その疑問が押し寄せる。数年前、確かに俺の目の前で殺されたはずだ。しかし、どうして?
「あの時ね、実は大和くんがいない間に捕えられたの」
俺の心を見透かしたかのように、疑問の答えを述べる。
「だ、だったら、俺が見たあの光景はなんなんだ?」
「チッ。勝手に話しやがって。あぁ、そうだよ。お前の幼馴染み、真愛という少女は生きている。あの時、お前の視界に写った真愛は、俺が産み出したクローンだ。お前に、真愛が死んだという捏造された物語を写し出すために」
全ての辻褄が、逢った気がする。これが、進治郎が言っていた意味?でも、なんであいつが知っていて、そもそも、あいつはどこに行ったんだ?すると、奥の茂みからカサカサと音が立つのが聞こえてくる。その、音の正体は、
「進治郎!?」
「なんで、お前がそっちにいるんだよ!!」
「・・・。さぁ、なんでだろうね。ただ、一つ。この状況が答えなのはたしかだよ」
寝返ったというのか?もしくは、最初から組織の人間だったりして。いや、こいつが学園長の実験から産み出された子のはずだ。だったら、尚更なんで?
「初めは、こんなつもりはなかったよ。僕だって、一時は辛い過去を経験していたんだ。ただ弱いってだけで、まともな食事もなくて、虐げられたって誰からも目を向けられない存在だった。けど、そんなときにこの人たちが助けてくれた。そして、学園長からの実験台として無理矢理異能力を手に入れて、最終的に寝返った。ただ、それだけのことなんだよ」
「だ、だから、あの時、俺たちが語り合ったとき、少し悲しい表情をしていたのか?」
「とどのつまりは、そういうことだ」
結局、真愛も、進治郎も組織に買い取られてしまったわけか。
「だったら、だったら・・・。俺の数年の悲しみはなんだよ!!」
そのとき、俺は気持ちが抑えられなくなって叫び出す。
「ずっと、あの目の前で見せられた光景が忘れられなかったんだよ。大切な人が奪われた悲しみを、何年間も背負って、この腐った世界に奪われた悲しみを、感じ続けてきた。そして、今日やっと出会えたかと思ったら、お前達二人してそっちの味方かよ。進治郎、あの昔語り合った夢はなんなんだよ」
「ごめん。ほんとうに、ごめん。それは、謝ることしか出来ない。しかし、それは昔からの事なんだ。もう、悔やんでも仕方ない。これが現実なんだから」
「なんだよ、それ」
こいつらも、あっちの組織の思考に染まったというのか?
「ねぇ、大和くん」
「なんだよ」
「ほんとうに、ごめんね?今さら謝って許されることじゃないかもしれないけど、でも、しっかり謝罪はしたいの」
「・・・わかったよ」
染まりきってしまったなら、仕方のないことだ。もう、どうすることもできないから。最後に、戦い合うしかないから。
「話は、それだけか?」
「俺たちから、言うことはもうない」
「俺も、もういい」
「・・・」
「だったら、気を取り直せ。俺たちの目的は、奴らの組織を全滅させて、実力主義の世界を創ることだ」
そうだ。俺たちは感動の再開を分かち合うわけではない。たしかに、感動物語ではある。しかし、これから待ち受けているのは、世界を懸けた戦いだ。俺たちが負ければ、世界は残酷なままになってしまう。
「さぁ、ここより開戦の時だ」
そうだ。俺たちは、やらなければいけない。ここで、無惨にも犠牲になってしまった生徒の仇を討つためにも、世界最後の戦争を始めるとしよう。
「あぁ。始めよう。『終末戦争』を」
その瞬間両軍が一斉に動き始めたことで、戦いの火蓋は切られた。まず、小手調べから・・・。
「ごめんね。大和くん」
「・・・え?」
突然、背後から彼女の声が聞こえる。まずい、裏を回られたか!?
「私は、神になったの。故に、誰も殺すことが出来ないし、傷さえ与えることも出来ない。だから、」
そして、
「神雷」
「ぐわぁぁっ!!!」
「・・・っぶねぇ」
咄嗟に、防御を張れてよかった。おそらく、あんなのに直撃していたら即死は免れないだろう。
「っ。中々やるじゃない」
「神の力か」
中々、厄介な異能力を手に入れられたもんだ。しかし、それなら・・・!!
「生憎、敵は神だけじゃないぜ?」
「え?」
瞬間、その男はとんでもない異能力を発動させる。
「波動砲」
「うそ、だ・・・」
それは、範囲攻撃。横にも縦にも攻撃が回り、避けようがない。そして、それは威力が凄まじい。たとえ強力な防御を張っても、重傷を負ってしまうだろう。だったら、もう、どうすることも出来ない。あとは、あの二人に任すしか・・・。
生徒の異変を察知した。
「まずい。あいつが出ているかも」
「まさか、もうか?」
「あぁ。とにかく、急がないと!!」
生徒の位置情報で、その場へ向かう。走って、走って、そこについた。そしてその光景は。
「え・・・」
そんな、素っ頓狂な反応を漏らすことしか出来なかった。




