ー哀ー
刹那、俺は動揺を隠せなくなる。
「ご名答。と言った感じか」
「な、なんで」
これでも、完璧に隠せていたはず。だから、バレた理由がわからない。
「答えは簡単だ。お前が俺らの組織をスパイすることがあるように、俺らがお前達の学園へスパイすることもある。そのスパイの一員が、俺って訳だ」
しまった!!完全にその可能性を抜かしていた!!そうだ。その可能性は大いにあり得る。何故なら、
お互い敵同士だから。
「それで、お前はどうする?」
「どうするって?」
「身を売り出して、命乞いをしていきるか、俺と戦って死ぬか」
どうにかして、生き延びなければいけない。しかし、戦うにしても、相手の実力は未知数。逆に、命乞いをしたらそれはそれで何をされるか分かったもんじゃないだろう。故に、どうすることもできない。いや、命乞いをすれば、生きられることは確定している。つまり、学園が襲撃に来るまで耐えることが出来ればいい話じゃないか?しかし、その間の生活が怖いか。
「早く決めろ。でないと・・・殺すぞ?」
時間がないようだ。しかし、どうしたら・・・。少し考えた俺は、その答えを行動に移す。
そうして私たちSクラスは、これからの会議を行っていた。
「この前にも伝えた通り、大和は現在組織のスパイを行っておる。しかし、このままでは彼は抜け出すことが出来ないままじゃ。そこで、わしは覚悟を決めた」
その、覚悟というのが。と、学園長がそう言いながら続けて、
「世界戦争になることを覚悟して、組織のアジトへと襲撃に向かう」
「ちょ、ちょっとまってください!!そんなことをすると、本当に世界が崩壊してしまいます!!」
「故に、わしは覚悟を決めたんじゃ。学園の定員も、十分に揃っておる。あちらも、いつ動き出してくるかわからない。だから、先に手を打つのじゃ。そうして、アジトに乗り込んで、大和を救出する。それが今回の一連の動きじゃ」
内容は理解したけど、本当にそれでいいのだろうか?もし、その作戦が失敗したら・・・。
「それだと、大和の身が危ない」
「安心したまえ。今回の目的は敵の殲滅ではない。大和の救出だ。そういえば、まだ作戦を打ち解けていなかったな。その作戦というのが、人混みを形成することじゃ」
「人混みを形成しても、何にもならねぇだろ?」
「この前の騒動を、忘れよったか?パッと見た感じでも、敵の数は数千を越えていた。そんな敵とわしらの生徒が、一点に集まったら、どうなる?」
「この学園も、人数が多いですから。故に、人混みを形成します」
「その間に、大和が抜け出すことが出来たら、あとは撤廃するだけでいいんじゃ」
「な、なるほど」
「でも、それだと多少の被害が出るんじゃないか?それこそ、世界戦争になることを覚悟しているのなら、強者を失うのは手痛いんじゃないんだろうか?」
「今回は、上級クラスの生徒は派遣しない。代わりに、下級生徒に向かわせる。もちろん、多少の被害は出るかもじゃが、これからもっと多大な被害を出すこととなる。生徒一人一人には申し訳ないが、犠牲になってもらうしかない」
なに、それ。
「そんなの、残酷じゃん」
「っ・・・。夢」
「私たちの目的は、なんなの?私たちは、どんな組織なの?私たち『新聖学園』は、反異能力政府軍じゃないの?だから、異能力を失くすことが目的なんでしょ!?平和な世の中を形成することが、誰もが悲しまなくていいような世界を創り上げるんでしょ!?なのに、犠牲者を産むの?それは、私たちの掲げる目標にあっているの?」
「・・・夢。たしかに、お前が言っていることは正しい。しかし、だからこそ、犠牲を産むしかないんだ。誰もが幸せで、平和で、悲しむことのなくて、永遠でいられるなんてあり得ない。人というのは、必ず”死”を迎える。そうなると、だれかが悲しむ。違うか?だから、結局はどんな世界になろうとも、俺たちが迎える結末は”哀”あるのみなんだよ。ただ、そんな中でも、生きている内は、たくさんの幸せを感じて死んだ方がいいだろ?だから、俺たちは平和な世界を目指すんだ。たとえ、学園から犠牲者が出ようとしても。異能力を持たない人間が、誰もが平等で生きられる世界を創るために」
まさしく、正論だった。そんな正論を浴びせられた私は、何も返すことが出来なかった。しかし、私の意思と学園の目標は同じものだった。それだけが、証明された。犠牲者を産んでしまう。その事に、少し抵抗はあるが、だったら、
「私が、たった一人の犠牲になる」
「なっ!?何を言っているんだ!!」
「私は、犠牲者なんか産みたくない。だから、私だけが、犠牲になれば・・・」
「それは違うぞ」
「え?」
「相手だって、そんな無能が集った集団じゃない。仮にお前が犠牲になろうとして死んでも、それ以外の死者は結局出続ける。だから、お前が死んだって意味はない」
なんなの。じゃあ。この世界って、なんなの?何が正義なの?それが、今一向にわからない。
「とにかく、だ。お前にとっては辛いことかもしれん。が、世界を変える以上は、このような犠牲は仕方ない。明日、この作戦を決行する」
しかし、私にはそんな権力を持ち合わせていなかった。故に
「・・・はい」
と、納得をすることが出来ないながらも、その作戦に頷くことしか出来ないのであった。




